日本語の面白い語源・由来(さ-③)懺悔・三平汁・寂しい・三枚目・三下・真田虫

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懺悔

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.懺悔(ざんげ)

懺悔

懺悔」とは、神仏の前で自分の犯した罪悪を告白し、悔い改めることを誓うことです。

懺悔といえばキリスト教のイメージが強いですが、「懺悔」という言葉は仏教語からきています。
罪を告白することを意味するサンスクリット語「kşama」の音写「懺摩(さんま)」の「懺」と、その漢訳「悔」との合成漢語が「懺悔」です。

懺悔は「さんげ」と語頭が清音でしたが、近世中頃から「ざんげ」と濁音読みされるようになり、現在では「ざんげ」が一般的です。

ただし、現在も仏教用語としては「さんげ」といいます。

六根清浄・行者たち

古くから修験道の山として知られる徳島県の剣山などでは、白装束に身を包んだ信者が登山の際の掛け声として「六根清浄 懺悔懺悔」を連呼しています。「富士山峰入り修行」でも、同様の掛け声をかけています。

2012富士山峰入り修行 六根清浄

また、落語の「大山詣り(おおやままいり)」などでも、その様子が描写されています。

なお、俗説ですが、「六根清浄」が登山の際に用いられた結果、音便化して「どっこいしょ」になったという説があります。

2.三平汁(さんぺいじる)

三平汁

三平汁」とは、ニシンの糠漬けや塩鮭と野菜を合わせて煮た塩汁のことです。酒粕や味噌を入れることもあります。北海道の郷土料理。

三平汁は、松前藩の賄方をしていた斉藤三平の考案によるもので、「三平」の名がついたとする説が定説となっています。

斉藤三平の説には、南部藩の家臣であったとする説や、松前藩の漁師であったという説もあります。

その他、三平汁には、有田焼(伊万里焼)の陶祖である李三平の「三平皿」を使用することからといった説もあります。

「三平汁」は冬の季語です。

3.寂しい/淋しい(さびしい)

寂しい

さびしい」とは、本来あるものが失われ満たされない気持ちである、物足りない、人恋しく物悲しい、人がいなくて心細い、人の気配がなくひっそりしていることです。
さみしいとは、「さびしい」の音変化です。

さびしいは、上代には「さぶし」という形が一般的で、中古以降「さびし」に転じました。

さびしいの語源となる「さぶし」の「さぶ」は、「心が荒れすさぶ」「勢いが衰える」「古くなる」といった意味の「さぶ(荒ぶ)」を形容詞化した「さぶし(不楽)」からです。

「錆(さび)」が語源で、心が満たされない思いを鉄や胴が錆びたさまにたとえたものとする説もありますが、「錆・錆びる(さび・さびる)」も「さぶ(荒ぶ)」から生じた語と考えられます。

さみしい(さみし)の語形は、近世以降見られ、「さびし」が音変化したものです。

「さびしい」から「さみしい」のように、「b」の音から「m」の音変化、またその逆も多く、「けぶり」から「けむり(煙)」、「おつむ(頭)」の「つむり」が「つぶり」からなどがあります。

漢字の「寂しい」の「叔」は、細く小さい意味があり、「寂」は「家」+「叔」で、家の中の人声が細く小さくなったさまを表します。

「淋しい」の「林」は、木立が続くところから、絶え間なく続くという意味があり、「淋」は「水」+「林」で、絶え間なく汁がしたたることを表します。

「寂」の漢字には「さびしい」の意味がありますが、「淋」の漢字にその意味はありません。

4.三枚目(さんまいめ)

三枚目

三枚目」とは、芝居や映画などで滑稽な役をする俳優、道化方、茶利、滑稽な言動をする人のことです。

三枚目は江戸時代の歌舞伎用語で、顔見世の時に劇場にの正面に掲げられた八枚看板の三番目に道化役の名が書かれていたことに由来します。

転じて、芝居や映画などで滑稽な役をする人を「三枚目」と言うようになり、役者に限らず滑稽な言動をする人も意味するようになりました。

一枚目・二枚目・三枚目

また、二枚目との比較から、俗に、ブサイクな男性を「三枚目」ということもあります。

ちなみに、三枚目以外の八枚看板は、一枚目に「主役」、二枚目には和事・濡れ事を持ち役とする「美男役」、四枚目には大物俳優である「中軸」、五枚目には「敵役」、六枚目には良い人物でありながら敵である「実敵役」、七枚目には「実悪役」、八枚目には座長・代表者の「座頭」が描かれました。

5.三下(さんした)

さいころ賭博

三下」とは、下っ端の者、取るに足らない者、また、そのさまのことです。

三下は、博打打ちの間で下っ端の者をいった隠語です。

サイコロ博打で、3より下の1や2しか出ないと勝ち目がありません。
そこから、目(芽)が出ない者を「三下奴(さんしたやっこ)」と言い、略して「三下」と言うようになったのです。

6.真田虫/サナダムシ(さなだむし)

サナダムシ

サナダムシ」とは、扁形動物の条虫の俗称です。体は扁平でひも状。人畜の腸に寄生する寄生虫。

サナダムシの名は、平たい体節部の形状が「真田紐(さなだひも)」に似ていることから名付けられました。

真田紐

徳川家康が「真田は虫になってまでも、なお、この家康を苦しめる」と言って、この寄生虫に苦しみ嘆いた事から付いた名とする説もありますが、有力とはされていません。