「左」の漢字の成り立ち・意味は?左官・左党など左を含む熟語の意味・由来も紹介。

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左・漢字の成り立ち

1.「左」という漢字の成り立ち・意味・読み方

(1)漢字の成り立ち

会意文字です(ナ+工)。「左手」の象形と「工具」の象形から工具を持つ左手を意味し、そこから、「ひだり」を意味する「左」という漢字が成り立ちました。

また、左・右の手が相互に助けあう事から「助ける」の意味も表すようになりました。

(2)意味

「ひだり」(反意語:右)

ア:「南を向いた時に東にあたる方角。大部分の人が、食事の時に茶碗を持つ側。さ。」(例:左に曲がる、左折)

イ:「南を向いた時に東側にある手。左手。」

ウ:「「イ」が右手より、期待どおりの良い結果が実現すること。左利き。」(例:左の投手)

エ:「野球のレフト。さ。」(例:左への本塁打、左中間)

オ:「急進的な思想(考え)の傾向がある事。フランス革命後の議会で、急進派が議長席から見て左側に議席を持ったことから出た語。さ。」(例:左よりの考え、左翼)

カ:「酒を好んで飲むこと。また、その人。さ。」(例:左党)

キ:「歌合わせ・絵合わせ(歌や絵の優劣を競う遊び)等で、「ア」側の組」

ク:「官職を右と「ア」に分けた時の「ア」の方」

ケ:「縦書きの文書で、「ア」の方。さ。」(例:左記)

②「東(昔、中国で天子(国を治める人)は臣下に対面する時、陽の
方位である南に面して座ったことから東を左と言う。)」

③「下」、「下位」

④「ひだりする(左に行く)」

⑤「ひだりにする(左に置く、左に向ける)」

⑥「尊ぶ」(例:右文左武)

⑦「下げる」、「遠ざける」(例:左遷)

⑧「助ける」(例:左史右史)

⑩「証拠」、「証(あか)し」、「印(しるし)」(例:証左)

⑪「違(たが)う」、「食い違う」

⑫「もとる(物事の正しい順序に背(そむ)く、反する)」

(3)読み方

音読み:「サ」

訓読み:「ひだり」

名前(音読み・訓読み以外の読み):「ざ」、「すけ」、「ぞう」

2.「左」を含む熟語の意味・由来

(1)二字熟語

①左官(さかん):建物の壁を塗って仕上げる職人

②左党(さとう):1 急進的、革命的な思想の政党。左翼の政党。2 酒を好んで飲む人。上戸。

③左翼(さよく):1 鳥や飛行機などで左側の翼。2 急進的、革新的な思想を持つ人。また、その思想を持つ団体。3 隊列や建物などの広がっているものの左側。4 野球で本塁から見て左側の外野手。

④左遷(させん):今よりも低い地位や官職に移すこと

⑤左岸(さがん):川の上流から見て左側の岸

⑥左記(さき):縦書きの文章で、次の内容にあたる左側の行

⑦左京(さきょう):平城京や平安京で、中央を南北に貫く朱雀大路を基準とした東側

⑧左近(さこん):1「左近衛府 (さこんえふ) 」(*)の略。2「左近の桜」の略。

(*)令外 (りょうげ) の官。大同2年(807)近衛府 (このえふ) を改称したもの。右近衛府とともに宮中の警固、行幸の警備にあたった。左近司 (さこんのつかさ)

⑨左舷(さげん):船尾から船首の方を向いて左にある船べり

⑩左袒(さたん):味方すること。《「袒」は衣を脱いで肩をあらわにする意で、中国、前漢の功臣周勃 (しゅうぼつ) が呂氏 (りょし) の乱を鎮定しようとした際、呂氏に味方する者は右袒せよ、劉氏 (りゅうし) に味方する者は左袒せよ、と軍中に申し渡したところ全軍が左袒したという「史記」呂后本紀の故事から》

