日本語の面白い語源・由来(は-⑳)ハイカラ・母の日・バッタもん・薔薇・蓮っ葉・博打・バレンタインデー・馬鹿・ハンサム・春

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はいからさんが通る

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.ハイカラ

ハイカラ

団塊世代の私が子供の頃、明治生まれの年寄りがよく「ハイカラ」という言葉を口にしていました。しかし今ではほとんど使われない言葉で、「はいからさんが通る」というアニメや実写版の映画を思い浮かべるくらいです。

ハイカラ」とは、「西洋風なこと。目新しくしゃれていること。また、そのようなさまや人のこと」です。西洋気取りの軽薄な人というニュアンスを含むことが多い言葉です。

ハイカラは、丈の高い襟という意味の英語「high collar(ハイカラー)」に由来します。
丈の高い襟が「ハイカラ」の語源となったのは、明治時代、西洋帰りの人や西洋の文化や服装を好む人が、ハイカラーのワイシャツを着ていたことからです。

当時は「ハイカラ」のほか、「ハイカる」という動詞も生まれました。
やがて、西洋の服装や文化を取り入れた生活が当たり前となったため、「ハイカラ」は死語となりました。

しかし、当時の流行と今の西洋風は異なることから、現代では「ハイカラ」が明治時代に流行した西洋の文化や服装を指し、「明治ハイカラ」と言って、「昭和レトロ」や「大正ロマン・大正モダン」などと並ぶ言葉になっています。

2.母の日(ははのひ)

母の日

団塊世代の私が小学生の頃は、「母の日」にちなんで、赤い造花のカーネーションを胸に付けました。お母さんがいない(亡くなっている)同級生は白いカーネーションを付けました。それで母親のいない子供が誰かわかったのですが、今なら「個人情報の漏洩問題」や「差別問題」になるかもしれませんね。

母の日」とは、「母に感謝の気持ちをあらわす日。5月第二日曜日。Mother’s day」です。

母の日は、1905年5月9日、アメリカのフィラデルフィアに住む少女アンナ・ジャービスが、母の死に遭遇したことで、生前に母を敬う機会を設けようと働きかけたことに由来します。

この働きかけが、やがてアメリカ全土に広まり、1914年には当時の大統領ウイルソンが、5月の第二日曜日を「母の日」と制定し、国民の祝日となりました。

アンナの母親が好きだった白いカーネーションを祭壇に飾ったことから、母が健在であれば赤いカーネーション、亡くなっていれば白いカーネーションを胸に飾るようになり、カーネーションを贈る習慣へ変化していきました。

この他、古代ローマ時代、神々の母リーアに感謝する春祭りからとする説や、17世紀のイギリスで、「復活祭(イースター)」の40日前の日曜日を「マザーズ・サンデー」とし、母親と過ごすために出稼ぎ労働者を里帰りさせていたことに由来する説もありますが、「母の日」と似たような行事があったと考えるのが妥当です。

日本では明治末期から行われていたようですが、それはほんの一部で、大正4年(1915年)に教会で行われてから少しずつ一般に広まり始め、全国的に母の日が広まったのは、昭和12年(1937年)に森永製菓が告知をしてからといわれます。

昭和初期から戦後しばらくの間は、当時の皇后の誕生日であった3月6日が「母の日」とされていたそうです。「国母(こくも/こくぼ)」という意味だったのかもしれませんね。

「母の日」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・母の日の 仏の母に 庭の花(山崎巌)

・母の日の 母包紙 大切に(安良岡昭一)

・母の日や 母は病むとも 紅の花(林翔)

・母の日や 鏡のぞけば 母の顔(瀬川秋子)

3.バッタもん(ばったもん)

バッタもん

バッタもん」とは、「極端な安値商品。ばったもの。正規のルートで仕入れていない品物。偽物」のことです。

バッタもんの「バッタ」は、「投げ売り」を意味する古道具商の隠語でした。

そこから、商品を格安で売る店を「バッタ屋」と呼ぶようになり、正規ルートを通さず仕入れた商品を売る店も呼ぶようになりました。

さらに、そこで売られている物を「バッタもん」と呼ぶようになり、正規ルートの仕入れ商品でないことから、偽物商品や粗悪品なども「バッタもん」と呼ぶようになりました。

古道具商の間で「投げ売り」を「バッタ」と呼ぶようになった由来は、バタバタ勢いよく落ちたりするさまを表す「ばったばった」「ばったり」などの擬態語からと考えられます。

バナナの叩き売りが、板やハリセンを叩いて値を下げていくことから、叩く音に由来するといった説もありますが、この場合の擬音は「パンパン」や「ペンペン」が近いことや、叩き売りを「バッタ屋」と呼ばないことから考え難い説です。

4.薔薇(ばら)

薔薇

バラ」とは、「バラ科バラ属の総称」です。低木で主に観賞用として栽培されます。

バラは、「茨・荊・棘(イバラ)」の「い」が抜けた語です。

バラやカラタチなどトゲのある低木を「イバラ」と言いますが、古くは「バラ」も同様の意味で使われていました。

やがて、バラ属の植物を「バラ」、トゲのある低木の総称には「イバラ」というように、使い分けられるようになりました。

漢字の「薔薇」は、中国語の借用です。古くは、音読みで「そうび」や「しょうび」と読まれることが多く、古今和歌集では「そうび」と詠われています。

なお、薔薇については「バラはなぜ漢字で薔薇と書くのか?和名のばらの語源は何か?」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。

5.蓮っ葉(はすっぱ)

蓮っ葉

蓮っ葉」とは、「言動などが軽薄なさま。特に態度や言動に品がない女性」のことです。

蓮っ葉は、「蓮葉(はすは)」が促音化された言葉です。
「蓮葉」は軽薄や軽率の意味で、近世にも使用されています。

「蓮葉」がそのような意味になった由来は、「蓮葉商ひ(蓮の葉商ひ)」といわれます。
「蓮葉商ひ」とは、お盆の供物を盛るための蓮の葉を売る商売のことで、蓮の葉はその期間しか用いられないため、短期にしか役に立たない粗製のものを売るという意味でも使われるようになりました。

それが転じて、「軽はずみ」「浮ついた」などの意味で「蓮葉」が用いられるようになったとされます。

また、近世の上方で、問屋が客の身の回りの世話をさせるために雇った女性は、売色を兼ねる場合があり、そこから「蓮葉女」という語が生まれ、「軽い女」という意味が含まれるようになりました。

蓮っ葉な女性

のちに「蓮葉女」は略され、「蓮葉」と呼ばれるようになったため、「蓮っ葉」はとくに女性に対して使われる言葉となりました。

その他、タバコを斜(はす)にくわえて吸う仕草から、「斜っ葉」と「葉スッパ」をかけ、「蓮っ葉」になったとする説もありますが、駄洒落で作られた俗説です。

6.博打(ばくち)

博打

博打」とは、「金品を賭けた勝負をすること。成功の可能性は薄いが、思い切ってすること」です。

博打は、「ばくうち」と呼ばれていたものが変化し「ばくち」となった語です。
「博」は、双六(すごろく)などサイコロを用いた遊びを意味し、多くは金品を賭ける意味を含みました。「打」は、古くから賭け事を行うことを意味する「うつ」です。

同じ意味をもつ「博戯(はくぎ)」からの転とする説もあるが、このような音変化は他に類がないため定かな説ではありません。

また、ばくちを「博奕」とも書くのは中国語からで、「ばくえき」「ばくよう」とも読むみます。

7.バレンタインデー/Valentine’s day

バレンタインデー

バレンタインデー」とは、「愛の告白や贈り物をする日として、日本では主に女性が男性へチョコレートを渡す日。2月14日」のことです。

バレンタインデーの「バレンタイン」は、3世紀にローマで殉教したキリスト教徒の英語名で、イタリア語では「ヴァレンティーノ」といいます。

3世紀当時のローマ皇帝クラウディウス2世は、兵士達の戦意に支障をきたすとして若者の結婚を禁じていました。

バレンタインは若者たちを哀れに思い、密かに結婚させていましたが、皇帝がそれを知り、バレンタインにローマ国教への改宗を迫ったが、承諾しなかったためバレンタインは投獄され処刑されました。

