古来日本人は、中国から「漢語」を輸入して日本語化したのをはじめ、室町時代から江戸時代にかけてはポルトガル語やオランダ語由来の「外来語」がたくさん出来ました。
幕末から明治維新にかけては、鉄道用語
はイギリス英語、医学用語はドイツ語、芸術・料理・服飾用語はフランス語由来の「外来語」がたくさん使われるようになりました。
日本語に翻訳した「和製漢語」も多く作られましたが、そのまま日本語として定着した言葉もあります。たとえば「科学」「郵便」「自由」「観念」「福祉」「革命」「意識」「右翼」「運動」「階級」「共産主義」「共和」「左翼」「失恋」「進化」「接吻」「唯物論」「人民」などです。
江戸時代の日本はヨーロッパで唯一オランダとは交易を持っていたため、オランダ語経由で様々な西洋の学問や知識を取り入れて来ました。現在では、オランダ語由来の言葉だとは分からないほど日本語として定着しています。
そこで今回は、日本語として定着した(日本語になった)オランダ語由来の「外来語」(その4:ナ行~ハ行)をご紹介します。
1.ビール(Bier)
「ビール」はオランダ語のbierに由来します。
語源をさかのぼると、ラテン語の動詞「飲む(bibere)」という言葉に由来します。日本には1613年に平戸(長崎県)に持ち込まれ、1724年にはオランダの商船が江戸幕府8代将軍・徳川吉宗に献上した記録が残っています。
日本語では当て字で麦酒、英語はbeerです。
2.ビーカー(Beker)
「ビーカー」は、オランダ語のbekerに由来します。語源をさかのぼると、ギリシャ語の「水差し、ワインの瓶(bîkos)」という言葉に由来します。英語はbeakerです。
3.ピンセット(Pincet)
「ピンセット」は、オランダ語のpincetに由来します。
語源をさかのぼると、フランス語の「はさむもの(pince)」、ラテン語の「刺す(punctio)」、古代ギリシャ語の「こぶし(pugme)」という言葉に由来します。
日本語では鑷子(せっし)、英語はtweezersです。
4.ピント(Brandpunt)
「ピント」は、オランダ語で「焦点」を意味するbrandpuntに由来します。
オランダ語のbrandpuntは直訳すると「火災の点」という意味があります。brandはオランダ語で「大火災」、puntは「点」のことです。英語はfocusです。
5.ブランデー(Brandewijn)
「ブランデー」は、オランダ語で「焼いたワイン」を意味するbrandewijnに由来します。
英語ではbrandy-wineとも呼ばれ、wineが省略されてbrandyになりました。ブランデーは果実酒から作られる蒸留酒のことですが、フランスでは「オー・ド・ヴィー(eau-de-vie)」と呼ばれ、「命の水」という意味があるそうです。漢字では「葡萄地酒」と表記します。
6.ブリキ(Blik)
「ブリキ」は、オランダ語で「板金、薄い板」を意味するblikに由来します。英語ではsheet metalやtin plateなどと言います。
7.ペスト(Pest)
「ペスト」は、オランダ語のpestに由来します。
ペストはペスト菌の感染により起こる感染症で、皮膚が紫黒色になることから「黒死病(black death)」とも呼ばれます。過去に3度のパンデミックをもたらしたそうです。英語はplagueで、英語のpestは伝染病を媒介する害虫や害獣などのことを意味します。
8.ペン(Pen)
日本語の「ペン」はオランダ語のpenに由来します。
語源をさかのぼると、ラテン語の「羽(penna)」という言葉に由来します。元々はガチョウなどの羽根の先にインクをつけて書いていました。
古代エジプトでは葦(アシ)の茎を使用して文字を記していたそうです。
9.ペンキ(Pek)
「ペンキ」は、オランダ語で「ピッチ(粘着性樹脂)」を意味するpekという言葉に由来します。
ピッチ(pitch)は塗装や防水として利用される物質のことで、植物樹脂から作られるものはロジン(rosin)といいます。
ペンキの英語はpaint(ペイント)です。
10.ホース(Hoos)
「ホース」はオランダ語のhoosに由来します。
江戸時代にオランダ船から日本に伝わったそうです。火事が多発した江戸時代ですが、ホースが当時の日本に定着しなかったのは、火消しの基本が「破壊消火」だったためとも言われています。
11.ポンプ(Pomp)
「ポンプ」はオランダ語のpompに由来します。
ポンプの歴史は古く、紀元前1500年頃から古代エジプトで灌漑のために用いられていました。ポンプは外部の動力によって液体や気体を移動する装置のことなので、機能的には心臓もポンプです。
12.ポン酢(Pons)
「ポン酢」は、オランダ語の果汁入りカクテル「ポンチ・パンチ」の略称「pons(ポンス)」に由来します。
江戸時代にポンスの「ス」が「酢」と間違って解釈されてポン酢と呼ばれるようになりました。その後、酸味がある果汁のこともポンスと呼ぶようになりました。