⑪左様(さよう):その物事が正しいことを言い表す。そのとおり

⑫証左(しょうさ):事実や真実であるとはっきりさせる根拠と物事。証

⑬左褄(ひだりづま):1 着物の左身頃 (みごろ) の褄。2 芸者の異称。(例:左褄を取る)

⑭左前(ひだりまえ):1 相手から見て、左の衽 (おくみ) を上に出して和服を着ること。普通の着方と反対で、死者の装束に用いる。ただし、女性の洋服類は左前に仕立てる。2 運が傾くこと。経済的に苦しくなること。左向き。(例:家業が左前になる)

⑮平左(へいざ)(平気の平左):《「平気の平左衛門 (へいざえもん) 」の略》平気であることを、語呂を合わせて人名のように言った言葉。平気の孫左衛門。(例:うそがばれても平気の平左だ)

(2)三字熟語

①吉左右(きっそう):1 喜ばしいめでたい知らせ。吉報。2 よいか悪いか分からない知らせ。

②左義長(さぎちょう):昔、正月の一五日および一八日に宮中で行われた、悪魔祓いとしての火祭り。現在では「どんど焼き」として残っている

③左大臣(さだいじん):1 令制の官。則闕(そっけつ)の官である太政大臣を除いては、国家の中枢機関である太政官の最高の職。国政を総理する。右大臣の上席。江戸時代にも形骸化しながら存続したが、明治18年(1885年)12月、内閣制の発足とともに廃された。ひだりのおとど。左相閤。左相国。左丞相。左相府。左相。左太閤。2 特に、藤原時平(ふじわらのときひら)を指す。

④新左翼(しんさよく):第二次世界大戦後の1960年代に、欧米や日本などの先進国において、主に大学生、大学院生や青年労働者によって構成された革命を志向する左翼的な政治運動、政治勢力のこと

⑤左団扇(ひだりうちわ):利き手でない左手で悠々とうちわを使うこと。転じて、安楽に暮らすこと。ひだりおうぎ。(例:左団扇で暮らす)

(3)四字熟語

①左往右往(さおううおう):多くの人々があっちへ行ったり、こっちへ行ったりして迷うこと。慌てていて、秩序無く入り乱れている様子をいう

②左見右見(とみこうみ):1 あちらを見たり、こちらを見たりすること。2 色々な向きから様子をながめること。

③左顧右眄(さこうべん):左を見たり右を見たりして、周りの様子を窺うだけですぐに結論を出すことができないこと。「顧」と「眄」はどちらも周りを窺うこと。

「左眄右顧(さべんうこ)」とも言う。

④左支右吾(さしゆうご):様々な手段を用いて危険を防ぐこと。または、左右のどちらにも差支えがあること。あれこれ言い逃れをして危険を回避しようとすること。
左を支えて、右を防ぐという意味から。

⑤左戚右賢(させきゆうけん):親族を低い地位の左側に、賢者を高い地位の右側におくこと。卑しいものを左側、尊ぶものを右側におくという中国の漢の時代の風習。

⑥左程右準(さていゆうじゅん):全ての行動が道徳的な手本の通りなこと。「程」や「準」はどちらも物事を行う上での基準。

⑦左図右史(さとゆうし):所蔵している書物が多いことのたとえ。左右のどちらを向いても本ばかりということから。「図」は書籍。「史」は史書

⑧左武右文(さぶゆうぶん):文武の両道を兼備すること。学問と武芸の両面を重んじること。「左文右武(さぶんゆうぶ)」とも言う。

⑨左右他言(さゆうたげん):自分に都合の悪いことの話題をそらしてごまかすこと。「他言」は話題をそらすこと。話題の答えに困ったり、答える必要がないと思う時の態度のこと。
中国の戦国時代、孟子が斉の国の王にしっかりと国を治めていないことへの責任を指摘され、側近に話を逸らさせたという故事から。

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