日本語の面白い語源・由来(か-①)兜虫・会議・乾杯・賢い

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カブトムシ

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.兜虫/甲虫/カブトムシ(かぶとむし)

カブトムシ」とは、コガネムシ科の昆虫です。体長約5センチ。体は艶のある黒褐色または赤褐色で、雄の頭上にはY字形の長い角があります。

カブトムシは、雄の頭にある角が武士の被る「兜」に似ることからの名です。

兜

元々は京都の方言で、江戸では「サイカチムシ」と呼ばれていましたが、現在では「カブトムシ」が一般化しました。

サイカチ(皁莢、皂莢)の木によくいるところから「サイカチムシ」と呼ばれました。クヌギやコナラと同様にサイカチも、カブトムシが好む樹液がよく出る木です。

なおカブトムシについては、「カブトムシにまつわる思い出話。累代飼育にも挑戦!」と「カブトムシの有機農法。秘められた生態をわかりやすくご紹介します」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。

2.会議(かいぎ)

会議は踊る

会議」とは、関係者が集まって相談、議論すること(また、その集まりのこと)です。

会議は、古代中国の『史記』にも見える漢語です。
「会食」や「会談」などと同じ語構成で、文字通り、「会して(集まって)議する(意見を出し合う)」の意味です。

日本では、江戸時代中期からわずかに例が見える程度で、広く使われる言葉ではありませんでした。

「会議」の語が一般に普及したのは、明治元年(1868年)の『五箇条の御誓文』で「広ク会議ヲ興シ万機公論ニ決スベシ」と使われてからです。

明治12年(1879年)の『読売新聞』には、「近ごろは頻りに会議流行(はやり)で何でも会議会議と」などと書かれています。

現代の会社や官庁には「無用な会議」「無駄な会議」「結論の出ない堂々巡りの会議」が多すぎるように私は思います。「会議は踊る、されど進まず」と揶揄された1814年の「ウィーン会議」(ナポレオン・ボナパルト失脚後のヨーロッパを議した会議)がありましたが、毎年のように開催される多くの「国際会議」もしかりです。

3.乾杯(かんぱい)

乾杯

「乾杯」と言えば、私はまず長渕剛の歌を思い出します。

乾杯」とは、宴会などで、喜びや祝福の気持ちを込め、酒杯を触れ合わせ酒を飲み干すこと、またその際の掛け声のことです。「乾盃」とも書くきます。

乾杯は「杯(盃)を乾す」と書くように、本来は、酒を飲み干すことを意味します。
昔は、獣角や貝殻などの不安定な酒器を用いたことから、一気に飲み干すことが「乾杯」でした。

日本の宴席などで行われる乾杯は1854年、イギリスのエルギン伯爵が、晩餐会の席で「イギリスでは国王の健康を祝して杯を交わす習慣がある」と言ったため、それに従い行ったことに由来します。

これ以降、酒を入れた杯を掲げ、互いに触れ合わせる儀式として広く行われるようになりました。

当初の掛け声は「万歳」でしたが、酒を飲み干すことから次第に「乾杯」の掛け声に変わっていき、現代では、酒を飲み干すことよりも、杯を合わせる儀式や、その時の掛け声を「乾杯」と言うようになっています。

乾杯の際に杯(グラス)を合わせる風習は、ヨーロッパの宗教的儀式に由来し、グラスを合わせて音を立てることで、酒の中に宿る悪魔を追い払っていたものだったと言われます。

これが、イエス・キリストや聖母たちに乾杯する風習に変わり、イギリスには宗教的な祈りと死者を追悼する酒盛りの風習として伝わり、いつしか生きた人間の健康を祝福する乾杯となりました。

日本で杯を合わせるようになった由来は、お互いの杯を勢いよくぶつけ、杯の中を混じり合わせることで、毒が入っていないことを証明していたからという説もあります。

しかし、昔は杯を合わせておらず、客と主人の杯へ同時に酒を注ぎ、同時に飲み干すことで、毒が混入していないことを証明をしていたと考えられています。

なお、葬儀や法事の場で行う「献杯」(けんぱい)は、故人に向けての杯で、敬意を表して杯を捧げることです。

4.賢い(かしこい)

賢い

賢い」とは、 頭が良い、知能が優れている、利口である、抜け目がないことです。

賢いは、文語「かしこし」の口語です。
かしこしは、「厳かだ」「偉い」を意味する「いかし(厳し)」が転じた語で、元々は、「恐ろしい」という畏怖の念を表しました。

そこから、賢いは権威のある者に対する「恐れ多い」「もったいない」という気持ちや、恐ろしいほど才能があることを表すようになり、現代では主に、頭が良いことを意味するようになりました。

その他、「尊い」「好都合」「品質や性能が素晴らしい」「甚だしい」「重大である」など、賢いは様々な意味も表していました。

女性が手紙の末尾に添える「かしこ」も、賢いと同源で「かしこし」に由来します。

余談ですが、英語で「賢い」を意味する言葉としては、smart, intelligent, bright, clever, wiseなどいくつもあります。

「クレバー」を思い浮かべる方も多いと思いますが、実際は「スマート」の方がよく使われます。以下にその使い分け・ニュアンスをご紹介します。

①smartは、「幅広い意味・場面で使える賢さ」です。日本語でも「スマートなやり方」などと言いますね。一般的に言われるような「賢い」といったニュアンスです。

「賢い」という意味で幅広い意味・場面で使われているのが “smart” です。人や動物など、使える対象も広いです。基本的には「勉強ができる頭の良さ」を表しますが、言い方によっては「生きる上での賢さ」を表すこともできます。アメリカ英語において、最も一般的に使用される言葉と言えます。

②intelligentは、smartよりも賢さを少し強調した言葉です。「頭脳明晰な」「聡明な」といったニュアンスです。

“intelligence” という名詞が「知能・思考力・理解力」を表し、それらが高いのが “intelligent” というイメージです。

多くの場合 “smart” と同義で使えますが、”smart” よりもやや賢さの意味合いが強く、口語的というよりは文語的です。人だけではなく、動物やロボット・AIなどにも使えます。

③brightは、子供や若者に対して使われる賢さです。「利口な」「利発(利口発明)な」「発明(利発明知)な」といったニュアンスです。

“bright” は “smart” と同様に広い意味での賢さを表しますが、天性の才能がある、という意味合いで使われることもあります。
使う対象は子供や若者など将来有望な人であることが多いです。

“bright” がもともと「明るい」という意味を持つように、未来が明るく将来性がある、というところからきています。

④cleverは、頭の回転の速さや機転がきくことを表す言葉です。「怜悧な」といったニュアンスです。

“clever” が示す賢さは、どちらかというと頭の回転の速さや機転がきくことです。

また、特にイギリス英語では、”clever” を好んで使うことが多いようです。
(その際にはアメリカ英語で言う “smart” のように広い意味で使われます。)

⑤wiseは、経験が豊富であり、正しい選択ができる賢さを表す言葉です。「賢明」「賢人」「賢者」といったニュアンスです。

“wise” が持つ賢さとは「経験や知識が豊富にあり、物事を正しく判断をすることができる」です。

アカデミックな賢さもさることながら、経験則に基づいて決定できることに焦点が当たるため、通常経験や知識が豊富な年上の人に対して使われる場面が多くあります。