私たちの生活で日々目にする雲は、通常は白色ですが雨雲は灰色や黒色に見えます。なぜ雨雲は黒く見えるのでしょうか?
雲自体は白色や黒色の物体でできているわけではありません。
白色の雲については「雲の色はなぜ白色なのか? 雲の色の不思議(その1)」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。
また空の色に関しては、前に「空はなぜ青色なのか? 空の色の不思議(その1)」「日の出や日没の空はなぜ赤色に見えるのか?空の色の不思議(その2)」「薄明の焼け空・ブルーモーメント・ビーナスベルトとは? 空の色の不思議(その3)」という記事を書きましたが、原理的には空の色と同じ「光の乱反射」です。
そこで今回は、雨雲の色が灰色や黒色に見える理由をわかりやすくご紹介したいと思います。
1.雨雲の色が灰色や黒色に見える理由
空には、雲がさまざまに形を変えながら浮かんでいます。変化していくのは、形だけでなく色も同じです。快晴の空のまっ白な雲が増えてきて灰色に変わり、まっ黒になると「今にも雨がふりだしそう」と心配になりますね。
雲は「雲粒(うんりゅう、くもつぶ)」と呼ばれる小さな水滴や氷の粒でできています。
もとは水や氷なので本来は無職透明なはずです。それが白く見えるのは、水滴や氷の粒の表面で光が乱反射する(さまざまな方向にはね返る)ためです。氷でできている雪が白く見えるのと同じ仕組みです。
太陽からやって来る光が雲の中でどのくらい散乱して、どのくらい中を通りぬける(透過する)ことができるかで、雲の色が決まります。
光が乱反射すると、通り抜ける光はその分だけ少なくなります。普通の雲でも、光が当たっている上の部分(太陽のある側)は白いですが、雲の下(底)の方は黒いのです。同じ雲でも光が当たっていない部分は黒っぽく見えるのです(図1)。
空に浮かんでいる雲にはさまざまな種類があり、濃さがかなり違います。水滴や氷の粒がびっしりと集まった濃い雲では、光はほとんど通り抜けないので、より暗く見えます(図2)。
雨雲は、雨を降らせるぐらいなので水滴や氷の粒がとても濃く、通り抜ける光の量が少ないので黒く見えるというわけです。
なお、これは我々が雲の下から見上げているからで、飛行機などで雲の上から観察すると、雨雲は光のほとんどを乱反射させるので、黒ではなく真っ白に見えます。
2.雨を降らせる雲は「乱層雲」と「積乱雲」
<乱層雲>
<積乱雲>
上に述べたように、我々の目まで届く光の量が多ければ雲は白っぽく、少なければ黒っぽく見えます。
「巻層雲」(うす雲)などベールのような雲は、光を通しやすいため白く見えます。その一方で、「積雲」(わた雲)のように分厚く発達した雲は、光が雲の中を通る間に散乱して弱まるため、黒く見えます。
加えて、「乱層雲」と「積乱雲」のように雨を降らせる雲は「雲粒」が大きいので、よりいっそう黒ずんで見えます。
同じ雲でも、どこから見るかによって色が変わることもあります。たとえば、遠くにある「積乱雲」を横から見ると、太陽の光をたくさん受けた雲は輝くような白色に見えます。
けれども、この時「積乱雲」の下にいる人には、雲はまっ黒に見えています。厚い雲が太陽の光をさえぎり、陰になった雲は黒色に見えるというわけです。
なお「雲」の種類については「雲は最も日常的で身近な自然だが、眺めていると太古の昔に立ち返る気分になる」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。