日本語の面白い語源・由来(か-⑳)数の子・蚊・厠・華甲・還暦・南瓜

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数の子

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.数の子/鯑/鯡子(かずのこ)

数の子

数の子」とは、鰊(ニシン)の卵を乾燥させたり、塩漬けにした食品のことです。

数の子は、ニシンを別名「鰊(かど)」と言い、その子なので「かどのこ」と言ったことに由来します。

「かどのこ」が「かずのこ(数の子)」に転じたのは、「かどのこ」の数の多さが影響したものと思われます。

「かずのこ」に転じる以前にも、「数子」に「かどのこ」の読みが付けられた例も見られます。

正月などの祝儀膳に数の子が用いられるようになったのは、室町時代後期頃で、子孫繁栄に結び付けられたことによります。

正月に数の子を食べる風習が庶民の間にも定着したのは、江戸時代元禄期頃と言われます。

「数の子」は新年の季語で、次のような俳句があります。

・数の子に 老の歯茎を 鳴らしけり(高浜虚子

・数の子や 昼酒いつか 夜となりぬ(角川春樹)

・数の子に 父祖の白歯も ひゞきけむ(日野草城

2.蚊(か)

蚊

」とは、双翅目カ科の昆虫の総称です。雌は人や家畜から吸血して痒みを与えます。雄は植物の汁を吸います。

蚊の語源は諸説あり、「喧・囂(かま)」の下略「かしましき」の下略など、鳴き声のやかましさに関連付ける説のほか、「細(か)」に由来する説や、「かぶれ」「痒み」に由来する説「噛む」に由来するなど非常に多くの説があります。

蜂には「刺された」というが、蚊には「噛まれた」ということから、上記語源の中では「かむ(噛む)」の「か」に由来する説が最も有力とされます。

「噛む」に「かぶれ」や「痒み」を総合して、「か」になったとする説もあります。

漢字の「蚊」は、「ブーン」という蚊の鳴き声に由来すると言われます。

「蚊」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・わが宿は 蚊の小さきを 馳走なり(松尾芭蕉

・蚊のこえの まつはり落つる 無明かな(石田波郷)

・夜ふかく 饗宴の酒を すう蚊かな(飯田蛇笏)

3.厠(かわや)

厠

かわや」とは、便所(トイレ)の古名です。

かわやは、数ある便所の別名の中でも古く、奈良時代から見られます。

『古事記』には、水の流れる溝の上に設けられていたことが示されていることから、かわやの語源は、川の上に掛け渡した屋の意味で「川屋(かわや)」の説が有力とされます。

また、現代では住居の中に便所を作るのが一般的ですが、少し前までは母屋のそばに設けるのが一般的であったことから、「側屋(かわや)」とする説もあります。

4.華甲(かこう)

華甲

華甲」とは、数え年で61歳で、還暦のことです。「華年」とも言います。

華甲の「華」の字を分解すると、「十」が六つと一つの「一」になり、「61」を表しています。

華甲の「」は「甲子(きのえね)」で、干支(十干十二支)の最初を指しています。

そこから、還暦と同じく、数え年で61歳を表すようになりました。

なお、その他の年齢の異称については「年齢の異称をわかりやすくご紹介します」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。

5.還暦(かんれき)

還暦

還暦」とは、数え年で61歳のこと、また、その祝いのことです。「華甲」「華年」「本卦還り」とも言います。

還暦の「」は「かえる」「もどる」を意味し、「」は干支を意味します。

干支は本来、甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の十干と、子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の十二支を組み合わせた十干十二支を言い、60通りの組み合わせがあります。

60年で干支が一回りし、生まれ年の干支に戻ることから、「還暦」というようになりました。

還暦には、赤いちゃんちゃんこや赤い頭巾など、近親者が赤い物を贈る風習が古くからあります。

還暦に赤い物が贈られる由来は、赤ちゃんに還る(生まれた年の干支に還る)という意味と、赤は魔除けの色とされていたためです。

6.南瓜/カボチャ(かぼちゃ)

南瓜

かぼちゃ」とは、熱帯アメリカ原産のリ科の蔓性一年草の野菜です。果肉・種子を食用にします。

かぼちゃは、国名の「カンボジア(Cambodia)」に由来します。

天文年間(1532~55年)、かぼちゃはカンボジアの産物として、ポルトガル人によって日本に伝えられました

カンボジア産のウリの意味で、当初は「カボチャ瓜」と呼ばれ、のちに「瓜」が落ちて「カボチャ」となりました。

かぼちゃの漢字「南瓜」は、南蛮渡来のウリの意味です。中国でも「南瓜(ナングァ)」と呼ばれます。

かぼちゃの別名には、南京(なんきん)、ぼうぶら、唐茄子(とうなす)、唐瓜(からうり)があります。

南京は、日本にもたらされる寄港地である中国の「南京」に由来します。

ぼうぶらは、ウリ科の植物を意味するポルトガル語「abóbora (アボボラ)」に由来します。

唐茄子は、唐の国から渡来したナスというからです。

唐瓜は、唐の国から渡来したウリの意味です。

「南瓜」は秋の季語で、次のような俳句があります。

・ずつしりと 南瓜(なんきん)落ちて 暮淋し(山口素堂)

・鶺鴒(せきれい)が たたいて見たる 南瓜かな(小林一茶

・朝な朝な 南瓜を撫しに 出るばかり(日野草城)