日本語の面白い語源・由来(き-⑪)きりたんぽ・絆・気さく・木耳・気の毒・踵・切り札

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きりたんぽ

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.きりたんぽ

きりたんぽ

きりたんぽ」とは、秋田地方の郷土料理です。炊きたての米をついて潰し、太い杉の串にちくわのように練りつけて焼いたものです。「比内鶏(ひないどり)」の地鶏スープを醤油味にし、鶏肉や野菜とともに煮る「きりたんぽ鍋」が一般的ですが、田楽風に味噌を塗って食べたりもします。

きりたんぽは、「たんぽ槍」に由来します。
たんぽ槍とは、綿を丸めてや布で包んだ稽古用の槍で、単に「たんぽ」とも呼びます。
この食べ物の焼きあがった形がたんぽ槍と似ており、それを切って食べることから「きりたんぽ」と呼ばれるようになりました。

「たんぽ槍」の説の中には、江戸時代に南部藩主が花輪地方を訪れ、料理の名を尋ねられましたが名前がなかったため、「たんぽ槍」を連想して「きりたんぽ」と答えたという話もあります。
ただし、この話については、後世の作り話との見方もされています。

「きりたんぽ」は冬の季語で、次のような俳句があります。

・みちのくは つくづく遠し きりたんぽ(稲畑汀子)

・冷めるまで 待てず火傷し きりたんぽ(武井廸子)

・きりたんぽ 少し焦げ目の あるがよし(浅利恵子)

2.絆/紲(きずな)

」とは、断つことのできない人と人との結びつきです。ほだし。

絆の語源には、「頸綱(くびつな)」「騎綱(きづな)」「繋綱(つなぎつな)」の意味。「引綱(ひきつな)」の上略など諸説あり、動物を繋ぎとめる綱という点で共通しています。

元々、絆は犬や馬などの動物を繋ぎとめておく綱のことを言い、平安中期の辞書『和名抄』にも、その意味で使用した例が見られます。

絆は離れないよう繋ぎとめる綱の意味から、家族や友人など人と人を離れ難くしている結びつきを意味するようになりました。

3.気さく(きさく)

気さく

気さく」とは、人柄・気性がさっぱりしていて、気取りがなく親しみやすいさまのことです。

気さくは、形容詞「さくい」の語幹に「気」を添えて形容動詞となった語です。

「さくい」は中世から見られる語で、「淡白だ」「もろい」を意味し、「さくい」のみでも「気さく」を意味しました
1603年の『日葡辞書』には「さくい人」の語が見られ、「敏活でてきぱきした人」とあります。

4.木耳(きくらげ)

木耳

きくらげ」とは、キクラゲ目キクラゲ科のキノコです。枯れ木に群生します。暗褐色。ゼラチン質ですが乾燥すると縮み、軟骨質になります。主に中華料理に用います。

きくらげは、干したクラゲに味が似ていることから、樹木に生えるクラゲの意味で名付けられた。
漢字の「木耳」は漢名からの用字で、「きくらげ」という音の成り立ちとは異なります。
漢名の「木耳(ムーアル)」は、形が人間の耳に似ていることからで、「木の耳(きのみみ)」という別名もあります。

1603年刊『日葡辞書』にも、きくらげの別名として「耳茸(みみたけ)」という名を挙げており、日中とも耳にたとえていることが分かります。

「木耳」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・木耳を とるにもあらず うち眺め(高浜虚子

・電柱に 木耳生えぬ 森の中(下村槐太)

・木耳や 母の遺せし 裁鋏(たちばさみ)(秋元不死男)

5.気の毒(きのどく)

気の毒

気の毒」とは、他人の不幸や苦痛などに同情することです。他人に迷惑をかけて申し訳なく思うこと。

気の毒は、「心の保養になること」「面白いこと」を意味する「気の薬」に対する語です。
本来は「心の毒になること」「気分を害するもの」の意味で、自分の心や気持ちに毒となるものを「気の毒」と言いました。

他人の不幸や苦痛に接した時、自分のことのように思い心苦しくなることから、同情の意味で用いられ、主に相手の気持ちを言うようになりました。

さらに、「気の毒なことをした」というように、迷惑をかけて申し訳なく思うことの意味でも用いられるようになりました。

6.踵(きびす)

踵

きびす」とは、かかとのことで、主に西日本で言います。履物の、かかとにあたる部分。くびす。

上代には「くひびす」「くびひす」と呼ばれ、「くびす」「きひびす」などの形に変化し、中古以降に「きびす」にも変化しました。

その後、「くびす」が基本の形、「きびす」が日常語として使われていましたが、近世以降には、上方で「きびす」が基本的な形となり、西日本の方言となりました。

全国的には「きびすを返す」「きびすを接する」などの慣用句の中で用いられています。

きびすの語源となる「くひびす(くびひす)」の「くひ(くび)」は、くるぶしから先の部分や足をいう「くはびら」の「くは」、「びす(ひす)」は「節(ふし)」など関節を表す語系からといった説が有力とされます。

その他、足首の下や足首の尻といった意味から「首下(くびし)」が転じたとする説や、足首のする場所の意味から「くびす」となり、「きびす」になったとする説もあります。
地方によっては「きびす」が「くるぶし」を指すこともあり、「足首」の「首」が語源とも考えられていますが、「くひ」の音や「ひす(びす)」が考慮されていない点で疑問が残ります。

7.切り札(きりふだ)

切り札

切り札」とは、とっておきの最も有力な人や物・手段のことです。

本来、切り札はトランプ用語で、他の札を全て負かす強い力をもつと決められた札のことです。
そこから、最後に出すためにとってある、最も有力な人・物・手段を言うようになりました。
トランプで言う「切り札」の語源は、最後に出す強い札、つまりゲームのキリとなる札の意味から「限り札(きりふだ)」とする説や、他の札を切り断つ強い札の意味からとする説など諸説ありますが未詳です。

また、英語での「trump(トランプ)」の意味は、日本語の「切り札」にあたり、トランプゲームやトランプカードを指す言葉ではありません。