前に「白という漢字の由来は?99歳のことを白寿と呼ぶ理由も紹介」という記事を書きましたが、意味は全く違いますがよく似た形の漢字に「百」があります。
今回はこの「百」という漢字の由来についてご紹介したいと思います。
1.「百」という漢字の成り立ち
形声文字です。(一+白)
「1本の横線(「ひとつ」の意味)と「頭の白い骨(頭蓋骨)、または日光、またはどんぐりの実」の象形(「白い」の意味ですが、ここでは「博」に通じ、「ひろい」の意味)から、大きい数「ひゃく」を意味する「百」という漢字が成り立ちました。
2.「百」という漢字の読みと意味
(1)読み
①音読み:ヒャク、ハク
②訓読み:ひゃく、ひゃ(っ)、もも、もんど、なり、どう、ゆ、お
(2)意味
①数の名前。十の十倍。(例:百枚、百日)
②数の多いこと(例:五百[いお]、八百[やお])
③99番目の物事の次の物事(例:百番目)
④99回行ってから、もう一回行うこと。もも。(例:百度、ももたび)
⑤年齢の「①」歳(例:もうすぐ百の祖母)
⑥銭の「①」文(一文とは銅貨の穴あき銭一枚)
⑦もろもろ(多くのもの)。ひゃっ。(例:百貨、百科)
⑧あらゆる(全ての)。ひゃっ。(例:百般)
⑨さまざま(物事がそれぞれ違っていること)。ひゃっ。(例:百態、百花繚乱)
3.「百」を含む言葉
(1)御百度(おひゃくど)
願いが叶うように一定の距離を百回往復するごとに祈ること。「お百度参り」の略称。
(2)百日紅(さるすべり/ひゃくじつこう)
フトモモ目ミソハギ科サルスベリ属の落葉植物。夏に赤や白の小さな花が長い期間咲きます。樹皮は非常に滑らかで、猿も滑って登れないということからこのように呼ばれます。
(3)百足(むかで)
多足亜門ムカデ綱に属する節足動物のうち、ゲジ類を除いたものの総称。多くの体節からなる扁平(へんぺい)で細長い体を持ち、各体節に一対の脚があります。捕食性で、頭部に毒液を出す大顎(おおあご)を持っています。夜行性で湿地に住んでいます。
(4)凡百(ぼんぴゃく)
いろいろなもの。多くのもの。
(5)八百万(やおよろず)
数がきわめて多いこと。無数なこと。
(6)百代(はくたい/ひゃくだい/ひゃくたい/ももよ)
きわめて長い年月。百年。永遠。(使用例:月日は百代の過客にして)
(7)二百十日(にひゃくとおか)
立春から二百十日目の日。九月一日頃。この前後によく台風が来ます。
(8)二百二十日(にひゃくはつか)
立春から二百二十日目の日。九月十一日頃で、「二百十日」と並んで、この前後にもよく台風が来ます。
(9)八百屋(やおや)
野菜類を売る店や人。青物屋。青果商。
(10)百害(ひゃくがい)
多くの弊害
4.「百」を含む四字熟語
(1)一樹百穫(いちじゅひゃっかく)
人材を育成することは、大きな利益につながるということ。
また、大計を成功させるには人材の育成が必要であるということ。
「一樹」は一本の木を植えること。
「百穫」は百倍の収穫の意。
(2)一了百了(いちりょうひゃくりょう)
一つが解決すれば、すべてのことが解決すること。
または、根本の一つから、全体を推測できること。
「一」と「百」は初めと終わりの意味。
「了」は終わること。
(3)八百八町(はっぴゃくやちょう)
江戸市中に町数が多いこと。また、江戸の町全体のこと。
(4)一呼百諾(いっこひゃくだく)
人望や権威が強く、一声かければ応じる人の多いたとえ。
「一呼」は一声かけること。
「諾」は応じるや、同意すること。
(5)一斗百篇(いっとひゃっぺん)
酒をたくさん飲んで、たくさんの詩を書くこと。
「斗」は容積の単位。
唐の詩人の李白は、一斗の酒を飲んでいる間に詩を百篇作ったという故事から。
「斗酒百篇(としゅひゃっぺん)」とも言います。
(6)一罰百戒(いちばつひゃっかい)
罪を犯した一人に罰を与えて、他の人が同じ罪を犯さないように注意を発すること。
「一罰」は一人に罰を与えること。
「百戒」は百人の戒めにすること。
一つの罰を百の戒めにするという意味。
(7)一致百慮(いっちひゃくりょ)
物事を色々と考えても、結論は結局一つになるということ。
「一致」は考えた末に出る結論。
「百慮」は色々な考え。
「致を一にして慮を百にす」とも読みます。
(8)勧百諷一(かんぴゃくふういつ)
役に立ったり利益になることがあまりなく、悪影響を与えたり損害になったりすることのほうが多いこと。
言葉や文章についていう言葉。
元は百の贅沢を勧めて、一の節約をするということを遠回しに諫めた言葉。
「百を勧めて一を諷す」とも読みます。
