「虹」はなぜできるのか?またなぜ「七色」の「アーチ状」に見えるのか?

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虹

虹

雨上がりの夕方に日が射し込むと、時折美しい虹が見えることがあります。

しかし、太陽を背にしてホースで水を撒いた時や「プリズム」、水しぶきをあげる滝(下の写真)で見える虹と違って、大空に架かる大きな自然の虹は滅多に見られませんので、虹が出ているのを見ると何だか良いことがありそうな予感がして嬉しくなります。

水撒きの虹

プリズム

滝の虹

2019年10月22日に今上天皇の「天皇即位礼正殿の儀」が行われた時は、台風の影響による雨が心配されていましたが、儀式が始まると雨が上がり、おまけに皇居の真上に虹まで出ました。

奇跡の虹

それで「奇跡の虹」とか「エンペラーウェザー」などと呼ばれ、また「ファンタジーすぎる」などと言われて話題になりましたね。

そこで今回は、虹ができる仕組みや虹にまつわる面白い話をご紹介したいと思います。

1.「虹」はなぜできるのか?

虹

(1)「虹」とは

(にじ)」( rainbow)とは、大気中に浮遊する水滴の中を光が通過する際に、分散することで特徴的な模様が見られる大気光学現象です。

虹は、赤から紫までの光のスペクトルが並んだ円弧状の光です。

(2)「虹」ができる理由

雨の後にできる虹は、大気中に浮かぶ水滴と太陽光によって起こります。

プリズムを通した太陽光が、七色に分かれるのと同じ現象です。

つまり、大気中の水滴がプリズムの役目をしているのですが、その光の動きは複雑です。

(3)「虹」の大きさ

虹のできる大きさですが、すべて同じ大きさということはありません。これらは雨粒や雲や霧の水滴による光の屈折、反射でおこるもので、光の輪の視半径は光の波長と水滴の大きさ、規模に関係します。

2.「虹」はなぜ「七色」に見えるのか?

虹

では、光はどのように水滴の中を通り、七色の虹となるのでしょうか?

虹が七色に見えるのは、水滴の中を通った太陽光が七色に分解されているからです。

光は水滴に出会い、「屈折」(*)して水滴中に入ります。そこで「分散して七色に分かれ色ごとに内面で反射」して、再度水滴表面で屈折して出ていき、虹となります

スネル

(*)「屈折」は、媒質の中を進む光の速さの違いから起こります。この屈折現象は古くから知られていましたが、その関係性と法則(スネルの法則)を発見したのは17世紀のオランダの天文学者・数学者ヴィレブロルト・スネル(1580年~1626年)(上の画像)です。高速道路で見られるナトリウム灯の橙色の光に対する水の屈折率は、1.33です。波長が短い紫の光に対してはこれが1.34近くとなり、波長が長い赤い光に対しては1.32近くへと屈折率が変わってきます。

虹は、太陽を背にしたときに見えます。太陽を背にして、太陽の方向から40~42度の角度に見えるのが、「主虹」です。「副虹」は51~53度の角度で見えることが確認されています。

水滴内部で1回反射する主虹」と、2回反射する副虹」では、色の配列が逆になることも、上の図をよく見れば理解できるでしょう。

3.「虹」はなぜ「アーチ状」に見えるのか?

虹はアーチ型に見えますが、これは結果的に虹はアーチ型になってしまうのです。

虹の中心点を「対日点」(太陽と観察者を結んだ線の延長方向のこと)と言いますが、地上の観察者から見た対日点は地平線よりも下に位置します。 地平線よりも下ということは地面の中なので、当然虹はできません。 というわけで、地上にできる虹は地平線よりも上で半円形、アーチ状に見えるというわけです。

ではなぜ円形なのでしょうか? 虹は大気中の水滴の中で太陽光が屈折して観察者の目に届く現象です。 このとき、太陽ー水滴ー観察者の角度が、ある一定の角度になったとき、屈折された太陽光が強い光として観察者に届きます

