中国のワクチン外交とは?その狙いと実態をわかりやすくご紹介します

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中国とロシアのワクチン外交

<2023/2/27追記>コロナ起源「中国の研究所から流出か」 米エネルギー省が判断との報道

「朝日新聞デジタル」による次のような報道がありました。

新型コロナウイルスの起源について、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は26日、中国の研究所から流出した可能性が高い、と米エネルギー省が判断していると報じた。新たな機密情報を根拠としており、ホワイトハウスや米議会幹部に報告されたという。ただ、米政府内でも、動物を介して人に感染した説を有力視する機関もあり、見解が割れている。

WSJによると、エネルギー省は「確信度は低い」としつつも、ウイルスが中国の研究所での不慮の事故によって広まったと判断した。エネルギー省は、先端的な生物学的調査も担う米国立研究所を管轄しており、「相当な科学的知見を有する」という。

 他の政府機関では米連邦捜査局(FBI)も研究所流出説を支持する立場をとっている。国家情報会議や他の四つの機関は動物を介した説を支持し、米中央情報局(CIA)など二つの機関は、どちらの説か結論づけていないという。

新型コロナウイルスの発生源との疑念が残る中国の「武漢ウイルス研究所」には、発生確認から1年以上経った2021年1月にようやくWHOの調査が入りました。

このWHO国際調査でも、コロナの起源や感染拡大の経緯は判明しませんでした。しかし1年も調査を先送りさせたのは「証拠隠滅を図ったため」と勘繰られてもやむをえません。

それはともかくとして、今や中国はロシアとともに自国製のワクチンを途上国に提供する「ワクチン外交」を積極的に展開しています。

その狙いと実態はどのようなものなのでしょうか?今回は中国に的を絞ってご紹介したいと思います。

1.中国のワクチン外交とは

コロナ発生の初期段階で、中国は「マスク外交」を展開しました。

中国政府の2020年3月末の発表によると、欧米・日本・東南アジア・中東・アフリカなど合計120ヵ国に医療用マスクや検査キット、防護具、人工呼吸器を提供し、合計170人の医師団を派遣しました。

しかし多くの国々が、中国製医療用マスクや検査キット、防護具、人工呼吸器を「品質の悪い不合格品」とみなして使用を拒否したために、失敗に終わりました。

そこで今度は「ワクチン外交」を積極的に推進しています。

(1)狙い

狙いは、習近平主席が掲げる「一帯一路構想」(*)実現のために、途上国に対するワクチン提供によって、それらの国々を取り込もうとしているのではないかと思います。

一帯一路構想

(*)「一帯一路構想」とは、習近平主席が2013年に提唱し、現在も推進している「アジア~ヨーロッパ~アフリカ大陸にまたがる巨大経済圏構想」です。

これは中国による「100年遅れの帝国主義」「新植民地主義」だと私は思います。

(2)実態

中国はワクチン外交として、112の国と地域に5億回分の中国製ワクチンを「提供」したとのことです。

「ワクチン提供」と言われるため、「全量無償提供」と誤解している人が多いのですが、大半が「有償提供(販売)」で、「贈与(寄付)」は僅かだそうです。

7月19日放送のBS-TBSの「報道1930」で興梠一郎神田外語大学教授は、「これは贈与ではない。5月17日時点で6億8300万回分『輸出』している。つまり『販売』している。無償で提供したのは1830万回だけで、提供という言葉は分かりにくい」と話していました。

中国のワクチン外交には「健康のシルクロード」という呼び名があります。これは2020年12月11日に中国の王毅外相が「2020年の国際情勢と中国外交」という演説で述べた言葉です。

中国は「一帯一路」のスローガンを掲げ、国際的なインフラ投資計画を繰り広げていますが、資金力の弱い国が建設費の返済ができなくなると、中国がインフラそのものを差し押さえるという事例が相次いでいるそうです。

麻生副総理兼財務相が2017年11月29日の参院予算委員会で、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の運営や融資審査について、「金を借りた方も、ちゃんと計画を立てて返済しないと、サラ金に取り込まれちゃうみたいな話になった場合、元も子もない」と発言したのはこのことです。

ワクチン提供についてもその「見返り」として、中国が今後受け入れ国に対して外交的な圧力を強める狙いがあると懸念の声が上がっています。

現にパラグアイ外務省は2021年3月24日、「ワクチン提供を中国から受ける条件」として、中国側から「台湾との国交断絶、中国との国交樹立」を要求されたと明らかにしました。

結局パラグアイは、中国の要求を拒絶し、中国からワクチン提供を受けることを断念しました。パラグアイは、インドや、「COVAX」(ワクチンの公平な配分を目指すWHOの国際的な枠組み)からワクチン提供を受ける予定です。

グアテマラも、パラグアイと同様の要求を中国から受け、拒否しています。

また、チェコも中国製ワクチンの購入を取り消し、ポーランドも中国製ワクチンの購入を断念しています。

2.中国のワクチン外交の成否

このように中国は、ワクチンを「戦略物資」として使用しています。このワクチン外交は果たして成功するのでしょうか?あるいは失敗に終わるのでしょうか?

上に述べたように、中国のワクチン提供は、「善意に基づく無償贈与」ではなく、「露骨に見返りを求める恫喝外交」であるため、綻びも見え始めています。

しかし、「溺れる者は藁をもつかむ」ということわざ通り、コロナの爆発的感染拡大に苦しむ途上国の中には、ワクチンを求めて中国に頼る国々も出てくることは間違いありません。

日本も中国のワクチン外交に対抗して、「COVAX」を通さずに直接東南アジア諸国を対象にアストラゼネカ製ワクチンの無償贈与をすでに始めています。

6月に台湾に124万回分、ベトナムに600万回分のアストラゼネカ製ワクチンの無償贈与を実施したのをはじめ、7月からはインドネシア・タイ・フィリピン・マレーシアにも無償贈与する計画です。

茂木外相はこれらの国を選んだ理由について、「感染状況のほかに、日本との関係を考慮した」と述べ、「日本が提唱する『自由で開かれたインド太平洋』を実現する上でも極めて重要な国々だ」としています。

また、中国寄りのWHOによる国際的なワクチン共同調達の枠組み「COVAX」を通さないのは、「承認を得る手続きに時間がかかる恐れがあるため」と述べています。

中国のワクチン外交の成否については、現時点での判断は難しいところです。

しかし、最近中国製ワクチンの供給を受けた国々の間で「中国製ワクチンの有効性と安全性に疑問や問題がある」との認識が広まっていることを考えると、中国のワクチン外交はマスク外交と同様に失敗に終わる可能性が高いように私は思います。

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