日本語の面白い語源・由来(お-⑩)押忍・億劫・お伽話・一昨年・お節介

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押忍

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.押忍(おっす)

サラリーマン番長・押忍

押忍」とは、若い男性同士が道などで出会った時の挨拶語で、親しい間柄で用います。また、武道家や応援団の掛け声風な挨拶語でもあります。

オッスは、戦前、京都にあった武道専門学校の生徒の間から生まれた言葉で、「おはようございます」の略です。

「おはようございます」が「おはよーっす」となり、「おわーす」「おす」と変化していきました。

その「おす」に、武道の精神である「自我を抑え我慢する」という意味の「押して忍ぶ」が当てられ、漢字では「押忍」と書くようになりました。

挨拶として用いられる「オッス」は「おはようございます」が略されたものですが、応援団などが掛け声風に用いる「オッス」は、当て字「押忍」の意味からと考えられています。

なお、いかりや長介が『8時だョ!全員集合』で客席に向かって言う「オイッスー」は、「オッス」が更に変化した言葉です。

最近、若い人が「ありがとうございます」を略して「あざす」とか「あざーっす」と言うのも、これと似ていますね。

2.億劫(おっくう)

億劫

億劫」とは、面倒臭くて気が進まないこと(または、そのさまのこと)です。

億劫は元仏教語で、非常に長い時間を表しました

億劫の「」はサンスクリット語「kalpa」の音写で、古代インドで最長の時間の単位です。
一劫」の長さは、100年に一度、天女が高い岩山に舞い降りてきて羽衣で頂上を撫で、その摩擦で岩山が消滅するまでの時間という、限りなく無限に近い時間を表します。

この「一劫」の一億倍が「億劫」で、考えられないほど長い時間を表します。

そこから、「億劫」は「時間が長くかかるためやりきれない」という意味や、計り知れない時間がかかることは容易ではなく面倒に感じることから、「面倒くさい」の意味で用いられるようになりました。

漢字の「億劫」の読みは「おくこう」でしたが、促音化して「おっこう」となり、更に変化して「おっくう」となりました。

3.お伽話/お伽噺/おとぎ話(おとぎばなし)

桃太郎

おとぎ話」とは、大人が子供に聞かせる昔話や伝説、現実離れした架空の話のことです。

おとぎ話の「お」は、接頭語の「お(御)」です。おとぎ話の「とぎ(伽)」は、話相手となって退屈を慰めたり機嫌をとったりすることで、側に寄り添う意味の動詞「トグ」に由来します。

戦国時代のドラマなどに出て来る「御伽衆(おとぎしゅう)」が、まさに本来の意味の「お伽」です。「御伽衆」は、室町時代後期から江戸時代初期にかけて、将軍や大名の側近に侍して相手をした職名です。雑談に応じたり、自己の経験談、書物の講釈などをしました。「御迦衆」とも書き、「御咄衆(おはなししゆう)」、「相伴衆(そうばんしゅう)」などの別称もありますが、江戸時代になると「談判衆(だんぱんしゅう)」、「安西衆(あんざいしゅう)」とも呼ばれました。

現代でこそ、おとぎ話は大人が子供に語って聞かせるものですが、元々は大人に聞かせるもので、貴人の身近に仕えて話をし慰めることを「おとぎ」と言いました。

子供に聞かせる話の意味で「おとぎ話」が使われるようになったのは、明治以降のことです。

「おとぎの国」などと言う時の「おとぎ」は、「おとぎ話」を略したものであり、現在の意味になってからの表現なので、話をして慰めるといった意味は含まれていません。

4.一昨年(おととし/おとどし/いっさくねん)

一昨年」とは、昨年の前年、前々年のことです。

おととしの「おと」は、「おととい(一昨日)」の「おと」と同じく、遠方を意味する古語「おち・をち(遠)」に由来します。

おち・をち(遠)」は、空間的に遠いことを表しましたが、時間的にも遠いことを表すようになった語で、「おととし」は「遠く過ぎ去った年」の意味となります。

漢字の「一昨年」は、「おととし」の意味から当てた当て字で、「一昨」は「一つ前」を表します。

余談ですが、童謡「背比べ」には悲しい誕生秘話があります。これについては、「童謡の誕生にまつわる悲しい、あるいは意外な興味深い秘話(その2)」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。

5.お節介(おせっかい)

お節介

お節介」は、「迷惑になるような余計な世話を焼くこと」「出しゃばって世話を焼くこと」です。

すり鉢などの内側に付いたものを掻き落とすための道具である「せっかい(切匙、狭匙)」が語源です。

「切匙」が溝の内に入り込むことから、他人の内に入り込もうとすることを「おせっかい」と言うようになり、間に挟まることを意味する「介」の字を含んだ「節介」が「当て字」として用いられたようです。

ちなみに「節介」の本来の意味は「節操を固く守り世俗に同調しないこと」です。