中国製ワクチンの有効性と安全性は?中国も今後mRNA型ワクチンに切換えか?

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中国製ワクチンの有効性・安全性

欧米や日本では、中国製ワクチンの安全性が確認できないとして、米英が開発したファイザー・モデルナ・アストラゼネカのワクチン接種を進めています。

中国当局は自国製ワクチンの詳細な情報を公開していないため、提供を受けた国は独自に検査し、研究機関でその有効性や安全性を確認した上で使用を認可し、接種に踏み切っています。

ところが最近、中国製ワクチンを使用し、ワクチン接種率も高いASEAN(東南アジア諸国連合)各国で、感染の急激な拡大が発生しており、中国製ワクチンの有効性や安全性を疑問視する声が出始めています。

中国製ワクチンの接種を受けた医療関係者のコロナ感染者が増加していることも不安を増幅させているようです。

中国製ワクチンの提供を受けたインドネシアでの感染爆発は深刻で、在留外国人の退避が相次いでいるそうです。

1.中国製ワクチンの有効性は?

東南アジア各国では、ワクチンを中国製から米英製に切り替える動きも加速しているようです。

シンガポールは、中国製ワクチン接種を接種統計から除外しました。

バーレーンとUAEは、中国製ワクチンを2回接種後に米国・ファイザー製の追加接種を推進しています。

タイでは、中国製ワクチンを2回接種後に英国・アストラゼネカ製などの追加接種を推進しています。

東洋学園大学教授・朱建栄氏は7月19日放送のBS-TBSの「報道1930」で、中国のワクチン外交について「私は8割以上うまくいっていると思う。112ヵ国の中の4ヵ国の話だけで全体を見るのはどうなのか?」とコメントしていました。

最初に問題になったのはチリです。チリはワクチン接種が最も進んでいた国の一つでしたが4月に入ると国内で感染が再び拡大し、チリ政府は6月10日、首都サンチャゴの全域にロックダウンを再導入すると発表しました。チリで接種されているワクチンの9割が中国のシノバック製ワクチンです。

インドネシアでは、2020年の感染拡大を前に中国から提供されたワクチン(「シノバック・バイオテック」製と「シノファーム」製)を医療関係者に優先接種しました。しかし2021年6月以降、「シノバック・バイオテック」製ワクチンを接種した医療関係者の感染が約300人となり、感染死する医師や看護師が10人となりました。

こうした現象はインドネシアだけでなく、マレーシアやタイでも報告されており、米紙「ニューヨーク・タイムズ」は6月22日に「中国ワクチンに頼った国は今感染拡大と戦っている」との記事を掲載し、中国製ワクチンの有効性と安全性に疑問を投げかけました。

JPモルガン・アセット・マネジメントは6月11日「欧米製ワクチンを採用している国々(アメリカ・イギリス・フランスなど9ヵ国)では、人口の40%以上に接種した後、感染者が大幅に減少したのに対し、中国製ワクチンを採用している国々(9ヵ国)ではワクチン接種後に感染者が減少したのはハンガリーのみであり、特にバーレーン・モルディブ・セイシェルでは感染拡大が深刻化している」との分析結果を公表しました。

オックスフォード大学も、「世界で最も感染率の高い上位10ヵ国のうち、パラグアイを除く9ヵ国が中国製ワクチンを採用している」との調査結果をまとめています。

中国政府が外交カードに利用しているワクチンを提供しているのは、中国製薬大手のシノバックです。

WHOは今年6月に、シノファームに続いて中国製ワクチンで2例目となるシノバック製ワクチンの「緊急使用を正式に承認」しました。保存が容易という特徴からリソースに乏しい環境での使用に非常に適しているとしています。

シノバックは「生産能力を拡大し、年間10億回分にすることが可能」との見方を示しています。

しかし、シノバック製ワクチンの有効性については疑義が生じています。約1万3000人が参加したブラジルの後期臨床試験での有効率が50.38%にとどまったからです。ちなみにシノファームの有効率は78%です。

