前に「外国の国名の漢字表記についての面白い話」の記事を書きましたが、今回は「外国の地名の漢字表記についての面白いの話」をご紹介したいと思います。あわせて、前の記事で紹介できなかった面白い国名の漢字表記についてもご紹介します。
1.発音のよく似た文字を当てた「音訳当て字タイプ」
この「音訳当て字タイプ」が一番多いようです。
・倫敦・龍動(ロンドン)London
・紐育・紐約・紐約克(ニューヨーク)New York
・巴里・巴黎(パリ)Paris
・伯林(ベルリン)Berlin
・桑港(サンフランシスコ)San Francisco
昔の日本人には、「ソーホーシスコ」と聞こえたため、元々は「桑方西斯哥」と表記し、さらに同市が港町であることから港を最後に付けて「桑方西斯哥港」と表記していました。しかし、これではあまりにも長すぎるので、「桑港」と略記するようになったそうです。
・葡萄牙(ポルトガル)Portugal
ポルトガルの漢字表記に「葡萄(ぶどう)」という文字が入っていますが、果物のブドウとは無関係です。「葡萄」は中国語では「ポータオ」と読むので、単純な音訳当て字です。
・愛斯蘭(アイスランド)Iceland
・以色列(イスラエル)Israel
・阿斯福(オックスフォード)Oxford
・愛蘭・愛倫・愛蘭土(アイルランド)Ireland
・欧羅巴(ヨーロッパ)Europe
・英吉利(イギリス)United Kingdom
・伊太利(イタリア)Italy
・英蘭(イングランド)England
・維納(ウィーン)Vienna
・墺太利(オーストリア)Austria
・和蘭(オランダ)Netherlands
・希臘(ギリシャ)Greece
・寿府(ジュネーブ)Geneva
・瑞西(スイス)Switzerland
・蘇格蘭(スコットランド)Scotland
・西班牙(スペイン)Spain
・丁抹(デンマーク)Denmark
・独逸(ドイツ)Germany
・諾威/那威(ノルウェー)Norway
・洪牙利(ハンガリー)Hungary
・芬蘭(フィンランド)Finland
・仏蘭西(フランス)France
・白耳義(ベルギー)Belgium
・波蘭(ポーランド)Poland
・羅馬(ローマ)Rome
・印度(インド)India
・爪哇(ジャワ)Java
・新嘉坡(シンガポール)Singapore
・西蔵(チベット)Tibet
・土耳古(トルコ)Turkey
・比律賓(フィリピン)Philippines
・越南(ベトナム)Vietnam
・波斯(ペルシャ)Persia
・格陵蘭・臥児狼徳(グリーンランド)Greenland
・亜爾然丁・阿根延(アルゼンチン)Argentine
・阿富汗斯坦(アフガニスタン)Afghanistan
2.外国語の意味から文字を当てた「翻訳当て字タイプ」
・牛津(オックスフォード)Oxford
この地名の「Ox」は「雄牛」で「ford」は「浅瀬」という意味です。「津」は「渡船場、船着き場」という意味なので、「牛津」と表記することにしたものです。
ちなみに、日本の佐賀県にも「牛津」という地名があります。なお、2005年に小城町・三日月町・牛津町・芦刈町の4町が合併して小城市となり、自治体としての「牛津町」は消滅ました。
・聖林(ハリウッド)Hollywood
「Holly」は「Holy(聖なる)」とスペルはよく似ていますが全く別の言葉です。「wood」の意味は「森」なので、意訳のつもりなら「聖森」としておくべき(「林」は「forest」)だったのではないかと思います。ただ致命的なのは「Holly」は「柊(ひいらぎ)」のことなので、正しくは「柊森」とすべきところでした。
・氷島・氷州(アイスランド)Iceland
「Ice」は「氷」ですが、「land」は「土、陸地」なので、正確な翻訳当て字としては「氷地」でしょう。「島」は「island」です。
蛇足ですが、「アイスランド」は緑豊かな島で、「グリーンランド」(緑蘭・緑州)は島の80%以上が氷と万年雪に覆われた島です。ただし、人間が入植する前の「アイスランド」は元々国土の1/4が樺の森林でしたが、19世紀まで続いた伐採により森林面積は減少しました。また羊などの家畜を持ち込んだため、草や若木を食い荒らしたため、国土の2/3を覆っていた植生が1/2に減少しました。
本論から脱線しますが、「アイスランド」と「グリーンランド」の命名の由来については、面白い話があります。両島の名付け親は「殺人犯」で通称「赤毛のエリック」と呼ばれる人物です。982年に殺人犯として国外追放された後、3年ほど現在のグリーンランド周辺を探検して氷に閉ざされた大地を発見しました。彼は国外追放から戻ると、「緑豊かな大地を見つけた」と嘘をついて「入植者」を集めたそうです。実は彼はそれ以前に別の島を「アイスランド」と命名して入植者を集めようとしましたが、名前が悪かったのか一向に入植者が現れなかったそうです。その反省から、あえて「グリーンランド」という夢のある名称を付けたようです。
・象牙海岸(アイボリーコースト)Ivory Coast
・黄金海岸(ゴールドコースト)Gold Coast
・奴隷海岸(スレイブコースト)Slave Coast
・金門・金門峡・金門海峡(ゴールデンゲート)Golden Gate
・金門橋(ゴールデンゲートブリッジ)Golden Gate Bridge
・喜望峰(ケープオブグッドホープ)Cape of Good Hope
・真珠湾(パールハーバー)Pearl Harbor
・紺碧海岸(コートダジュール)Côte d’Azur
・珊瑚海(コーラルシー)Coral Sea
・救世主国(エルサルバドル)El Salvador
スペイン語で「救世主」は「Salvador」なので、エルサルバドルをこのように表記します。
「エル」は冠詞です。英語で言うところの「the」ですね。
・象牙海岸(コートジボワール)Côte d’Ivoire
Côteは「海岸」、d’は「~の」、Ivoireは「象牙」という意味のフランス語で、「象牙の海岸」ということです。
3.「音訳当て字タイプ」と「翻訳当て字タイプ」の混合型
・剣橋(ケンブリッジ)Cambridge
この地名は「カム川(River Cam)に架かる橋(bridge)」という意味です。この「Cam」の意訳はむずかしかったので、「音訳」の「剣」とし、「bridge」は「翻訳」の「橋」としたわけです。
・新西蘭・新西蘭土(ニュージーランド)New Zealand
「新」だけが「New」の「翻訳」で、あとは「音訳」です。