日本語の面白い語源・由来(う-④)兎小屋・噓も方便・裏付け・鶯・現を抜かす

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日本の狭小住宅・ウサギ小屋

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.兎小屋/うさぎ小屋(うさぎごや)

ウサギ小屋

兎小屋」とは、日本人の狭い住居を形容した言葉です。

うさぎ小屋は、昭和54年(1979年)にEC(ヨーロッパ共同体)が出した非公式報告書『対日経済戦略報告書』の中で、日本人の住居が「rabbit hutch(うさぎ小屋)」と形容されたことから、日本では自嘲をこめた流行語となりました。原文は、フランス語で「cage a lapins」。

直訳すれば「rabbit hutch(うさぎ小屋)」になりますが、フランスの集合住宅の俗称で「狭くて画一的な都市型集合住宅」を意味し、「日本人もフランスの集合住宅のような所に住んでいる」といった趣旨の表現でした。

「都市型集合住宅」を表すことから、フランス語が英訳された際の誤訳で、本来は、ほめる意味が含まれていたとするものもあります。

しかし、報告書では「日本は西欧人から見ると、うさぎ小屋とあまり変わらない家に住む労働中毒者の国」と表現されており、住居に関する箇所を「フランスのような狭くて画一的な都市型集合住宅」に変えても、「狭い家に住みながら狂ったように働いている」といった意味に変わりはありません。

つまり、「うさぎ小屋」は「欧州に比べて狭い家」といった優劣を意味するものではないものの、「狭い」という意味で用いられていることに間違いありません。

余談ですが、「兎」は冬の季語で、次のような俳句があります。

・初雪に 兎の皮の 髭作れ(松尾芭蕉

・吹越(ふっこし)(*)に 大きな耳の 兎かな(加藤楸邨

(*)「吹越」とは、積もった雪が風に運ばれて舞い落ちる「風花(かざはな)」を指す群馬などで使う言葉

2.噓も方便

噓も方便

嘘も方便」とは、嘘をつくことは悪いことだが、時と場合によっては必要なこともあるということです。

方便」は仏教語で、仏が衆生を教え導くための便宜的な方法の意味です。「嘘も方便」の成句は江戸時代から見られ、『法華経譬喩品』の「三車火宅(さんしゃかたく)」のたとえに由来すると言われます。

「三車火宅」のたとえとは、ある老人の家が火事になり、その中で何人かの子供が遊んでいた。老人が「危ないから早く逃げなさい」と言っても、子供たちは耳を貸さなかった。
そのため、「外に出ればお前たちが欲しがっていた羊の車、鹿の車、牛の車があるよ」と言って、外へ連れ出したというものです。

そこから、時と場合によっては必要な嘘もあるということで、「嘘も方便」と言うようになりました。

3.裏付け(うらづけ)

裏付け

裏付け」とは、証拠や資料によって確実なものと証明すること。また、証明できる材料のことです。

「裏付け」は、室町時代に、証文などの裏書きや支払いの証として押す裏判を言った言葉です。
明治時代以降、上記の意味から派生して、証拠となるものや信憑性を証明することを「裏付け」と言うようになりました。

4.鶯(うぐいす)

ウグイス

ウグイス」は、全長約16センチのスズメ目ウグイス科の鳥です。オオルリ・コマドリとともに「日本三名鳥」の一つとされます。

ウグイスの語源には、「春告げ鳥」の別名があるように、春になると谷の奥から出てくることから、「ウク(ウグ)」が「奥」、「ヒス(イス)」が「出づ」で、「奥出づ」の意味とする説や、茂みに巣を作る鳥なので「ウ」が「フ(生)」の転、「ス」が「巣」の意味とする説などがあります。

しかし、ウグイスの最大の特徴はその鳴き声にあるため、「ウグヒ(ウグイ)」が鳴き声で、「ス」はカラス、カケス、ホトトギスなどと同じく、鳥の接尾語と考えられます。

漢字の「鶯」は、上部が音符「エイ(栄)」で、ぐるりと取り巻くさまを表し、輪状の羽模様が首のまわりを取り巻く鳥という意味です。

ただし、中国での「鶯」は日本でいう「コウライウグイス」を指すため、鳴き声も外見も大きく異なります。

余談ですが、「梅に鶯」という言葉があるため、勘違いしている方も多いと思いますが、下の写真の鳥は「目白(めじろ)」です。

メジロ

「鶯」は春の季語で、次のような俳句があります。

・鶯に 終日(ひねもす)遠し 畑の人(与謝蕪村

・鶯も 元気を直せ 忘れ霜(小林一茶

・鶯や 柳のうしろ 藪の前(松尾芭蕉)

5.現を抜かす/うつつを抜かす(うつつをぬかす)

現を抜かす

うつつを抜かす」とは、ある物事に心を奪われ、夢中になることです。

うつつを抜かすの「うつつ(現)」は、現実や本心、正気などを意味します。「夢かうつつか幻か」と言うように、夢や虚構などに対して使う言葉です。

うつつを抜かすは、現実や正気が抜けた状態です。つまり、意識がはっきりしていない状態であることから、ある物事に心を奪われ、夢中になることを意味するようになりました。

最近の「メタバース」、「バーチャルリアリティー(VR)」(仮想現実)や「AR」(拡張現実)、「アバター」、「eスポーツ」なども、「うつつを抜かす」状態と言えるかもしれません。