1.外国人労働者受け入れ政策の大転換
政府が従来の「外国人労働者受け入れ制限」(特定の技能労働者に限定)の方針から180度転換して、14業種で単純労働者も含め、5年間で35万人受け入れるとの試算を発表しました。一定の条件を満たせば、家族の帯同も認める方針です。(簡単な試験にパスした外国人を上限5年で受け入れ、さらに一定の試験にパスすれば永住と家族の帯同を認めるというものです)
「出入国管理法」を改定して、2019年4月からの導入を目指しているとのことです。
これは、一体何が起こったというのでしょうか?理解に苦しみます。政府の説明はつぎのようなものです。
制度導入から5年間の「人手不足見込み数」から、「国内人材確保」と「生産性向上」でなお補えない分を、「外国人労働者受け入れ」で確保するとのことです。
5年間で最大6万人の受け入れを想定する「介護業」では、厚生労働省が5年後の2023年度の人手不足見込み数を30万人と試算。まず日本人の高齢者や女性の就業促進などにより、20万人余の人材を確保する。
さらに介護ロボットの導入などで生産性を2万人程度に相当する1%程度向上させる。その結果、5年目までに5万~6万人の外国人労働者の受け入れが必要と試算しているのです。
2.外国人労働者の大量受け入れ政策の問題点
しかし、この「単純労働者」の「外国人大量受け入れ」は、「百害あって一利なし」だと私は思います。そして、上記の「試算」は「机上の空論」のような気がします。
(1)言葉(日本語)の壁
いくら「介護」が単純労働だと言っても、言葉の通じない外国人に介護される身になってみれば、「こうしてほしいのに」とか「ああしてほしい」と言っても、言葉が通じないので、結局日本人の介護士に「尻拭い」をしてもらわざるを得ないことになります。これでは、日本人介護士の負担が増えるだけです。
(2)防疫・公衆衛生上の問題
衛生状態の悪い中国・東南アジアや南米などから、外国人労働者が大量に入って来ると、新型インフルエンザ、マラリア、エボラ出血熱などの「パンデミック」が、心配になります。「潜伏期間」もあるので、蔓延する恐れもあります。
(3)治安上の問題
タリバンやISなどのテロリストや、犯罪歴のある者が潜入する恐れもあります。
(4)在留資格の問題
「移民」ではないとしても、数年間は日本に滞在し、さらに家族も来て「永住」するとなると、「なし崩し的移民」となります。一時的に訪日する外国人観光客とは異質の問題です。
(5)大麻・麻薬などの薬物の問題
日本で既に密売ルートが出来ているようですが、大量の外国人の「単純労働者」が入って来ると、より拡散する恐れがあります。
(6)暴力団との関連の問題
入ってくる労働者の中に、暴力団と密接な関係を持つ者が出て来ても不思議ではありません。「統合型リゾート施設(IR)」との関連でも心配です。
(7)日本人の労働機会を奪う問題
本来、「人手不足」は日本人労働者の「賃金上昇」の好機のはずです。しかし外国人労働者を大量に受け入れてしまうと、労働力不足が解消した後(団塊世代が亡くなった後とか)も、そのまま日本で働く者も当然出て来ます。すると、ヨーロッパ特にドイツで深刻になっている「移民が自国民の労働の機会を奪っている問題」「移民のためにかかる医療費、社会保障費、生活保護費用を自国民が負担する問題」と同じ問題が起きます。アメリカにおけるメキシコからの不法移民問題(アメリカ国民の雇用を奪い治安も悪化)も他山の石です。
(8)労働の質の問題
日本における「単純労働」と言っても、最初に述べた「言葉の壁」が大きい上、日本人のような「丁寧」で「きめ細かい配慮」の行き届いた労働は期待できません。
私が介護を受けるようになった時、「外国人介護士」から介護を受けたいとは思いません。
かつて、日本の製造業が、賃金が安いという理由で、中国に大量に工場進出しましたが、「製品が安全でない」「品質が悪い」「納期が遅れる」などの問題が起きました。今回も同様の問題が起きそうです。
