日本語の面白い語源・由来(か-⑫)花柳界・顔・買う・駆け落ち・烏口・がっかり・蟹

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花柳界

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.花柳界(かりゅうかい)

花柳界

花柳界」とは、芸者・遊女の社会、遊里、花柳の巷のことです。

花柳界の「花柳」は、中国から入った言葉です。
その昔、中国では遊女などがいる地域を「柳港花街」や「花街柳港」と称し、略して「花柳」とも言いました

日本では略した「花柳」の語が広まり、芸者や遊女、また遊里を指し、その世界を「花柳界」と呼ぶようになりました。

現代では遊郭が無くなったことなどから、主に芸妓(芸者)の世界を指して「花柳界」と言います。

2.顔(かお)

顔

」とは、頭部の前面で、目・鼻・口などがある部分です。つら、おもて、顔立ち、表情。

顔の旧かなは「カホ」で、古くは「顔」「顔立ち」「顔つき」のほか、「容姿」や「体つき」の意味でも用いられました。

顔の語源には、「カホ(形秀)」の意味とする説(「秀」は「目立つもの」の意)や、
「カ」は「上」、「ホ」は「ホカ(外)」で、「表面」の意味からとする説など諸説ありますが、未詳です。

3.買う(かう)

買う」とは、代金を払って自分のものにする、購入する、他人を高く評価する、引き受けることを意味します。

買うの語源は、品物を手に入れたりサービスを受けるために、お金と交換するところから、「かふ・かう(交・替・代・換)」と考えられます。

買うの漢字「買」は、「貝」が「財貨」、その上が「網」で、網が被さって見えない財貨を求めるように、欲しい物を求めることを表しています。

4.駆け落ち(かけおち)

駆け落ち」とは、結婚を許されない相愛の男女が、しめし合わせてよその土地に逃げることです。

2022年NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に登場した北条政子源頼朝と駆け落ちしましたし、NHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」に登場した柳原白蓮(やなぎはらびゃくれん)も大学生の宮崎龍介と駆け落ちしました。女優の岡田嘉子(おかだよしこ)も恋人とソ連に駆け落ちし、「雪の樺太・恋の逃避行」と呼ばれました。

駆け落ちは、中世末期から見られる語です。戦国時代から江戸時代までは、戦乱・重税・貧困・悪事などから、よその土地へ逃げることを表し、「欠落(欠け落ち)」と書きました

「欠落」と表記するのは、戸籍から欠け落ちることからとも言われますが、明治時代以前からある言葉なので、集団から逃げ出すことを「欠け落ちる」としたものです。

「よその土地に駆け込む」という意味から、「駆け落ち」と表記されるようになり、「失踪」の意味から、男女が密かに他の土地へ移り住むことを「駆け落ち」と言うようになりました。

5.烏口/カラス口(からすぐち)

烏口

烏口」とは、製図用具の一つで、二枚の刃の間にインクを含ませ線を引くものです。刃先の間隔をネジで調節して線の太さを変更できます。

烏口は、二枚の刃からなるペン先の形が、カラスのくちばしに似ていることからの名前です。
中国語圏では、アヒルのくちばしにたとえ「鴨嘴筆(ヤーズイビー)」と言います。

英語では「烏口」や「鴨嘴筆」のように鳥のくちばしにたとえておらず、「drawing pen(製図用ペン)」と呼ばれます。

6.がっかり・がっくり

がっかり

がっかり」とは、落胆するさま、ひどく疲れて気が抜けるさまのことです。
がっくり」とは、力が抜けて、急に気持ちがゆるむさま、落胆するさま、急に折れ曲がったりするさまのことです。

「がっかり」も「がっくり」も、共に擬態語が副詞になった語です。

特に「がっくり」は類似表現に「がくり」「がくっ」「がくん」「がっくん」があり、擬音語に近い擬態語で、物が折れ曲がるさまも表します。

そのため、「がっかり」は落胆した時などの精神状態を示すことが多いのに対し、「がっくり」はうなだれた様子や肩を落とした様子など、多くは動作も含めて表現する際に用いられます。

7.蟹/カニ(かに)

蟹

カニ」とは、十脚目短尾下目に属する甲殻類の総称です。一対のはさみと四対の歩脚、堅い甲を持ちます。食用になるものが多く、海水・淡水・陸に分布します。

カニの語源には、以下のように諸説あります。

甲が赤いところや茹でると赤くなるところから、「カニ(甲丹)」「カニ(殻丹)」の意味
甲が堅くよく逃げるところから「カタニゲ(堅逃)」の略
能力を兼ね具える意味の「かぬ」の変化
カニは、海よりも川蟹の例が古くから見られることから、「カハニハ(河庭)」が変化

しかし、漢字の「蟹」の古音は「カイ」なので、和語ではなく漢字の音変化と考えるのが妥当です。

漢字の「蟹」は中国からですが、中期韓国語でも「カニ」に似た発音をしています。

更に遡れば、「カニ(カイ)」に類似した発音はアジアの各地で見られ、元となった地域の特定は困難です。

「蟹」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・さゞれ蟹 足はひのぼる 清水哉(松尾芭蕉

・みじか夜や 芦間流るる 蟹の泡(与謝蕪村

・空をはさむ 蟹死にをるや 雲の峰(河東碧梧桐

・ひとでふみ 蟹とたはむれ 磯あそび(杉田久女