(9)譎詐百端(けっさひゃくたん)
嘘や裏切りが非常に多いこと。
「譎詐」は嘘や裏切り。
「百端」は数が多いことのたとえ。
(10)三百代言(さんびゃくだいげん)
根拠のない適当な話で人を騙すこと。
または、そのような人のこと。
「三百」は昔の小さな通貨の三百文ということから、非常に価値が低いことのたとえ。
「代言」は代言人のことで、弁護士の昔の名称。
資格を持っていない人が、他人の訴訟を取り扱ったことを罵っていった言葉から。
(11)四百四病(しひゃくしびょう)
人のかかる様々な病気のこと。
仏教で人の体を構成する四大元素、地、水、火、風の不調が原因で発生し、それぞれに百一の病があるとされていて、あわせると四百四の病があるということから。
(12)諸子百家(しょしひゃっか)
中国の春秋時代に活躍した、たくさんの学者や学派、書物などのこと。
「諸子」は孔子や孟子、老子、荘子などの学者のこと。
「百家」は儒家や道家、墨家、法家などの学派のこと。
(13)千瘡百孔(せんそうひゃっこう)
欠点や短所が数多くあること。
または、ひどく傷だらけでぼろぼろの状態のこと。
「千」と「百」はどちらも数が多いことのたとえ。
「瘡」は切り傷、「孔」は穴。
千の切り傷、百の穴があるという意味から。
(14)読書百遍(どくしょひゃっぺん)
意味の難しい文章でも、何度も読むことで自然に理解できるということ。
「百遍」は百回行うということから、何度も行うことのたとえ。
「読書百遍、意自ずから通ず」という形で使うことの多い言葉。
中国の三国時代、魏の薫遇が読書の大切さを弟子に説いたという言葉から。
(15)年百年中(ねんびゃくねんじゅう)
「一年中いつも」「年がら年中」「絶えず」などの意味。
主にあきれたり、批判するときに用いる。
「年百」は一年のうちに何度もという意味。
(16)破綻百出(はたんひゃくしゅつ)
喋れば喋るほどぼろが出ること。
「破綻」は布の破れとほころび。
「百」は数が多いことのたとえ。
破れやほころびがたくさん出てくるという意味から。
(17)百載無窮(ひゃくさいむきゅう)
いつまでも無くなることがないこと。
「百載」は「百歳」のことで、百年という意味から、永遠、永久という意味。
「無窮」は限りがないこと。
天地はいつまでも不変であることをいう言葉。
「天壌無窮(てんじょうむきゅう)」「天地長久(てんちちょうきゅう)」「天長地久(てんちょうちきゅう)」も同様の意味です。
(18)百尺竿頭(ひゃくせきかんとう/ひゃくしゃくかんとう)
行き着くことの出来る最高の地点。
長さが百尺ある長い竿の先の部分という意味から。
最高の地点からさらに努力して、その先を目指す向上心をいう。
「百尺竿頭一歩を進む」という形で用いることが多い言葉。
「百丈竿頭(ひゃくじょうかんとう)」も同様の意味です。
(19)百世之師(ひゃくせいのし)
後世までずっと師として尊敬され続ける人のこと。
「百世」は世代が百代もの長い期間という意味から、非常に長い年月、後世まで長く続くという意味。
(20)百世之利(ひゃくせいのり)
永遠に利益を得続けること。
「百世」は世代が百代もの長い期間という意味から、非常に長い年月、後世まで長く続くという意味。
(21)百折不撓(ひゃくせつふとう)
何度失敗しても信念を曲げないこと。
「百折」は何度も折れること。
「不撓」は決して曲がらないこと。
非常に意志が固いことをたとえた言葉で、物事が何度途中で駄目になっても、決して諦めないという意味から。
(22)百川学海(ひゃくせんがっかい)
どんな人でも絶えず学び続ければ、いつかは大道を知ることができるということ。
「百川」は全ての川。
「海」は大道のたとえ。
全ての川は海を目指して流れ続け、いつかは確実に海にたどり着くということから。
「百川海を学びて海に至る」を略した言葉。
(23)百代過客(ひゃくだいのかかく)
「ひゃくだい」は「はくたい」「ひゃくたい」とも読み、「かかく」は「かきゃく」とも読みます。
永久に止まらずに、歩き続ける旅人のこと。
または、年月をたとえた言葉。
「百代」は途絶えることなく、何代も続いていくこと。または、いつまでも続くことのたとえ。
「過客」は旅人のこと。
時間や年月をいつまでも歩き続け、帰ることのない旅人にたとえた言葉。
松尾芭蕉の「奥の細道」序文にある「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。」で有名ですが、これは李白「春夜宴桃李園序」にある「夫れ天地は万物の逆旅、光陰は百代の過客なり。」に依った文章です。