故人を悼む四字熟語には次のようなものがあります。
1.哀哀父母(あいあいふぼ)
子を生み育てて苦労を重ねてくれた父母。苦労を重ねて死んだ父母の死と、その恩に報いることができなかったことを悲しみ嘆き、親を慕う情を表した語。
「哀哀」は悲しむさま。「哀哀たる父母」とも読みます。
2.哀毀骨立(あいきこつりつ)
悲しみのあまりやせ細り、骨ばかりになること。父母の死などで非常に悲しむことの形容。
「哀毀」は悲しみのあまりからだをこわす、また、やせ細る意。「骨立」はやせて骨ばかりになる意。骨だけでからだを支えるほど肉が落ちて、骨と皮ばかりになる意
3.銜哀致誠(がんあいちせい)
悲しみと誠意を持って死者を弔うこと。
哀悼の気持ちを持って、真心を捧げるという意味から。
「哀を銜み誠を致す」とも読みます。
4.鶏骨支床(けいこつししょう)
喪に服して、痩せ衰える様子。「鶏骨」は痩せ衰え、鶏の骨のように見えるということ。
痩せ衰えて、寝台に支えるだけで精一杯という意味から。
「鶏骨、床を支う」とも読みます。
5.広宵大暮(こうしょうたいぼ)
死んだ人の悲しみを嘆く言葉。
「広宵」はどこまでも広がる夜。「大暮」はいつまでも続く夜。
夜がどこまでも広がり、いつまでも夜が明けないということから。
「広霄大暮」とも書きます。
6.鼓琴之悲(こきんのかなしみ)
親友の死に対する悲しみのこと。「鼓琴」は琴を奏でること。
中国の晋の時代の顧栄が死んだ時に、親友の張翰が葬儀に参列し、顧栄が愛用していた琴を泣きながら弾いて、故人を偲んだという故事から。
7.死児之齢(しじのよわい)
どうにもならないことを今さら悔やむこと。
「死児の齢を数う」の略で、亡くなった子が今生きていれば何歳だと数えて悲しむという意味。
8.人琴之嘆(じんきんのたん)
人が死んだことを激しく悲しむ様子。「琴」は中国の弦楽器で、琴柱のない琴。
中国の晋の王徽之と王献之の兄弟は、どちらも琴の名人だったが、王献之が若くして亡くなり、王献之の琴を王徽之が弾いてもうまくいかず、琴を投げつけ、嘆き悲しんだという故事から。
9.西河之痛(せいかのいたみ/せいかのつう)
自身の子供が死んで、ひどく悲しむことのたとえ。
中国の春秋時代、孔子の弟子の子夏は、西河で教えを説いている時に自身の子供が死んだことを聞き、悲しみのあまり失明してしまったという故事から。
10.斗酒隻鶏(としゅせきけい)
一斗の酒と一羽の鶏。転じて、亡き友人を哀悼し述懐すること。
「斗酒」は一斗の酒。「隻」は鳥を数える単位。昔、一斗の酒と一羽の鶏は死者を祭るのに用いたもので、もと、魏ぎの曹操そうそうが友人の橋玄きょうげんの墓を祭ったときに作った文にこの語を用いたことから。
11.伯牙絶弦(はくがぜつげん)
非常に深い関係の親友を失った悲しみ。「伯牙」は中国の春秋時代の人の名前。
琴の名手である伯牙は、自分の一番の理解者であり、親友だった鐘子期が亡くなり、自分の琴を理解してくれる人はもういないといい、琴の弦を切って、二度と弾くことはなかったという故事から。
「伯牙絶絃」とも書きます。
12.風樹之歎(ふうじゅのたん)
父母が亡くなり孝行しようとしてもできない嘆きのこと。「風樹」は風に揺れる木のこと。
風で揺れている木は、木自身が制止したいと思っても風が止まなければ制止できず、思い通りにいかないということから。
「風樹之嘆」とも書きます。
現代の日本は超高齢化社会になりましたので、この「風樹之歎」という言葉が通用しないケースも多くなっているようです。
13.幽明異境(ゆうめいいきょう)
死に別れること。現世とあの世と、住む場所が違ってしまったという意。
弔辞などで使われることば。「幽」は、あの世・冥土めいどのこと。「明」は、現世のこと。「異境」は、住むところが異なること。「幽明境を異(こと)にす」と読み下します。
14.蓼莪之詩(りくがのし)
親孝行な子どもが、領主から課せられた労働で家を離れたために、親孝行できなかったことを両親の死後に悲しんでうたった詩のこと。または、両親が死んで、親孝行できない悲しみのこと。
「蓼莪」は『詩経』の篇名。