その角度は「主虹」の場合は40~42度で、「副虹」の場合は51~53度です。 その、ある一定の角度にある水滴は観察者から見て大気中に円形で分布することになるので、虹は円形に見えます。

もちろん、大気中の無数の水滴が円形を描いて浮いているわけではありませんが、観察者から見て円形の範囲にある水滴が角度的に丁度よく観察者に向けて太陽光を屈折させているという意味です。

太陽光を程よく屈折させて観察者に届ける水滴の分布を調べていくと、結果的に円形(アーチ状)になる、と言ってもいいでしょう。

なお、水滴にはさがあるので、空中静止しているわけではなく、すぐにちてしまいます。それぞれの水滴は、から40~42度(「副虹」の場合は51~53度)角度になった一瞬だけ我々にせたあと、ちてしまうのです。

なく、わりわり、しい水滴が、我々にせてくれているのです。これは、方丈記の一節「ゆく川の流れは絶えずしてしかももとの水にあらず」や「テセウスの船」と似たような話ですね。

4.「虹は七色」というのは万国共通ではない

可視光線

虹の色は赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の七色。これは日本では常識です。しかし、世界ではそれが非常識なのをご存知でしょうか?

アメリカやイギリスでは一般的に六色と言われており、藍色を区別しないのです。ドイツではさらに橙色も区別せず五色となり、アフリカでは暖色と寒色のみあるいは明・暗など)で二色という部族もあります

この違いは、日本人の色に対する高い感受性や繊細さの表れではないかと私は思います。

虹は連続して変化した色の帯ですから、はっきりとした色の境目があるわけではありません。これを何色ととらえるのかは、その国の文化によって異なるからです。そもそも色の認識のしかたが違ったり、色に名前がついていなかったりすれば、色を識別しようとも思わないでしょう。

日本人の色に対する感性は実に繊細です。例えば、茶色や鼠色でさえ何十種類もの色名があり、「団十郎茶」「路考茶」など70以上の茶が、「梅鼠」「藤鼠」など各色相の鼠色があることから「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねず)」と言われています。豊かな色彩感覚を育んできたことがわかりますね。

色の違いは無限ですから、微妙な違いを的確にとらえて楽しもうとする日本人の感性が、虹を見つめるまなざしにも息づいているのでしょう。日本でお馴染みの「藍色」が、七色と六色を見分ける差になっているのも頷けます。

5.「虹」が動物でもないのに漢字で「虫偏」となった理由

漢字の「虹」が虫偏なのは、古代中国で、竜になる大蛇が大空を貫く時に作られるものが「にじ」と考えられていたことに由来します。

虫偏は昆虫を表した字ではなく、元々はヘビの形を描いたもので、その虫に「貫く」を意味する「工」の字で「虹」の漢字が作られました。

虹

「にじ」の漢字には雄と雌があり、雄は「虹」で明るい「主虹」、雌が「霓(蜺)」で外側の薄い「副虹」を表します。
この二字を合わせた「虹霓・虹蜺(こうげい)」も「にじ」を意味します。

和語の「にじ」の語源は不明ですが、古くは虹とヘビが同じ語で表されていたか、近い音で表現されていたと考えられています。

水中に棲む長い生き物は、「うなぎ」や「あなご」など「nag」の音で表されているものが多く、「ナギ」はヘビ類の総称であったと考えられています。

『万葉集』には、虹を「ノジ」と表した例があります。
琉球方言では、ヘビを「ナギ」や「ナガ」、虹を「ノギ」や「ナーガ」と呼んでいます。

未詳な部分も多く、これだけで断定できるものではありませんが、日本でも古くから、ヘビが息を吹いたものが虹になるという考えがあったため、ヘビに関する語が「にじ」の語源となっていることは十分に考えられます。

その他、「にじ」の「に」は赤を意味する「丹(ニ)」、「じ」が「白(シ)」か「筋(スヂ)の反」とする説もあります。