日本語の面白い語源・由来(ち-④)筑前煮・小さい・ちんちんかもかも・ちょっかい・朝三暮四・父・猪口才

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筑前煮

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.筑前煮

筑前煮

筑前煮」とは、鶏肉とにんじん・ごぼう・れんこん・こんにゃくなどを油で炒め、砂糖・醤油で甘辛く煮た料理です。

筑前は、現在の福岡県北部・西部にあたる旧国名です。
筑前地方で好んで作られるこの料理は、一般の甘煮と違い、煮る前に油炒めをすることから、「筑前地方独特の煮物」の意味でこう呼ばれるようになった。
筑前煮は筑前以外の地域での呼び方で、筑前やその周辺地域ではがめ煮と呼ばれています

ちなみに「がめ煮」の「がめ」は、「寄せ集める」を意味する博多方言の「がめくり込む」に由来し、様々な具材をがめくり込んだ煮物料理であることからの名といわれます。

また、豊臣秀吉が起こした文禄の役で、兵士が朝鮮にする際に博多へ立ち寄り、スッポンと野菜を煮込んだのが起源で、博多弁でスッポンを「どぶがめ」や「がめ」と呼ぶことから、がめ煮の「がめ」は「スッポン」の意味とする説もあります。

2.小さい

小さい

小さい」とは、容積・面積・身長・年齢・程度・価値などがわずかであることです。

小さいは、「ちひさし(小さし)」の口語です。
「ちひさし」は、「さ」と同様に小さいさまを表す「ち」の音からと考えられます。

3.ちんちんかもかも

ちんちんかもかも

ちんちんかもかも」とは、男女が仲睦まじいことです。ちんちんかも。ちんちん。ちんかも。

ちんちんかもかもの「ちんちん」は、「やきもち」や「嫉妬すること」を表す語で、嫉妬したくなるほど仲睦まじいさまのことです。

ちんちんが「やきもち」や「嫉妬」を意味するようになったのは、中部地方で湯が沸き立つ音や、そのような熱いものを言うように、熱いさまを表す「ちんちん」からです。

ちんちんかもかもの「かもかも」は、「かもかくも」や「とにかくも」「ともかくも」などと同じ意味の副詞で、「ちんちん」という繰り返しの言葉の調子に合わせ、後方に添えられたものと思われます。

江戸時代の小唄『ちんちん節』の歌詞では、「ちんちん」が千鳥の鳴き声を表し、歌詞全体で、男女が仲睦まじくしているさまを表していることから、ちんちんは千鳥の鳴き声とする説もあります。

しかし、この唄は嫉妬の「ちんちん」と、千鳥の鳴き声の「ちんちん」を掛けたものなので、これを語源とするのは誤りです。

また、ちんちんかもかもの「かもかも」は、仲が良いことを鴨肉の味のように良いものとたとえたもので、鳥のカモとする説もあります。

しかし、これは「いとこ同士は鴨の味」の由来です。
「ちんちんかもかも」の語源が「いとこ同士は鴨の味」にあると仮定しても、「鴨の味」を「かもかも」と言ったり、「ちんちん鴨の味」の使用例が見られないため疑問が残ります。

4.ちょっかい

ちょっかい

ちょっかい」とは、横合いから干渉すること、たわむれに異性を口説くこと(特に、男性が女性に言い寄ること)です。「ちょっかいを出す」「ちょっかいをかける」と用います。

本来、ちょっかいはネコが片方の前足で物を掻き寄せる動作を意味する語でした。
そのことから、ちょっかいの「ちょっ」は「ちょっと」の意味。「かい」は「掻き」の意味で、「ちょっ掻き」のイ音便化と考えられます。

ネコが物を掻き寄せる動きから、余計な手出しをすることを「ちょっかい」と言うようになり、口を出すなど側から干渉する意味に転じました。

さらに、異性に言い寄る意味でも、「ちょっかい」の語は使われるようになりました。

古くは、腕や手、特に手先を卑しめていう言葉として「ちょっかい」が用いられており、1603年の『日葡辞書』には「歪み曲がってちぢかんだ手」とあります。

5.朝三暮四(ちょうさんぼし)

朝三暮四

朝三暮四」とは、目先の違いにとらわれ、結果が同じになることに気がつかないこと、言葉たくみに人をだますことです。朝四暮三(ちょうしぼさん)。

朝三暮四は、中国の『列子(黄帝)』や『荘子(斉物論)』に見える故事に由来します。

中国の春秋時代、宋の国に狙公という猿好きの老人がいた。
猿が増えて家計が苦しくなったため、飼っている猿に与える餌を減らそうと考え、狙公は「これからはトチの実(どんぐり)を朝に三つ、暮れに四つやる」と言ったが、猿が「少ない」と怒ったため、「朝に四つ、暮れに三つやる」と言い直したところ、猿はとても喜んで承知した。

この故事から、結果は同じなのに表面的な利害にとらわれることや、そのようにしてだますことを「朝三暮四」や「朝四暮三」と言うようになりました。

派生的な用法ですが、中国では考えがころころ変わって定まらない意味でも「朝三暮四」が用いられます。

6.父(ちち)

父

」とは、親のうち、男の方(男親)、実父・継父・養父の総称です。

父は、上代に男子を敬っていった「ち」を重ねた語です。
「祖父」の「オホヂ」や「叔父・伯父」の「オヂ」など、男性の敬称の中でも男親に近い存在に「ち」が使われており、『古事記』にある「麻呂賀知(まろがち)」は「麻呂が父(私の父)」と解釈できることから、「ち」単独で「父」を表すこともあったと思われます。

「ちち」は母音交替によって「てて」となり、幼児語の「とと」にもなって、「ととさま」「とっつぁん」「とうさん」という語形にまで転じています。

男子の敬称「ち」の語源は、「ち(乳)」や「ち(血)」の意味など諸説あり、威力のある存在から心霊を称える「ち(霊)」の意味が有力とされていますが未詳です。

漢字の「父」は、「おの」+「又(手)」の会意文字で、手に石斧を持って打つ姿を示しています。

7.猪口才(ちょこざい)

猪口才

猪口才」とは、小生意気なこと、小賢しいこと、また、そのような人のことです。

猪口才の猪口は、「へなちょこ」を「埴猪口」と書くのと同じく当て字で、小さな杯の「お猪口」とは関係ありません。

「ちょこ」は「ちょこちょこ」「ちょこまか」など、目立たない小さな動作を表す「ちょこ」。
「ざい」は漢字で「才」と書く通り、「才能」の意味です。

つまり、猪口才は「ちょっとした才能」が原義で、そこから「利口ぶって生意気」という意味になり、小生意気な人や小賢しい人に対し「猪口才な」と言うようになりました。