名前や形などがよく似ていて紛らわしい動植物・自然現象をご紹介します

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シラウオとシロウオ

<2023/2/3追記>「ドッペルゲンガー殺人事件」に世界が震撼、との報道(ハフポスト日本版)がありました。

ドイツで起きた「SNSで見つけた自分そっくりな女性殺害事件」です。「ドッペルゲンガー」とは下にご紹介している「自己像幻視」のことです。

逮捕された女は「自分が死んだ」と偽装するために、SNSで見つけたそっくりの女性を殺害した疑いが持たれています。

「自分とそっくりの姿をした分身」(自己像幻視)のことをドイツ語で「ドッペルゲンガー」と呼びます。これになぞらえて現地メディアは「ドッペルゲンガー殺人事件」と報じているのです。

「世の中に自分に似た人が3人はいる」という話を聞いたことがあります。私自身は一度も出会ったことはありませんが、サラリーマンの頃に得意先の人から「あなたによく似た人を知っている。そっくりだ」と言われたことがあります。遠い親戚なのか、あるいは全くの「他人の空似(そらに)」かもわかりません。

自分自身の姿を自分が見る「自己像幻視」は、「ドッペルゲンガー(独: Doppelgänger)」(「ドッペルゲンガー現象」)(*)という幻覚の一種です。

(*)「ドッペルゲンガー」とは、自分とそっくりの姿をした分身のことです。第2の自我、生霊の類。同じ人物が同時に別の場所(複数の場合もある)に姿を現す現象を指すこともあります(第三者が目撃するのも含む)。超常現象事典などでは超常現象のひとつとして扱われます

ドイツ語: Doppel(英語: doubleと同語源)とは、「二重」「生き写し、コピー」という意味を持ち、独: Doppelgängerを逐語訳すると「二重の歩く者」「二重身」となります。

英語風に「ダブル」と言うこともあり、漢字では「復体」と書くこともあります。

「ドッペルゲンガー現象」は、古くから神話・伝説・迷信などで語られ、肉体から霊魂が分離・実体化したものとされました。また、この二重身の出現は、その人物の「死の前兆」と信じられました。

18世紀末から20世紀にかけて流行した「ゴシック小説」(神秘的、幻想的な小説で、今日のSF小説やホラー小説の源流とも言われる)作家たちにとって、死や災難の前兆である「ドッペルゲンガー」は魅力的な題材であり、自己の罪悪感の投影として描かれることもありました。

アメリカの第16代大統領のリンカーンや帝政ロシアのエカテリーナ2世、芥川龍之介も自身のドッペルゲンガーを見たという記録が残っているそうです。こういう話は少し怖い気がしますね。

ところで動植物や自然現象、漢字にも、名前などがよく似ていて紛らわしいものがいくつかあります。

1.動物

(1)「白魚(しらうお)」と「素魚(しろうお)」

白魚白魚軍艦巻き

「白魚(しらうお)」はニシン目シラウオ科で、「素魚(しろうお)」はスズキ目ハゼ科の海水魚です。しかし名前だけでなく姿形も似ているのでよく混同されます。

見分け方は、シラウオには背びれの間に脂(あぶら)びれがありますが、シロウオにはないことです。

シラウオは徳川家康が大変好んだそうで、江戸っ子には馴染み深い魚で、池波正太郎の小説にもよく出て来ます。

春になると産卵のために川に入り、昔は墨田川にも姿を見せ、江戸の春の風物詩だったようです。

素魚シロウオ

シロウオも、春を告げる魚の代表の一つですが、イサギ・シラウオ・ドロメ・イサダ・シラヤ・ヒウオなどの別名があります。

シロウオの代表的な食べ方は「踊り食い」です。生きたままのシロウオを二杯酢や黄身醤油でそのまま食べます。

(2)「蜉蝣(かげろう)」と「草蜉蜻蛉(くさかげろう)」と「薄羽蜻蛉(うすばかげろう)」

かげろう

カゲロウは、蜉蝣(かげろう/ふゆう)目に属する昆虫の総称です。名前の通り、半透明な薄い翅を持ったあるかなきかのはかなげな弱弱しい虫です。

豊作の年に大量発生することから「豊年虫」、二十四節気の白露の頃に現れることから「白露虫」とも呼ばれて来ました。

カゲロウの成虫の口は退化しているため、食物を取ることができず、多くが羽化した数時間後に死滅するという非常に短い寿命です。

「朝(あした)に生まれて夕べに死す」と言われるカゲロウは、名前も日向(ひなた)にゆらゆらと立ちのぼる陽炎(かげろう)から取ったもので、移ろいやすいものの典型です。

草かげろう

クサカゲロウは、「草蜉蝣」とも書きます。アミメカゲロウ目(脈翅目)クサカゲロウ科に属する昆虫の総称です。クサカゲロウは「優曇華(うどんげ)」と呼ばれる美しい不思議な卵から生まれますが、私は子供の頃、天井にぶら下がった優曇華を一度だけ見たことがあります。

ウドンゲ優曇華

クサカゲロウの成虫は、黄緑色の体と水滴型の半透明の翅を持っています。

うすばかげろう

ウスバカゲロウは、「薄羽蜉蝣」とも書きます。アミメカゲロウ目(脈翅目)ウスバカゲロウ科に属する昆虫の総称です。昆虫好きな作家の北杜夫が「ウスバカ下郎」などとふざけて書いていますが、「薄羽蜉蝣」または「薄羽蜻蛉」が正しい漢字名です。

ウスバカゲロウの成虫の外見はトンボによく似ていて、細長い体、丸い頭と細長い翅を持っています。

ウスバカゲロウの幼虫が、アリの天敵の「蟻地獄(ありじごく)」です。

アリジゴクありじごく

なお、ウスバカゲロウによく似た昆虫に「大蚊(ががんぼ)」があります。ガガンボは双翅目ガガンボ科の昆虫です。

ガガンボ

2.植物

(1)「エシャレット」と「エシャロット」

エシャレットエシャロット

「エシャレット」は、もともと「根らっきょう」、つまり「らっきょうを若いうちに収穫したもの」(若取りらっきょう)のことです。

「根らっきょう」ではあまり売れないため、何かもっとオシャレな名前はないかと考え、「エシャロット」と形が似ていることもあって「エシャレット」と呼ぶようになりました。

一方、「エシャロット」は「小型のタマネギ」のことです。香味野菜の一種でタマネギの変種になります。味はニンニクとタマネギの中間のようで、ピリッと辛くさわやかな味です。

しかし「エシャレット」が「エシャロット」という名前で売られていたりして紛らわしいので、二つを明確に区別するために「小型のタマネギ」のことは「ベルギーエシャロット」と呼ぶようになったそうです。

(2)「カラスノエンドウ(烏野豌豆)」と「スズメノエンドウ(雀野豌豆)」

カラスノエンドウとスズメノエンドウ

「カラスノエンドウ」と「スズメノエンドウ」は「野豌豆(のえんどう)」の一種で、「エンドウ」という名前が付いていますが、「ソラマメ属」の植物です。「野豌豆」にはもう一つ「カスマグサ」があります。

なお、「カスマグサ(かす間草)」は、「カラスノエンドウ」と「スズメノエンドウ」に非常によく似た野草です。「ラス」と「ズメ」の「」という意味でこのように名付けられました。

(3)「ヒメジョオン」と「ハルジオン」と「シオン」

ハルジオンとヒメジョオン[1]シオン

ハルジオンとヒメジョオン」ならびに「シオン」については、前に詳しい記事を書きましたので、ぜひそちらをご覧ください。

3.自然現象

(1)「雹(ひょう)」と「霰(あられ)」

雹霰

「雹(ひょう)」も「霰(あられ)」もどちらも「空から降ってくる氷の粒」ですが、「直径5mm以上のもの」を雹(ひょう)と言い、「直径5mm未満のもの」を霰(あられ)と言います。

ちなみに「世界最大の雹」は1917年に現在の埼玉県熊谷市に降った直径29.6cmのものとされています。

なお「霙(みぞれ)」は、「雨と雪が混ざって降る気象現象」です。

(2)「霧(きり)」と「靄(もや)」

「霧」も「靄」もどちらも「空気中の水蒸気が細かな水滴になった状態」のことですが、気象用語では「視程1km未満のもの」を「霧」と言い、「視程1km以上10km未満のもの」を「靄」と言います。

本質的には「」も「霧」と同じです。

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