WHOが定める「50%以上」の基準は満たしているものの、米ファイザーや米モデルナが開発した「メッセンジャーRNA(mRNA)型」のワクチンの有効率(90%を大きく上回る)と比べると、明らかに見劣りします。

シノバックが開発したワクチンは、「不活化ワクチン」です。熱や化学物質(アンモニアなど)で不活化したウイルスを体内に投与して抗体をつくるという従来の製造方法です。

この手法は、インフルエンザワクチンなどで使用されていることから信頼性が高いとされている半面、効果が弱いとの指摘があります。

インフルエンザウイルスに比べて新型コロナウイルスの増殖のスピードが遅いことから、体内で発生する抗原が少なく、抗体ができにくいとされているからです。

2.中国製ワクチンの安全性は?

中国では多くの人々がワクチン接種の臨床試験に参加していますが、「接種後に深刻な副反応に苦しみ、病院で治療を受けている」との噂が後を絶ちません。

ワクチン接種後の副反応で最も懸念されているのは、「ADE(抗体依存性感染増強現象)」です。

ワクチン接種によって作られた抗体が、ウイルスの細胞への侵入を防ぐのではなく、逆に細胞への侵入を助長する現象のことです。ADEが生じると重症化リスクが高くなります。

新型コロナウイルスと遺伝子情報がほぼ同じのSARSウイルスの不活化ワクチン開発の際にADEが生じたことから、「コロナの不活化ワクチンでも同様の問題が起きる」ことを懸念する専門家は少なくありません。

中国製ワクチンを購入する国々にとっての期待は、「感染防止」ですが、このワクチンは「重症化防止」には効果があっても、「感染防止」にはつながらないとの見方が一般的です。

中国製ワクチンの接種は、「感染防止」に役立たないばかりか、ADEのリスクに曝されるという極めて危険なものであり、「百害あって一利なし」ということになります。

3.中国の意外な動き。今後は中国もmRNA型ワクチンに切換えか?

ワクチン供給大国を自負する中国で、意外な動きが生じています。

中国医薬品大手の上海復星医薬集団が2020年12月中旬、「政府からの使用許可を条件に独ビオンテックからコロナワクチンを少なくとも1億回分購入する契約を結んだ」と発表したのです。

12月下旬には国営メディアが「人民解放軍の軍事科学院らが『メッセンジャーRNA(mRNA)型』のコロナワクチンの製造施設の建設を開始した」と報じました。

臨床試験の初期段階にありますが、8ヵ月以内に利用可能になるとしています。製造施設の第1期の年間生産能力は1億2000万回分になる見通しとのことですが、中国はこの技術を「自主開発」したのでしょうか?

2020年7月30日付ロイターが「中国政府とつながりのあるハッカーらがコロナワクチンを開発している米モデルナを標的としていた」と報じていたことは無関係とは思えません。

今年6月25日には、中国創薬企業・斯微生物(Stemirna Therapeutics)がコロナ変異株対応の『メッセンジャーRNA(mRNA)型』のコロナワクチン開発のために200億円を調達したとの報道がありました。この資金は臨床研究や生産ライン建設に充てられるようです。

創業者でCEOの李航文博士は「我々が開発している次世代の新型コロナウイルスmRNAワクチンは、南アフリカ型、ブラジル型、インド型を含む多くの変異株に効果がある。間もなく第2相臨床試験が始まるほか、海外では第3相試験の計画が進んでいる」と語っています。

これらの動きは、「中国製の『不活化ワクチン』は変異株には有効でない」ということを中国自身が認めたとも言える動きです。

勘ぐれば、中国のワクチン外交の真の狙いは「国内でメッセンジャーRNA(mRNA)型ワクチン開発に目途が立ったことで、不要(あるいは邪魔)になった粗悪品のワクチン(不活化ワクチン)を一掃するため」だとも考えられます。

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