そのバレンタインが処刑された日が、バレンタインデーの2月14日です。
殉教したバレンタインは、後に勢力を増したキリスト教により、聖人として認定されました。

同じくローマでは、毎年2月14日に未婚の女性たちの名前が書かれた紙を集め、翌日に未婚の男性がその紙を引き、紙に書かれた名前の女性と付き合うといった伝統的な祭りがありました。

しかし、この祭りは風紀が乱れるとしてキリスト教の聖人を奉る行事になり、約200年前に殉教した聖人バレンタインを行事の守護聖人としました。

その後、キリスト教ではカードや花束などを互いに贈り合う行事になりました。

バレンタインデーにチョコレートを贈る習慣は日本特有のものではなく、イギリスのチョコレート会社カドバリー社が、ギフト用チョコレートボックスを製造し広まったものです。

日本では、1932年に神戸の洋菓子店モロゾフが「バレンタインにチョコレートを贈る」スタイルを初めて紹介しました。

1935年2月に、モロゾフは英字新聞の「ジャパンアドバタイザー」に日本初のバレンタインチョコレート広告を掲載し、1958年には新宿の伊勢丹で「バレンタイン・セール」と称したキャンペーンが行われました。

1960年代には、お菓子メーカーや百貨店がバレンタインデーを積極的に売り出すようになり、1970年代に入って、バレンタインデーは「女性から男性へチョコレートを贈って愛の告白をする日」という日本独自のスタイルが広まっていきました。

8.馬鹿(ばか)

バカ殿様

馬鹿」とは、「愚かなこと。知能の働きがにぶいこと。また、そのような人」です。

馬鹿の語源は、サンスクリット語で「無知」や「迷妄」を意味する「baka」「moha」の音写「莫迦(ばくか)」「募何(ぼか)」とされます。

日本では鎌倉時代末期頃から「ばか」の用例があり、室町中期の『文明本説用集』には、馬鹿の異表記として「母娘」「馬娘」「破家」をあげ、「とんでもない」の意味で「狼藉之義也」と説明しています。

以上のことから、漢字の「馬鹿」は当て字と考えられます。

馬鹿の語源には、『史記(秦始皇本紀)』の故事「鹿をさして馬となす」からというものがあります。
これは、秦の趙高が二世皇帝に、鹿を「馬である」と言って献じた。
群臣は趙高の権勢を恐れて「馬です」と答えたが、「鹿」と答えた者は暗殺された。
このことより、自分の権勢をよいことに矛盾したことを押し通す意味として「馬鹿」と言うようになったというものです。

しかし、「鹿」を「か」と読むのは大和言葉で、漢文では「ばろく」と読みます。
そのため、この故事が「ばか」の語源とは考え難く、「ばか」に「馬鹿」の字が当てられた由来として考慮するにとどまります。

ただし、「馬」や「鹿」は当て字に使われることが多い漢字であるため、「ばか」の漢字表記がこの故事に由来すると断定できるものではありません。

その他、馬鹿の語源には、「おこがましい」の語源となる「をこ」とする説もありますが、「をこ」から「ばか」という音変化は考え難いものです。

9.ハンサム/handsome

畠山重忠

今の若い人の「ハンサム」の基準はどうかわかりませんが、私は個人的には2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で畠山重忠役で出ていた中川大志さんのような人をイメージします。

ハンサム」とは、「美男子。顔立ちのよい男子」のことです。

ハンサムは、英語「handsome」からの外来語です。
「handsome」は、「Hand(手)」+「Some(~しやすい)」からなる言葉で、「手で扱いやすい」という意味です。

顔立ちが良いと女性を手で扱うことも容易であることから、「ハンサム」と呼ばれるようになりました。

10.春(はる)

春

」とは、「四季のひとつで、冬と夏の間の季節」です。現行の太陽暦では3月から5月まで。旧暦では正月から3月まで。「二十四節気」では立春から立夏の前日まで。天文学上では、春分から夏至の前日までをいいます。

春の語源には、草木の芽が「張る(はる)」季節からとする説。
田畑を「墾る(はる)」季節から、「春」になったとする説。
気候の「晴る(はる)」が転じて、「春」になったとする説があります。