徒然草242段は人間の三大欲求(名誉欲・性欲・食欲)への執着の戒め

フォローする



兼好法師

1.徒然草242段「とこしなへに違順に使はるる事は」

(1)原文

とこしなへに違順ゐじゆんに使はるゝ事は、ひとへに苦楽くらくのためなり。楽と言ふは、好み愛する事なり。これを求むること、止む時なし。楽欲げうよくする所、一つには名なり。名に二種あり。行跡かうせきと才芸とのほまれなり。二つには色欲しきよく、三つにはあぢはひなり。よろづの願ひ、この三つには如かず。これ、顛倒てんだうさうより起りて、若干そこばくわづらひあり。求めざらんににはかじ。

なお「違順(いじゅん)」とは、逆境と順境のことです。「楽欲(ぎょうよく)」とは、願い欲(ほっ)することです。

(2)現代語訳

人がいつまでも逆境と順境に翻弄されるのは、ひとえに苦しいことから逃れて楽をしたいからである。楽とは何かを求め執着することだ。執着への欲求はきりがない。その欲求は第一に名誉である。名誉には二種類ある。一つは社会的名誉で、もう一つは学問や芸術の誉れである。二つ目は性欲で、三つ目に食欲がある。他にも欲求はあるが、この三つに比べればたかが知れている。こうした欲求は自然の摂理と逆さまで、多くは大失態を招く。欲求など追求しないに限る。

2.徒然草242段の教訓

(1)人間の三大欲求に執着することの愚かしさ

「食欲・性欲・睡眠欲」を三大欲求と言うこともありますが、兼好法師は「名誉欲・食欲(美食)・性欲」の三つの欲求を挙げています。

名誉欲については38段でも「名利に使はれて、静かなる暇なく、一生を苦しむるこそ、愚かなれ」と述べており、性欲についても8段で「世の人の心惑はす事、色欲には如かず」と述べています。

食欲については122段で「食は、人の天なり。よく味はひを調(ととの)へ知れる人、大きなる徳とすべし」と述べています。ただしこれは「人間にとって食は命のもとだから、料理の才能は大きな徳であると」という意味であって、美食の戒めとは矛盾していません。

(2)これらの欲求は際限ない執着を生むだけ

兼好法師は、これらの欲求は際限ない執着を生むだけなので、「欲求など追求しない方が良い」と述べています。

英語のことわざ「Ask, and it will be given to you.(求めよ、さらば与えられん)」(「新約聖書 マタイ伝」の第七章にある一節が由来)や、リンカーン大統領の名言「Where there’s a will, there’s a way.(意志ある所に道は開ける)」は「努力を継続することの大切さ」を説いたアグレッシブ(積極的)な教訓です。

リンカーンの名言は、「人間というのは、人生に明確な目標を打ち立てた時、半分以上目標を達成したことになる」「度重なる失敗にも挫けずに努力を継続すれば目標は必ず達成できる」という力強い教訓です。

一方、兼好法師は、人間の三大欲求について、「際限のない執着を生むので、ほどほどにしないと身を誤る元になる」と戒めているのです。



シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする