古来日本人は、中国から「漢語」を輸入して日本語化したのをはじめ、室町時代から江戸時代にかけてはポルトガル語やオランダ語由来の「外来語」がたくさん出来ました。
幕末から明治維新にかけては、鉄道用語はイギリス英語、医学用語はドイツ語、芸術・料理・服飾用語はフランス語由来の「外来語」がたくさん使われるようになりました。
日本語に翻訳した「和製漢語」も多く作られましたが、そのまま日本語として定着した言葉もあります。たとえば「科学」「郵便」「自由」「観念」「福祉」「革命」「意識」「右翼」「運動」「階級」「共産主義」「共和」「左翼」「失恋」「進化」「接吻」「唯物論」「人民」などです。
フランス語由来の外来語(フランス語から日本語への借用語)は、日本が幕末に開国して以来、欧米列強の学問や技術を取り入れる過程で日本語になりました。日本語になった外来語には、学術的な用語から料理・美術・ファッションなどの日常的な単語まで多岐にわたります。
そこで今回は、日本語として定着した(日本語になった)フランス語由来の「外来語」(その3:サ行)をご紹介します。
1.シャンソン(chanson)
「シャンソン」は、フランス語で「歌謡」「小歌」の意味ですが、一般にはフランスのポピュラー・ソング、とくにパリを中心にした流行歌を指す言葉です。
マス・メディアの発達とともに、アメリカをはじめ世界各国のヒット曲がフランスに入り、同国の歌手によっても歌われていますので、広義には全てを含めてシャンソンとよんでも差し支えありませんが、伝統的なシャンソンには、他の国々の歌とは異なった特徴が認められます。
2.サボタージュ(sabotage)
労働者の争議手段の一つです。通常、「怠業」の意味で理解されていますが、語源については諸説あります。
代表的な説は、フランス語で木靴(きぐつ)のことをサボsabotといい、争議のとき木靴を機械に投入して生産を停止したり、木靴を履き、カタカタさせて能率を低下させたところから、労働者が行う怠業的行為にこの名が付いたとするものです。
3.サロン(salon)
「サロン」とは、もともと応接室などの部屋を意味する言葉ですが、フランスの宮廷や貴族の邸宅を舞台にした社交界をサロンと呼びました。
この「サロン」は、主人(女主人である場合も多い)が、文化人、学者、作家らを招いて、知的な会話を楽しむ場でした。
4.サンディカリスム(Syndicalisme)
「サンディカリスム」は、労働組合主義、組合主義、労働組合至上主義とも訳され、資本家や国家主導の経済運営ではなく、集産主義的な労働組合の連合により経済を運営するというものです。資本主義あるいは社会主義に代わるものとして提案された経済体制の一種またはその思想です。なおサンディカリスムを奉じる者(労働組合主義者)を「サンディカリスト」と呼びます。
特に急進主義的なサンディカリスムは革命的サンディカリスムとも呼ばれます。
また、革命後に国家を廃止または縮小して労働組合やその連合体が政治や経済を行うという、アナキズムと結合した「アナルコサンディカリスム」は、スペインなどで有力となりました。
5.シニフィアン(signifiant)・シニフィエ(signifié)
シニフィアンとシニフィエは、フェルディナン・ド・ソシュールによってはじめて定義された言語学の用語です。また、それらの対のことを、シーニュ(signe)と呼びます。
シニフィアンは、フランス語で動詞 signifierの現在分詞形で、「意味しているもの」「表しているもの」という意味を持ちます。それに対して、シニフィエは、同じ動詞の過去分詞形で、「意味されているもの」「表されているもの」という意味を持ちます。
日本語では、シニフィアンを「記号表現」「能記」(「能」は「能動」の意味)、シニフィエを「記号内容」「所記」などと訳すこともあります(「所」は「所与」「所要」などの場合と同じく受身を表わす。つまり「所記」は「しるされるもの」の意味)。
6.シャーシ(châssis)
「シャーシ」とは、枠組み(フレームワーク)のことで、この枠組みは動かない物体を支えるものです。動物の骨格にたとえられます。例としては、モーター・ビークルや銃などで使用されています。
自動車、戦車などの車両用途では「車台」という訳語も当てはめられています。
7.シャトー(château)
「シャトー 」とは、主としてフランス語圏で使われる言葉で次のような意味があります。
- 王族や貴族の住居
- 田舎にある、大きくて美しい館
- かつての諸侯の居所で、堀や壁や塔によって要塞化され、護られているもの
- 「château …」と大文字で始まる語を後ろに添えて、ボルドー(ワイン)の(格付けされた)ワイン農園(の名前)
8.サロペット(salopette)
「サロペット」は、胸当て付きのズボンのことです。本来は作業着で、胸当ては服を汚さないためのものです。
9.ジャンル(genre)
芸術作品の形式,内容に応じる分類をいい、美術の場合、建築・絵画・彫刻はそれぞれが一つのジャンルであり、また絵画では人物画・風景画・静物画・風俗画・歴史画などがそれぞれ一つのジャンルをなしています。
欧米ではジャンルという言葉は、特に風俗画( genre painting)を指す場合に用いられます。
10.シュークリーム(chou cream)
「シュークリーム」は、フランス語のシュ(chou [ʃu]、複数形はchouxで発音は同じ)と、英語のクリーム(cream)からなる和製外来語です。
「シュークリーム」は、中が空洞になるように焼いた生地にカスタードクリームなどを詰めた洋菓子の一種。フランス語では「chou à la crème」(シュー・ア・ラ・クレーム)と呼ばれる菓子です。
11.シュール(sur)・シュールレアリスム(surréalisme)
12.シュミーズ(chemise)
「シュミーズ」は、西洋で中世以降使われてきた肌着です。時代と性別により様々な形式が見られますが、現代の女性用は肩から紐で垂らした筒型が胴部をゆるやかに覆うスタイルであり、スリップと混同されるがちです。日本ではしばしば「シミーズ」とも表記・発音されました。
日本ではもっぱら女性用を指しますが、フランスでは男性用の場合、シャツを指す言葉です。
13.シルエット(silhouette)
「シルエット」は、輪郭の中が塗りつぶされた単色の画像のことで、影絵と同義に見なされる場合もあります。
「シルエット」という言葉は、フランス王ルイ15世の治世下で財務大臣を務めたエティエンヌ・ド・シルエットの名前に由来する「エポニム」です。
元々は18世紀ヨーロッパに起った、黒い紙を切り取って人物の横顔を表現した切絵に対して用いられた言葉で、そこから明るい背景に対して事物が黒く塗りつぶされて見えるような光景や、物の形そのものを言い表す語として用いられるようになりました。服飾では、着装時の服の輪郭や、服そのもののデザインを言い表す語として使われています。
表現技術としてのシルエットは様々な芸術分野で使用されており、黒い切絵による伝統的なポートレイトもまた21世紀となった現在も作られ続けています。
14.スフレ(soufflé)
「スフレ」は、メレンゲに様々な材料を混ぜオーブンで焼いて作る、軽くふわふわとした料理です。 主菜またはデザートとされます。
Soufflé はフランス語で「吹く」を意味する動詞 souffler の過去分詞形です。
17世紀のフランスで菓子職人が卵白と砂糖を混ぜて焼き、パンのように膨らませる技法を発見しました。やがてそれが卵黄と泡立てた卵白を混ぜて焼くオムレット・スフレに発展していきました。今日のスフレの最も古い記録は、18世紀半ばにヴァンサン・ラ・シャペルが残したレシピです。
15.ソムリエ(sommelier)・ソムリエール(sommelière)
「ソムリエ」(女性単数形は「ソムリエール」)は、レストランで客の要望に応えてワインを選ぶ手助けをする、ワイン専門の給仕人です。
ソムリエの定義は、アルコール飲料を提供する飲食サービス業従事者(飲食サービス、ワイン・酒類・飲料仕入れ、管理、輸出入、流通、販売、教育機関、酒類製造も含む)です。