段ボールに「天地無用」「通凾」「手鉤無用」とあるのはどういう意味か?

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天地無用

皆さんは段ボールに「天地無用」「通凾」「手鉤無用」とあるのを見かけられたことがあると思いますが、正しい意味をご存知でしょうか?

1.「天地無用」(てんちむよう)

天地無用のマーク

天地無用」は運送用語で、わずかな傾きや衝撃で損壊する恐れのあるデリケートな対象物(電子機器、美術品、家具、液体の入った容器など)が入っているため、倒立状態(上下逆さま)ないし、横倒しまたは傾けた状態で輸送してはいけないことを指します。
段ボールなど荷物の梱包の外側に記載して、荷物の上下を逆さまにすると破損する恐れがあるからしてはならないと警告する言葉です。
「天地」は、ここでは上下の意で、荷物や紙、書籍などの上部と下部のこと。「無用」は、してはならない、取り扱ってはいけないという意味です。

酒類などの入った段ボールによく表示されているので、ご存知の方も多いと思います。

JIS規格の荷扱い指示マーク(俗に「ケア・マーク」と言う)では、 たんに「上」という名称になっています。

この面を上に段ボールに描かれた矢印

言葉の意味が分からなければ聞けばよさそうなものですが、「ひっくり返してもよい」と勝手に逆の意味に取る人が増えてきたからかもしれません。

「天地入替無用」「天地顛倒無用」のように、「上下を入れ替える」ことを意味する語が添えられていたはずですが、四字熟語の形をとるために「入替」などの語を省略しました。そのため、反対の意味に誤解する人が多くなったようです。

文化庁が発表した平成25年度「国語に関する世論調査」では、本来の意味とされる「上下を逆にしてはいけない」で使う人が55.5パーセント、本来の意味ではない「上下を気にしないでよい」で使う人が29.2パーセントという結果が出ています。

かつて郵便局では「天地無用」と記載された赤地に白字のシールを取り扱っていましたが、現在は廃止されており、「この面を上に 逆さま厳禁 ↑↑ ゆうパック JP 日本郵便」と記載されたシールを採用しています。

ISO規格に対応する英語表記は、「THIS WAY UP」。 このほうが直裁的で分かり易いかも知れません。 「逆積み禁止」かつ「横積み禁止」の意味です。

2.「通凾」(つうかん)

通函

側面に「通凾」(「通函」)と書かれた大きな段ボール箱がトラックに積まれているのを見かけたことはありませんか?

通凾」は流通業界で使われる言葉で、「凾」は、函館の「函」の旧字体で、「箱(ハコ)」を意味します。 「通」商上の「箱」=「商売上の箱」から転じ、商品を入れて取引先・得意先へ運ぶための箱のことを言います。「 通い箱(かよいばこ)」とも言います。

空きびんを回収するのに使うビール箱などを意味するようになりました。

商品を運ぶ際に入れる箱で、「使い捨てではなく繰り返し使えるもの」を指します。現在では大抵「折りたたみ式のプラスチックケース」になっています。

通函

以前、高槻市内の各自治会では「リサイクルごみ」を出す時に、この「折りたたみ式プラスチックケース」の「通凾」を使用していました。

3.「手鉤無用」(てかぎむよう)

手鉤

「手鉤」(上の写真)とは、重たい荷物を引き摺ったりぶら下げたりする時に使うフック型の道具です。 手鉤のフックで刺したキズが付くので、それを避けたい場合に明示するものです。

昔の運送業者は「手鉤」を持っていて、手鉤を荷物に引っかけて運びました。 そのために大事な荷物に手鉤の穴があけられるということも再々だったそうです。

そこで、それを避けるために、書いても無駄と知りつつ 荷物には「手鉤無用」と書いたものです。

マグロを手鉤で引っ掛けて移動させているのをテレビで見ることがありますね。

マグロを手鉤で引っ掛ける

私は子供の頃、氷屋さんが手鉤で氷塊をひっかけて移動させているのを見た記憶があります。しかし、今では「手鉤」と言われても、わかる人は少ないかもしれません。

氷用手鉤氷

現在では「手鉤無用」の表示は、「手かぎ禁止」に変わっています。 ISOの英語表記は、「USE NO HAND HOOKS」です。

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