古代インド思想の「五大」とは?

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五大

太古の昔から人々は「生命の起源」について考えていました。「万物の根源」を考え抜いた古代ギリシャの哲学者たちもいました。

古代中国にも「陰陽五行説」という思想がありましたが、古代インドにも「五大」というよく似た思想がありました。

1.「五大」とは

「五大(ごだい)」(サンスクリット語:panca-dhatavah、英語: five elements)とは、宇宙(あらゆる世界)を構成しているとする(ち)・(すい)・(か)・(ふう)・(くう)の五つの要素のことです。

つまり古代インドの思想家・哲学者たちは、これら5つを「宇宙を構成する主要な要素」「万物を作り出す元素」と考えたわけです。

2.五つの要素

(1)地 – 大地・地球を意味し、固い物、動きや変化に対して抵抗する性質。

(2)水 – 流体、無定形の物、流動的な性質、変化に対して適応する性質。

(3)火 – 力強さ、情熱、何かをするための動機づけ、欲求などを表します。

(4)風 – 成長、拡大、自由を表します。

(5)空 – サンスクリット語: आकाशĀkāśa(アーカーシャ)の訳。「虚空」とも訳されます。仏教の思想のサンスクリット語: शून्यśūnya(シューニャ 訳語は空)とは異なります。

3.「五大」の成立の経緯

中国の五行思想(木・火・土・金・水)と数が同じで、一部共通する物もあることから混同されやすいですが、両者は全く別個に成立したものです。

この思想は、古くからインド哲学(六師外道・六派哲学の思想など)にあり、古代インド思想では、火・水・地を「三大」、または地・水・火・風を「四大」としています。

これらに「虚空(アーカーシャ)」を加えて「五大」とする思想が現れました。さらに後には第六の要素として「識」(意識)を加えて「六大」とする思想、近年の神秘学では、アストラル、エーテル、あるいはこれらを超越しているとする第七の要素を加えて語られることもあります(チャクラなど)。

しかし、「五大」までにおいては、インド思想家と仏教徒との教学論議を経るうち、これらの思想がその時々に応じて仏教の思想体系中に取り込まれていったものです。

やがて原始仏教や部派仏教に取り入れられたのを契機に、主に大乗仏教思想として東アジア一帯に広まりました。仏教の一派である密教では五大を五輪(ごりん)と呼び、この思想に基づく塔婆として「五輪塔」を造立します。

4.アサギマダラ研究の第一人者栗田昌裕氏の解釈

『謎の蝶 アサギマダラはなぜ海を渡るのか』という本の著者で、アサギマダラ研究の第一人者である栗田昌裕氏は、「五大」について次のような解釈を述べています。

地とは自然界の物質を表し、物理的に言えば、固体のことです。その代表が大地です。

水とは物理的には液体を表し、その代表がH2Oという流動的な水です。

火とは物理的にはエネルギーのことです。その代表は熱エネルギーであり、地球上ではその大半は太陽から放射される電磁波に由来します。

風とは物理的には気体を表し、その代表が大気・空気です。

空とは何でしょうか。私はそれを時間空間物質を司る「数理の世界」であると考えます。物理学者の実験による努力と優れた洞察力により、自然界は数式によって、見事に表現されることが分かりつつあります。数理という言葉がピンと来ない人は法則という用語なら分かるでしょうか。自然界は数理という法則に従っているのです。

固体(地)と液体(水)と気体(風)は物質的な世界です。エネルギー(火)はその物質を動かす力です。それは数理の法則(空)に従うのです。

このように考えると、ものごとが単純かつ明快に整理されていると感じないでしょうか。そこに古代の人達の叡智を見ることができます。ただし、私の説明は文献で学んだものではありません。私の直観から自然に導かれたものです。

その上で、栗田氏は現代に即して「人」「物」「命」を加えた「八大要素」(地水火風空人物命)を提唱しています。

人間を「人」、その作り出した物質と施設を総称して「物」、他の生命体とそのなすシステム全体(すなわち生態系)を総称して「命」と呼んでいます。

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