1.達人大観(たつじんたいかん)
物事の道理に深く通じた人は、全体を広く客観的に観察できるということです。出典は「鶡冠子(かつかんし)」です。
「達人」は広く道理に通じる人で、「大観」は大局から観察することです。
「達人は大観す」と訓読します。
2.知者不言(ちしゃふげん)
物事を本当に知っている者は、心の中に深く蔵して言わないということです。出典は「老子」です。「智者不言」とも書きます。
「知者」は知恵が豊かで物事の道理に通達した人の意です。
「知者は言わず」と訓読します。
同じ出典の「言者不知(げんしゃふち)」(むやみに口に出す人は実は物事をよく知らない)と合わせて、一般に「知る者は言わず、言う者は知らず」として用います。
3.知者不惑(ちしゃふわく)
賢い人は物事の道理を承知しているから、物事の判断に迷うことはないということです。出典は「論語」です。
「知者は惑わず」と訓読します。「智者不惑」とも書きます。
4.知者楽水(ちしゃらくすい)
知恵のある賢い人は、水が流れるように才知を働かせ滞ることがないから、水を好んで楽しむということです。出典は「論語」です。
知者の風格について言う言葉です。「知者は水を楽しむ」と訓読します。
「仁者楽山(じんしゃらくざん)」と合わせ、「知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ」ということです。
5.知崇礼卑(ちすうれいひ)
本当の知者は知識を得れば得るほど、他人に対しては謙虚になり、礼を尽くすものだということです。出典は「易経」です。
「知崇」は知能が高くなることで、それによって徳も高まることです。「礼卑」は礼においてはへりくだることで、それによって人に慕われるということです。
「知崇(たか)く礼卑(ひく)し」と訓読します。
6.中通外直(ちゅうつうがいちょく)
君子の心は邪心がなく広々として、その行いは真っ直ぐなことです。出典は「周敦頤(しゅうとんい)」です。
「中通」はハスの茎の中に穴が開いているさまで、心に邪心のないたとえです。
「外直」は外形がまっすぐで正しいことです。ともにハスの茎の形容です。
「中(なか)通(つう)じ外(そと)直(なお)し」と訓読します。
7.桃李成蹊(とうりせいけい)
徳がある人の周りには、何も言わなくても、徳を慕って、自然に人々が集まってくるということのたとえです。出典は「史記」です。
桃やスモモの木の下には、花の美しさに惹かれて人が集まってくるために、おのずとそこへ至る小道ができるという意。「李」はスモモ、「蹊」は小道のことです。
「桃李言(ものい)わざれども下自(おの)ずから蹊(けい)を成す」の略です。
成蹊大学や成蹊高校のように、学校名によく使われています。
8.徳高望重(とくこうぼうじゅう)
人徳が高く、人望が厚いことです。
「徳高く望(ぼう)重(おも)し」と訓読します。
9.訥言敏行(とつげんびんこう)
徳のある人は、口数は少なく、行動に敏捷であるものだということです。出典は「論語」です。
「訥言」は口下手のことで、「敏行」は行いを敏捷にすることです。
「言(げん)に訥(とつ)にして行(おこな)いに敏(びん)なり」と訓読します。
10.豚魚之信(とんぎょのしん)
あらゆる者に信(まこと)の心を行き渡らせることができるような人徳者、またそうした至誠の心のことです。出典は「易経」です。
「豚魚」は豚と魚、供え物、卑しい者のたとえです。
豚魚に至るまで誠信を及ぼすことができるのは、信の究極であるとされています。
11.八元八愷(はちげんはちがい)
心が善良で徳の高い立派な人のことです。出典は「春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)」です。
「元」は善の意で、「愷」は徳の大きいことです。
もとは中国太古、伝説時代の高辛氏(こうしんし)のときの八人の善人(八元)と、高陽氏(こうようし)のときの八人の高徳の人(八愷)のことです。
12.百世之師(ひゃくせいのし)
のちの世まで人々から尊敬され、師と仰がれる人のことです。出典は「孟子」です。
「百世」は百代、長い年月の意。
13.飛竜乗雲(ひりょうじょううん/ひりゅうじょううん)
賢者や英雄など傑出した人物が時勢に乗じて、十二分に才能を発揮するたとえです。出典は「韓非子(かんぴし)」です。
竜が雲に乗って空をいく意。
「飛竜雲に乗る」と訓読します。
14.竜象之力(りょうぞうのちから)
高徳の人物や賢者・高僧のことです。出典は李白の詩です。
水中における竜や、陸上における象のように、他から突出した優れた力のことです。
仏教では「竜象」は象のことで、転じて学徳ともに衆に抜きんでて優れた力量のある僧のたとえです。
15.和風慶雲(わふうけいうん)
温厚で徳の備わった人格者のたとえです。出典は「近思録(きんしろく)」です。
穏やかに吹くそよ風と、吉兆を示すめでたい雲の意。
本来は孔子の高弟の顔淵(がんえん)を評した言葉です。