日本語の面白い語源・由来(い-⑦)岩魚・今際の際・池・泉・烏賊

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岩魚

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.岩魚(いわな)

岩魚の串焼き

イワナ」とは、サケ科イワナ属の魚です。体は黄褐色で、背側面に淡黄褐色の斑点が散在します。日本産淡水魚の中で最も高地の渓流に棲みます。「キリクチ」「ゴギ」「ダンブリ」「イモホリ」「嘉魚」とも言います。

イワナは渓谷の岩陰や岩のある淵(ふち)にひそんで棲み昆虫や小魚を捕食することから、「岩の間・岩場にすむ魚」の意味で「岩魚」と名付けられました。

イワナの「」は、「フナ(鮒)」や「メジナ(眼仁奈)」の「ナ」と同じく、「魚」を表す語です。

また、「嘉魚」はめでたい魚であることに由来するということです。

「いわな」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・かつと口 開けて岩魚の 焼かれけり(長谷川櫂)

・岩魚あり 酒なき膳の 箸を割る(本田一杉)

2.今際の際(いまわのきわ)

今際の際

今際の際」とは、死にぎわ、臨終、最期のときのことです。

いまわ(今際)」は「今は限り」の略で、旧仮名は「いまは」です。
「今は限り」は「今はもうこれ限り」、つまり「死に際」「臨終」を意味します。

これに「際」を加えた「今際の際」は重複表現ですが、ギリギリであることを強調した語なので、「頭痛が痛い」などとは性質が異なります。

「いまわ(今わ・今は)」を「今際」と表記するのは、極限の時という意味からの当て字です。類似表現には、「今際の刻み」や「今際の時」「今際の果て」があります。

3.池(いけ)

池

」とは、地面を掘って水を湛えたところ、地面の窪地に水が溜まったところのことです。普通、湖沼より小さいものを言います。

池の語源は、「いけ(生)」の意味と考えられています。

その根拠には、魚を生かせておくところであるため「いけ(生)」とする説と、水が涸れるのに対し「いけ(生)」とする説があります。

寝殿造りや寺院の庭園に見られる池を元にすれば、魚を生かせておくところと考えられますが、地名に「池」のつくところは稲作が普及した地域と重なることから、涸れないために水を湛えておくところで「いけ(生)」の意味とも考えられ、特定は困難です。

漢字の「池」の「也」は、「蛇」の原字「它」が変化した文字で、長く伸びた爬虫類の姿を描いた象形文字です。

「水(三水)」と「也」からなる「池」は、帯状に長く伸びた溝や溜池を表しています。

4.泉(いずみ)

泉

」とは、地中から水が湧き出るところ、またその水のことです。転じて物事が出てくるところ、源のことも意味します。

『和名抄』にも「出水 伊豆美(「伊豆美」は読み)」とあるように、泉は外に出る意味の「いづ(出づ)」と「み(水)」からなる語です。

「知識の泉」など「物事の現れる元」や「源」を表すのは比喩的表現ですが、「源」も「水な元(水の元)」が語源なので、比喩的に用いるのは特別なことではありません。

漢字の「泉」は、丸い穴から水の湧き出るさまを表した象形文字です。

また、「和泉」と書いて「わいずみ」ではなく「いずみ」と読みます。これは地名を二字で表すことが佳字とされたため「和」の字が加えられたもので、姓に「和泉(いずみ)」が用いられるようになったのは、地名からの派生です。

ちなみに、観光名所として有名な「トレヴィ(トレビ)の泉」は、ローマにある最も巨大なバロック時代の人工の泉(噴水)です。

トレビの泉

5.烏賊(いか)

烏賊

イカ」とは、頭足綱十腕目の軟体動物門の総称です。10本の細長い腕(一般には足と呼ぶ)を持ち、そのうち2本の触腕で捕食などをし、敵にあうと墨を出して逃げる習性があります。

イカの語源には、次のように諸説あります。

その形状から「いかつい(厳つい)」「いかめしい(厳めしい)」の「いか」とする説
「い」が発語、「か」が腹部にある「甲」の意味とする説
「い」が「白」の意味、「か」が「堅い」とする説
イカはタコに比べよく泳ぐことから、「いか(行か)」の意味とする説

イカの漢字「烏賊」は、中国の言い伝えに由来します。その言い伝えは、イカはいつも水面に浮かび、死んでいるように見えるため、水面に浮かんだイカをカラスがついばもうとしますが、イカは腕を伸ばして巻きつき、カラスを捕らえるというものです。

カラスにとってイカは恐ろしい存在で、まるで賊のようなものという意味から、「烏」と「賊」で「烏賊」と表記されるようになりました。

「烏賊」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・銀行員等 朝より蛍光す 烏賊のごとく(金子兜太)