読書感想文で「電子書籍NG」(紙媒体に限定)はICT社会に逆行の時代錯誤!

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読書感想文

「読書感想文」と言えば、小中学生の頃、夏休みの宿題に必ずと言っていいほど出されたように記憶しています。そして、なかなかうまく書けなくて四苦八苦した苦い思い出があります。

ところで、「読書感想文コンクール」の代表的な存在である「青少年読書感想文全国コンクール」の「(応募できるのは)紙媒体での書籍に限ります」という規定をめぐって、最近賛否両論が巻き起こっているようです。

1.読書感想文の「電子書籍NG」の規定

公益社団法人「全国学校図書館協議会」と毎日新聞社が主催する今年の「第65回青少年読書感想文全国コンクール」の公式サイトの「感想文Q&Aコーナー」で、「電子書籍を読んで感想文を書いてもいいの?」という質問に対して、「紙媒体での書籍に限りますのでご応募いただけません」と回答しているのです。

2.「電子書籍NG」の根拠

(1)本は書き込みをして読むもの

日本経済新聞の記事によれば、その根拠は、「本は書き込みをして読むものだから」という説明だったそうです。

(2)電子書籍は随時更新されるケースがあるため

また、ニュースサイトのBLOGOSが主催者に根拠を確認した結果、次のような回答があったそうです。

当コンクールでは、読書感想文作品の審査にあたり、児童生徒が読んだ本(対象図書)を用意し、感想文の内容が対象図書の内容に沿ったものか、引用等が適切かどうかなどを確認することになっています。

ご応募いただく際に書いていただいている「応募票」(書名、著者名、発行所などを記入する欄がある)をもとに、対象図書を特定し、揃えて審査を行っています。

刊行された出版社はもちろん、単行本か文庫本か、なるべく発行年や版まで同じものを揃えています。

電子書籍等Web上の作品は随時更新されるケースもあり、児童生徒が読んだ内容を特定するのが難しく、また、電子書籍は閲覧するために機器が必要なことなど、これらを審査対象に含めるには新たな対応が必要となります。

市区町村・都道府県・中央審査会、すべての審査会でWeb上の作品や電子書籍に対応した審査を導入することは現時点では難しい事情もあるため、現段階ではこれらを対象外としています。

電子書籍等の利用が拡大している現状は認識しており、国が進める学校現場のICT化の動向や整備状況、児童生徒の電子書籍の利用状況などを十分考慮しつつ、各地区の審査員の先生方のご意見をもとに、今後、電子書籍等を対象に含めるか判断をしていく予定です。

令和元年8月22日 青少年読書感想文全国コンクール事務局

3.不可解な主催者の「電子書籍NG」の根拠

(1)本は書き込みをして読むものなのか?

個人所有の本であれば、気に入った個所に感想や気の付いたことなどをメモ書きする人もいるでしょう。夏目漱石のように、本にやたらに書き込み(落書き)をしたり線を引いたりする癖のあった有名人もいます。

「三四郎」の中にも、三四郎が東大の図書館で、「こんな本は誰も読んだことがないだろう」と思うような本でも、開いてみるといろいろと書き込みがあって驚いたという話が出てきます。少し長いですが面白いので次に引用してみます。

三四郎は一年生だから書庫へはいる権利がない。しかたなしに、大きな箱入りの札目録ふだもくろくを、こごんで一枚一枚調べてゆくと、いくらめくってもあとから新しい本の名が出てくる。しまいに肩が痛くなった。顔を上げて、中休みに、館内を見回すと、さすがに図書館だけあって静かなものである。しかも人がたくさんいる。そうして向こうのはずれにいる人の頭が黒く見える。目口ははっきりしない。高い窓の外から所々に木が見える。空も少し見える。遠くから町の音がする。三四郎は立ちながら、学者の生活は静かで深いものだと考えた。それでその日はそのまま帰った。
次の日は空想をやめて、はいるとさっそく本を借りた。しかし借りそくなったので、すぐ返した。あとから借りた本はむずかしすぎて読めなかったからまた返した。三四郎はこういうふうにして毎日本を八、九冊ずつは必ず借りた。もっともたまにはすこし読んだのもある。三四郎が驚いたのは、どんな本を借りても、きっとだれか一度は目を通しているという事実を発見した時であった。それは書中ここかしこに見える鉛筆のあとでたしかである。ある時三四郎は念のため、アフラ・ベーンという作家の小説を借りてみた。あけるまでは、よもやと思ったが、見るとやはり鉛筆で丁寧にしるしがつけてあった。この時三四郎はこれはとうていやりきれないと思った。

蛇足ながら、アフラ・ベーン(1640年~1489年)というのは「イギリス初の女性職業劇作家」で、代表作は「オルノーコ」です。

また、最近東大教授の阿部公彦氏が『名作をいじる。「らくがき式」で読む最初の1ページ』という本で、「本に書き込みをする読書法」を提唱しています。

しかし、図書館の本であれば、マナー違反(場合によっては「器物損壊罪」に問われる恐れもある)ですし、普通は本に書き込みをする人は少ないと私は思います。

また、「本は書き込みをして読むもの」という考えを受け入れるとしても、Kindleの「オプション」機能を使えば、スマホで電子書籍を読んでいても、気になるページに「ブックマーク(しおり)」を付けたり、マーカーで塗るように「文章をハイライト表示」することも出来ますし、「メモ編集機能」でメモを書き込むことも出来るそうです。

紙の本に「書き込み」や「ハイライト」を入れてしまうと、もう二度と元には戻せませんが、Kindle本の場合は、元のデータはそのままなので、いつでも消したり修正することができるというメリットもあります。

(2)電子書籍に限ってそれほど更新されるものなのか?

私は著作権切れの古典を集めた「青空文庫」しか読んだことがなく、新刊の電子書籍を買って読んだことがないのでよくわかりませんが、それほど更新が多いのでしょうか?

もし紙の本と違って、電子書籍の場合は随時更新があるのが本当だとしても、感想文に影響を及ぼすほど「内容に重大な変更のある更新が多い」ということなのでしょうか?

これは理解に苦しむところです。

4.今後は速やかに「電子書籍OK」に変更すべき

2020年には、小学校で「プログラミング教育」が必須となるなど「ICT社会」(情報通信技術社会)化が急速に進む中で、「電子書籍NG」というのは時代錯誤も甚だしいと私は思います。

2020年のプログラミング教育必須化を見据えて、小学校のICT環境整備も進んでおり、スマホで電子書籍を読む子供が増えるのは自然の勢いであり自然な流れだと思います。

ただ、老婆心ながら小中学生の皆さんへの忠告ですが、紙の本にせよ、電子書籍にせよ「課題図書に完全対応した読書感想文書き方ドリル」のような「サボ」を使って「コピペ」するようなことは、絶対「NG」ですから、くれぐれもご注意ください。