上の画像のような懐かしい郵便ポストは、今では「かやぶきの里」として有名な京都府美山町などに行かないとお目に掛かれなくなりました。
ところで、郵便ポストに表示されており、「地図記号」にもある郵便マーク「〒」の由来は何でしょうか?
1.郵便マーク「〒」の由来
(1)「丸に一引き」(明治17年6月第15号布達郵便徽章)
明治4年4月20日(1871年6月7日)に日本の郵便事業が始まりましたが、当初は特に定められた徽章はなく、「郵便」の文字だけでした。
明治10年(1877年)頃から、大きな赤丸(いわゆる「日の丸」的な徽章)に太い横線を重ねた赤い「丸に一引き」が郵便マークとして用いられ始めたとされています。
「丸に一引き」は郵便配達員の制帽・制服・郵便旗などに記されており、明治17年(1884年)6月23日太政官布達第15号により、正式に「郵便徽章」と定められました。
その後、明治20年(1887年)に「〒」が逓信省の徽章に定められ、この郵便徽章は自然消滅することになりました。
(2)郵便マーク「〒」
郵便マーク「〒」の由来については諸説あります。
郵政民営化以前、2001年まで郵便を取り扱っていたのは「郵政省」ですが、この郵政省が出来る以前は「逓信省(テイシンショウ)」という省庁が郵便や電信を取り扱っていました。
最も有力なのは、「〒」はこの「逓信省(テイシンショウ)」の頭の「テ」の文字を取って図案化したものという説です。
ちなみに逓信省の「逓信」とは、音信を順次に取次ぎ送り伝えるという意味で、宿駅から宿駅へ荷物を送る「逓信」と「電信」の文字を組み合わせて名付けられたと言われています。
この他に次のような説もあります。
・逓信省のアルファベットの頭文字「T」にする予定だったところ、「T」は国際郵便において「郵便料金不足の印」として万国共通に使用されていたため、「T」は適当ではないということで「〒」に訂正したとする説
・船会社(日本郵船)の「ファンネルマーク」(*)が横二本(下の画像)で、同社の社員から、これは日本を意味するもので、この下に縦棒をつけて「〒」としたとする説
(*)「ファンネルマーク」とは、船舶の煙突(ファンネル)に描かれる海運会社など当該船舶の所有会社を表示するためのマークのこと。 ちなみに「ファンネル(funnel)」とは「煙突」や「漏斗」という意味です。
(3)「郵便マークの日」と誕生のいきさつ
2月8日は「郵便マークの日」となっています。
明治20年(1887年)2月8日、当時の逓信省は「今より (T) 字形を以って本省全般の徽章とす」と告示(明治20年2月8日逓信省告示第11号)しました。
ところが、2月14日に「〒」に変更し、2月19日の官報で「実は「〒」の誤りだった」ということで訂正されてしまいました。
しかし、当初の告示日をもって「郵便マークの日」としました。
2.「郵便マーク」と「郵便記号」
なお、「〒」は「郵便マーク」と呼ばれることが多いですが、日本産業規格(JIS)においては
- 「〒」は「郵便記号」(ゆうびんきごう)
- 「郵便マーク」は「〠」(顔マーク)
を指すそうです。
また、この郵便記号「〒」は日本独自のもので、日本国外では郵便記号として利用することはできません。
3.外国の郵便マークと郵便ポスト
(1)外国の郵便マーク
「ピクトグラム」は、日本が発案した優れた「万国共通絵文字」です。「オリンピック競技種目」や「非常口サイン」「交番」などのピクトグラムが有名ですね。
そのため、郵便マーク「〒」も万国共通だと思っていた方も多いかもしれませんが、そうではありません。
台湾の台北郵政博物館には、世界各国の郵便マーク(エンブレム)が展示(下の画像)されています。
ホルンのマークが多いですが、鷲のマークや白十字もあります。
(2)外国の郵便ポスト
たとえば、アメリカの郵便ポスト(下の画像)は赤色ではなく青色で、日本人ならゴミ箱と見間違いそうですね。
ドイツの郵便ポストは黄色でホルンのマークがあります。
デンマークの郵便ポストは赤色ですが、やはりホルンのマークがあります。
ハンガリーの郵便ポストも赤色で、やはりホルンのマークがあります。
昔、ヨーロッパでは郵便馬車が郵便物を届けており、「郵便物が届いたことを住人に知らせるために、ホルンを吹いた」ことにちなみ、郵便ポストにはホルンの絵が描かれるようになりました。
フランスの郵便ポストは黄色ですが、マークは「青い鳥」で1960年に以前のロゴに代わって新しくデザインされました。
最近新しいデザインになったカナダの郵便ポストは、赤にポスタルコードという数字とアルファベットをあしらったオシャレなデザインです。
郵便番号がランダムに記載されているこのデザインは、世界のポストファンの間ではとても人気で、世界で今一番カッコいい、お洒落なポストとしてとても高評価です。
余談ですが、日本ではかつて黒色のポストが使用されていました。しかし夜になった時、黒だと、暗くてよく見えなかったことや、郵便箱と書かれていたために、便所だと勘違いする人がいたとの理由で、イギリスの郵便ポスト(下の画像)の色である赤に変更したところ、うってかわって評判がよくなり、現在おなじみの赤色となったということです。