日本語の語源には面白いものがたくさんあります。
前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。
以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。
1.お河童/御河童(おかっぱ)
「おかっぱ」とは、前髪を眉の上、横と後ろの髪は首筋あたりで切りそろえた少女の髪型のことです。
おかっぱは漢字で「御河童」と書くように、その髪型が「河童」の頭に似いていることに由来します。
ただし、この呼称が生まれた江戸時代のおかっぱは、男子に多い髪型で、頭の頂上を丸く剃ったものを言いました。
やがて、頂上を剃らない髪型も「おかっぱ」と言うようになり、現在では女子向けの髪型を指すようになりました。
「おかっぱ」の有名人と言えば、モデルの三戸なつめさんや歌手の木村カエラ・きゃりーぱみゅぱみゅさんさん、男性ではタレントのひょっこりはんさん・蛍原徹さん、画家の藤田嗣治さんなど個性的な人が多いですね。
なお藤田嗣治さん(上の写真)については、「おかっぱ頭の画家・藤田嗣治はなぜ日本を捨ててフランスに帰化したのか?」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。
2.大関(おおぜき)
「大関」とは、相撲で横綱に次ぐ地位、三役の最上位のことです。
「横綱」の地位ができる明治時代までは、大関が力士の最高位でした。
古く、最上位の力士は「最手(ほて)」と称していましたが、室町時代頃から「関(せき)」と呼ばれるようになりました。
この「関」は「関門」のことで、関門を越える者がいないためという説が有力とされます。
「関」に最上位の意味で「大」を冠した語が「大関」で、近世に出現した語のようです。
余談ですが、私にとって心に残る「大関」は、先代貴ノ花・霧島・若島津・朝潮です。
3.御御御付け(おみおつけ)
「おみおつけ」とは、味噌汁の丁寧語です。
御御御付けは「御」が三つ付きますが、三重敬語ではありません。
おみおつけの「おつけ(御付け)」は、動詞「付ける」の連用形「つけ」を名詞化したものに、接頭語の「御」をつけた女房詞です。
本膳の飯に並べて付ける汁を「おつけ」と言いました。
おみおつけの「おみ(御御)」の語源は、以下のとおり諸説あり、他の例があることから最初の説が有力です。
ひとつは、「おつけ」を更に丁寧にして「御御(おみ)」が付き、「おみおつけ」になったとする説。
同じ用法としては、「御御足(おみあし)」や「御神酒(おみき)」の元となる「御御酒」があります。
これらは、「御神籤(おみくじ)」や「御神輿(おみこし)」のように「御」が少しずつ増えたわけではなく、「御御(おみ)」でひとつの接頭語とも考えられます。
もうひとつは、味噌を丁寧にいった「御味」に「御付け」が付いて、「おみおつけ」になったとする説。
この説が正しければ、漢字「御御御付け」は接頭語「御御(おみ)」と間違えられて、一般化したものと考えられます。
その他、本来は「御実御汁食」と書き、「御実」は「具」のことで、汁の上に多くの具があり、それを食べるのが本来の意味という説もあります。
4.御湿(おしめ)
「おしめ」とは、大小便の汚れを受けるため、股に当てる布や紙のことです。「おむつ」とも言います。
おしめは、湿りを取るため腰から下に巻く布の「湿布(しめし)」が略された「しめ」に、接頭語「お」が付けられた語です。
漢字では「御湿」と書きます。その他「襁褓」とも書きますが、これは「むつき(襁褓)」からの当て字で、おしめが「おむつ」と同じ意味であるため用いられた表記です。
「大人用おしめ」とは言わず「大人用おむつ」と言うように、おしめは乳幼児の使用するものに限定した表現となり、おむつは対象を限定しない表現となっていることが多いようです。
これは、「おむつ」の方が一般に使われやすい言葉ということもありますが、おしめの「湿る」というニュアンスや、「おしめ」より「おむつ」の方が「肌着」としての意味合いが強いためと考えられます。
5.御曹司(おんぞうし)
「御曹司」とは、名門・名士の子息のことで、「御曹子」とも書きます。
御曹司の「御」は接頭語、「曹司」は元々「部屋」を意味した語です。
平安時代、曹司は官署や官所などに設けられた部屋を言うようになり、そこに住む官吏や女官も意味するようになりました。
その中でも、独立していない部屋住みの貴族の子息は、「御」をつけて「御曹司」と呼ばれるようになり、名士の子息を意味するようになりました。
現代は貴族文化ではないため、お金持ちの子息などを「御曹司」と呼ぶようになっています。
また、子息の中でも二代目となる者をさすことが多いですが、源平の時代、平家の子息を「公達(きんだち)」と呼ぶのに対し、源氏の子息は「御曹司」と言って、源氏二代目の源義経は「九郎御曹司」と呼ばれました。
2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも、弁慶が源義経のことを「御曹司」と呼んでいましたね。
特にこの時代は、源義経のことだけを指して「御曹司」と言うことが多かったため、二代目の意味合いが強くなりました。