習近平の「一帯一路構想」は、サラ金のような「債務の罠」を使った「帝国主義」

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一帯一路構想

中国の習近平主席が提唱している「一帯一路構想」という広域経済圏構想がありますが、一体どのような内容なのでしょうか?

今回は、「一帯一路構想(いったいいちろこうそう)」の中国の目的やメリット、「債務の罠(わな)」をはじめとする問題点やデメリット、日本の対応について考えてみたいと思います。

1.「一帯一路構想」とは

「一帯一路構想」とは、中国の国家主席・習近平氏が2013年より提唱し、現在も推進している、アジア〜ヨーロッパ〜アフリカ大陸にまたがる巨大経済圏構想のことです。中国政府は、2021年6月時点で、一帯一路における共同建設において、すでに140ヵ国、32の国際組織と計206件の協力文書を調印しているとしています。

2013年に習近平が提唱し、2014年11月に北京で開催された「APEC(アジア太平洋経済協力会議)」の首脳会議の席上で、各国に対し積極的なPRがおこなわれました。

「一帯一路」の構想は、アジアとヨーロッパの間をつなぐ巨大な物流ルートを構築し、貿易や資本の往来を促進しようとするものです。中国はこれを「21世紀のシルクロード」と呼び、世界各地でインフラの開発や関連諸国との提携を進めようとしています。

主なルートは2つ。陸路中国西部~中央アジア~ヨーロッパを結ぶシルクロード経済ベルト(一帯)」と、海路中国沿岸部~東南アジア~インド~中東~アフリカ~ヨーロッパを結ぶ21世紀海上シルクロード(一路)」です。

ほかにも中国は、北極海を通る氷上シルクロード」と、高速鉄道でアメリカとつなぐ太平洋海上シルクロードの構築も目指しています

これだけ巨大な経済圏を構築する試みは前例がありません。中国は建国100周年となる2049年に「一帯一路」を完成させることを目標に掲げています。

2.「一帯一路」の中国の目的とメリット

経済成長の結果、中国はアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国に躍進しました。「一帯一路」を実現することで、自国主導の経済圏をつくり、世界経済のけん引役として国際的地位を高めることを目指していると考えられています。

その一環として、2015年に中国主導で発足した国際開発金融機関「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」は「一帯一路」に協力する国に融資をおこなっています。これは中央アジアやアフリカなどの発展途上国の利害とも一致していて、2020年現在100の国と地域が加盟しました。このような資本提携を通じ、中国は影響力の拡大に成功しています。

また「一帯一路」で巨大な物流ルートを構築することは、中国にとってもさまざまな経済・安全保障上のメリットがあると考えられます。

2008年に「リーマンショック」が起こった際、中国は景気回復のために国内で大々的なインフラ開発を推進しました。ところがその後、開発は一段落。そんな中で提唱された「一帯一路」には、過剰になった資本の投資先をつくり出す意図も込められていす。

また中国は、物流ルートと並行して、原油や天然ガスのパイプラインも建設。代表的なのはミャンマーと中国を結ぶもので、これがあれば仮にマラッカ海峡の航路が封鎖されたとしても、ミャンマーを経由して資源を得ることができます。複数のルートをもつことは有事の際のリスクを低下させ、また中国が海外へ資源を展開する時にも役立ちます

3.「一帯一路」の問題点やデメリット。「債務の罠」とは

中国の影響力が拡大することを問題視する声もあります。

先述したとおり、中国はインフラ整備のため各国に融資をしています。しかし中国に対する借金が膨らみ、返済できなくなってしまう事例があるのです。

たとえばスリランカは、中国から融資を受けて「ハンバントタ港」を建設しました。当初は港を使う船から使用料をとり借金を返す予定でしたが、利用数が伸びずに資金回収ができなかったのです。結局、スリランカは、借金を返済する代わりに、ハンバントタ港の港湾運営権を中国企業に99年間引き渡すことになりました

かつて「帝国主義」による植民地支配を行ってきた欧米列強の「租借」イギリスが中国の香港を99年間租借、フランスが中国の広州湾を99年間租借、ドイツが中国の膠州湾を99年間租借など)とそっくりですね。

なお、99年間の「99」という数字は、中国語の久久(=永久)と同音であることから、「ハンバントタ港の港湾運営権の99年間譲渡」は「事実上の永久譲渡」になる可能性もあります。

「赤色帝国主義」「100年遅れの帝国主義」と言われても仕方がありません。

インドなどの警戒もあり、ハンバントタ港の軍事利用は認められていませんが、中国は最初から経済支援ではなく、安全保障上の権益のために融資をしたと考えられています。

このように、過剰な融資をして、返済できなくなった国で中国が勢力を伸ばすことを、アメリカなどは「債務の罠」(「債務トラップ」)と呼んで批判しています。まるで「サラ金」ですね。

この表現は、インドの地政学者ブラフマ・チェラニー(Brahma Chellaney)によって中国の一帯一路構想と関連づけて用いられたのが最初で、「借金漬け外交」(国際援助などの債務により債務国、国際機関の政策や外交等が債権国側から有形無形の拘束を受ける状態)とも呼ばれます。

ほかにも、「一帯一路」を構築するために大量の資本が投下されたことで、各地で乱開発や汚職がもたらされているという問題点もあります。

中国はこのような批判の高まりに対し、「一帯一路」は排他的な枠組みではないと強調。国際ルールにもとづき構想を進め、各国の法律を尊重していくと述べています。

3.「一帯一路」への日本の対応

2015年に「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」が発足した際、日本はアメリカとともに加盟を見送りました。それは、先述した「債務の罠」にみられるように、AIIBが中国の勢力拡大に利用されることを警戒したからです。

また日本は2016年に、「一帯一路」に対抗するように、「自由で開かれたインド太平洋」という外交政策を提唱しています。

ただ2017年には安倍首相が、AIIBについて「公正なガバナンスが確立できるのかなどの疑問点が解消されれば前向きに考える」と述べ、2018年にもアジアでのインフラ整備を中国と協力すると表明しました。中国もこれを歓迎するコメントを発表しました。

日本が態度を軟化しつつある要因として、中国と協調することで発展途上国支援のノウハウを得られること、中国とさまざまなプロジェクトを共催することで日本企業の活躍の場を拡大できることなど、メリットがあることが挙げられます。

日本は「一帯一路」に参加してはいないものの、「一定の範囲で協力する態度」をとっている状態です。

しかし、このような日本の脇の甘い対応は、「中国の思う壺にはまる」リスクがあると私は思います。中国の「覇権主義」「チベットウイグルなどの少数民族弾圧」「香港の民主化運動の弾圧」「戦狼外交」「台湾への軍事的圧力」のほか、「尖閣諸島周辺の領海侵犯」など、日本の立場と相容れない目に余る無法な行動をなし崩し的に容認する結果につながります。

前に「天安門事件での制裁解除の轍を踏むな。中国の侵略的な覇権主義は阻止すべき!」という記事も書いていますので、ぜひご覧ください。

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