つい最近「中国の【五つ星ホテル】の清掃係が、使用済みタオルでコップもトイレも拭いている」という驚くべきニュースがありました。中国の著名なネットユーザーが隠し撮りした画像とともに告発したものですが、このような慣行は、長年にわたって行われていたそうです。
告発を受けた【五つ星ホテル】は、シャングリラ・シェラトン・コンラッド・リッツカールトン・フォーシーズンズなど超高級ホテルばかりです。他は推して知るべしでしょう。
喩えが適当かどうかわかりませんが、私が勤務先の会社の海外支店へ調査に行った時、駐在員の話を聞くと、「ローカルスタッフ(現地人労働者)の仕事のミスや、積み残しの仕事のフォロー(後始末)で、負担がよけいに重く、毎日のように夜遅くまで残業している」と不満を漏らしていました。
日本人の介護士でも「老人入居者への虐待」がよく問題になりますから、日本人なら安心とは一概に言えませんが、外国人の介護士が入って来ると、たとえ「日本人介護士の補助者」だとしても、結局日本人介護士がカバーしないといけない場面が多く発生するような気がします。
そうなると、上に述べた「海外支店での日本人社員によるローカルスタッフの尻拭い」と同じことが起こるのではないでしょうか?そして、結局外国人には「任せられない」ということで負担が余計に増えて、外国人労働者には、大した仕事も出来ないのに給与だけは払わなければならない事態になるのではないかと心配です。
私も、現役サラリーマン時代に、能力の低い新人や後輩がいて、その人たちに仕事をやらせても、失敗が多すぎてかえって遅くなるので、仕事を取り上げることがありましたが、それと似たような問題が起きると思います。
(9)外国人労働者の賃金の上昇の問題(日本人労働者の賃金の下方シフトの問題)
「労働の質」の問題と関連するのですが、多分、日本人の一般的労働者に比べて、能力が低いと予測できます。当然、賃金も低く設定することになりますが、それが「日本人との差別」という受け止め方をされかねません。勢い「賃金の上昇」を招き、「コストパフォーマンス」は低くなるのではないでしょうか?もし最初から「同一賃金」にするなら論外です。
一方で、外国人労働者の賃金が日本人労働者の賃金より安い水準だと、労働の質に拘わらず「賃金の下方シフト」が起きて、日本人労働者が不利益をこうむる恐れもあります。
そもそも、政府は35万人もの「人手不足」が起きると想定していますが、それは今まで働いていなかったリタイアした中高年や主婦のパート労働も最大限使ったと仮定しての話なのでしょうか?また、介護士の給与引き上げなどの待遇改善をしても人手不足になるのでしょうか?
60歳以上の人は、働くと年金が減るなどの理由で働いていない人も大勢いると思いますが、70歳くらいまでなら十分働ける人が多いと思います。もし、働いても年金が減額されないようにすれば、高齢者で再び働く人は沢山出て来るはずです。主婦も税制上の優遇をすれば、働く人はもっと増えるはずです。
彼らは日本人ですから、言葉の壁はないし、労働の質も良いと思います。それ相応の賃金アップと年金支給上や税制上の優遇をすればよいだけです。外国人労働者を受け入れることによる様々な問題・トラブルとも無縁です。
先にも述べましたように、「人手不足」は日本人労働者にとって、「賃上げ」を獲得する最大の好機です。企業に賃上げ競争を加速させ、「インフレ率」を上げる好機なのに、このような政策転換することには、納得が行きません。国会での慎重な審議をお願いしたいと思います。
この政策は、「パンドラの箱」を開けるようなものだと私は思うのですが・・・
そもそも「移民」という言葉の「定義」は、一般に「自由意思で異なる国家へ移り住む事象、また出生あるいは市民権のある国の外に12ケ月以上いる人」を指すものと言われています。
日本で働く外国人は、2017年にすでに128万人もいて、世界第四位の「移民大国」となっています。これ以上「移民」を増やすことは、日本の国益及び日本国民(労働者)の利益を損なう恐れが大きいと私は思います。