日本語の語源には面白いものがたくさんあります。
前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。
以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。
1.手薬煉を引く/手ぐすねを引く(てぐすねをひく)
「手ぐすねを引く」とは、十分に準備して待ち構えることです。
手ぐすねを引くの「くすね(薬煉)」とは、松脂(まつやに)を油で煮て練り混ぜたもので、弓の弦などを強くするために塗られる粘着剤です。
この薬煉を手に塗ることを「手ぐすね」と言います。
合戦の前、十分な態勢で待ち構えるために、薬煉を手に取り弓の弦に塗ることから、十分に準備して機会を待つことを「手ぐすね引いて待つ」と言うようになりました。
2.捏ち上げ/でっち上げ(でっちあげ)
最近、放送法の解釈をめぐって高市早苗元総務大臣の「文書は捏造だ。捏造でないなら責任を取って議員もやめる」という発言が国会で話題になりましたね。また冤罪事件として再審決定された「袴田事件」では、捜査当局による「証拠のでっち上げ」の可能性が裁判所によって指摘されました。
「でっち上げ」とは、事実でないことを本当らしく作り上げることです。捏造すること。でっちあげること。
でっち上げは、捏造の「捏」が語源とされます。
「捏」は、呉音で「ねつ」、漢音で「でつ」といいます。
その「捏(でつ)」が動詞化されて「捏ち上げる(でっちあげる)」となり、名詞で「でっち上げ」になりました。
「でっち」という音から「丁稚」と関連付け、もっともらしい話がいくつか作られていますが、「丁稚」と「でっち上げ」に関連性はありません。
3.出任せ/出まかせ(でまかせ)
「でまかせ」とは、いい加減な事を言うことです。
でまかせは、口から出るに任せることです。
すらすらと口から言葉が出るのは、感情がこもっていなかったり、いい加減な話をしているときが多いため、「出るに任せる」と言うようになり「出任せ」となりました。
4.刑事/デカ(でか)
「デカ」とは、刑事のことをいう俗語です。
デカは、明治時代に生まれた言葉で、もとは犯罪者仲間の隠語でした。
当時、制服を着ず和服を着ていた刑事巡査のことを「角袖巡査(かくそでじゅんさ)」や「角袖(かくそで)」と呼んでいました。
「角袖」とは四角い形をした袖のことで、和服の袖が四角いことから和服を意味します。
この「角袖」を逆さまにし、初めと終わりだけ取ったのが、「デカ」です。
一説には、「かくそで」から「くそでか」になり、「糞(クソ)」には名詞の上に付いて相手をののしる意味があるため、「糞デカ」の用法に変わり、「デカ」が一つの名詞になったとする説もあります。
5.ティッシュ
「ティッシュ」とは、ティッシュペーパーの略です。ティシューとも。鼻をかんだり、液体をふき取るなど、各種用途に使われる薄用紙(うすようし)。
ティッシュ(tissue)は、帯や布などの織物を意味するフランス語「tissu」に由来します。
「tissu」は、ラテン語で「織る」を意味する動詞「texere」の過去分詞にあたります。
英語で「織物」を意味する「textile(テキスタイル)」も、この「texere」に由来します 。
かつて日本では「鼻紙」や「ちり紙」と呼ばれていましたが、次第に「ティッシュ」の語が使われるようになりました。
「ティッシュ」が一般的になった後も、しばらくは箱などに入っていないものを「ちり紙」と呼んでいましたが、、バラになっているもの自体が少なくなったことから、現在ではほぼ「ティッシュ」の呼称で統一されています。
6.てっちり
「てっちり」とは、ふぐのちり鍋のことです。ふぐちり。
てっちりは、「鉄のちり鍋」が略され、「鉄」を促音化した言葉です。
鉄は「ふぐ」のことで、てっちりは「鉄のように硬いちり鍋」という意味ではありません。
ふぐには猛毒があり、「当たると死ぬ」という意味から「鉄砲」と呼ばれます。
その「鉄砲」の略称が「鉄」なので、「鉄のちり鍋」です。さらに、変化して「てっちり」となったのです。
同様に、ふぐの刺身は「てっさ」といいます。
7.てっさ
「てっさ」とは、ふぐの刺身のことです。ふぐ刺し。
てっさは、「鉄の刺身」から「しみ」を略し、「鉄」を促音化した言葉です。
鉄は「ふぐ」のことで、てっさは「鉄のように硬い刺身」という意味ではありません。
ふぐには猛毒があり、「当たると死ぬ」という意味から「鉄砲」と呼ばれます。
その「鉄砲」の略称が「鉄」なので、「鉄の刺身」。さらに変化して、「てっさ」となったのです。
同様に、ふぐのちり鍋は「てっちり」といいます。
8.デマ
「デマ」とは、根拠のない、いい加減な噂話のことです。特に、政治的な効果を狙い、事実無根の情報を意図的に流すなどして、人々を扇動(せんどう)し、相手に不利な状況をつくる場合に多く使われます。
デマは、「扇動」「扇動政治」を意味するドイツ語「デマゴギー(Demagogie)」を略した言葉で、「出任せ(でまかせ)」の略ではありません。
日本では昭和初期頃から、「デマ」の語が使われるようになりました。
余談ですが、「デマ」とよく似た「プロパガンダ」については、「嘘も百回つけば真実になるというプロパガンダの恐ろしさ」「ナチスの宣伝相でプロパガンダの天才と呼ばれたゲッベルスはどんな人物だったのか?」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。
9.出鱈目(でたらめ)
「でたらめ」とは、思いつくままにいい加減なことを言ったりしたりすることです。いい加減なこと。また、そのさま。
でたらめは、江戸時代末期頃より使われている言葉です。
漢字の「出鱈目」は当て字なので、でたらめの語源と魚のタラとは関係がありません。
語源は未詳ですが、「目」はサイコロの目をのことで、賭博の隠語に由来する説があります。
「サイコロを振って出た目のままにする」の意味から、行き当りばったりなことを「でたらめ」と言い、いい加減な言動も意味するようになったというものです。