鳩と言えば、かつては「平和のシンボル」として愛され、煙草の「ピース」のデザインにもなっていましたし、1964年の「平和の祭典」東京オリンピックの開会式でも多数の伝書鳩が飛び立ったことが鮮明に記憶に残っています。
最近は、「ドバト(土鳩)」の糞害などで悪印象の方が強くなりましたが、古くから人間に身近な存在で、鳩の付く面白い言葉や慣用句がたくさんあります。
1.鳩の付く面白い言葉
(1)鳩目(はとめ)
「鳩目」とは、「布や板などの平たい物に開けた穴に挿入される管のこと」です。英語では「グロメット(grommet)」と言います。
一般には靴・衣類・紙などに紐を通す穴に取り付ける環状の金具を指します。
簡単に穴から抜けないように、管の穴の両端が広がっています。
私が学生時代の「出席簿」やサラリーマン時代の「出勤簿」や「休暇簿」の表裏は厚紙で、鳩目に綴じ紐を通していましたが、その「菊割れ鳩目」(下の画像)が強く印象に残っています。
(2)斑鳩(いかるが)
「斑鳩」には二つの意味があります。
①奈良県北西部、生駒郡の地名。かつて「イカル」が群居していたそうです。法隆寺・中宮寺・法輪寺などがあり、飛鳥時代の仏教の中心地でした。
②「イカル(鵤)」の別名
「イカル」はアトリ科の全長23cmくらいの鳥です。体は灰色で、頭・風切り羽・尾羽は紺色で、くちばしは太く黄色です。
木の実を食べ、さえずりは「お菊二十四」などと聞こえ、「月日星(つきひほし)」とも聞こえるところから、三光鳥ともよばれています。
(3)鳩胸(はとむね)
胸部が鳩の胸のように大きく高く突き出ていることです。先天的なものもありますが、後天的な変形は、「くる病」や「胸椎カリエス」によっても起こります。
(4)鳩首協議(きゅうしゅきょうぎ)
「鳩首協議」とは、「人々が寄り集まって熱心に相談すること」です。
「鳩首凝議(きゅうしゅぎょうぎ)」や「鳩首謀議(きゅうしゅぼうぎ)」とも言います。
「鳩」は集める意です。「鳩首」は頭を集めることで、人々が額を突き合わせて集まる意です。
(5)鳩居鵲巣(きゅうきょじゃくそう)
「鳩居鵲巣」とは、「女性が嫁いで、夫の家に住むことのたとえ」です。転じて、「労せずして他人の成功や他人の地位を横取りすることのたとえ」です。「借家住まいのたとえ」として用いられることもあります。
「鳩、鵲(かささぎ)の巣に居(お)る」と訓読します。
ハトは巣作りが下手で、それの上手なカササギの巣に住み、卵を産む意から来た言葉です。
(6)鳩形鵠面(きゅうけいこくめん)
「鳩形鵠面」とは、「飢え痩せて、やつれ果てていることの形容」です。
「鵠面」は痩せ果て顔の形が細くとがって、鵠(くぐい)(オオハクチョウのこと)に似ていることです。
「鳩形」は痩せ果て胸が突き出て、鳩に似ていることです。
「鵠面鳩形(こくめんきゅうけい)」とも言います。
2.鳩の付く面白い慣用句
(1)鳩が豆鉄砲を食ったよう
「鳩が豆鉄砲を食ったよう」とは、「突然の出来事に驚いて、目を丸くしてきょとんとしているさまのこと」です。「鳩に豆鉄砲」「鳩豆」とも言います。
ちなみに「豆鉄砲」とは、豆を弾丸にして撃つおもちゃの鉄砲のことです。
(2)鳩に三枝(さんし)の礼あり烏(からす)に反哺(はんぽ)の孝あり
「小鳩は親鳩の止まっている枝より三枝下に止まり、カラスはヒナの時に養われた恩に報いるため、親鳥の口に餌を含ませて返す」ということです。
子供が親に対して、礼儀と孝行を重んじなければならないことを説いた言葉です。