民事裁判の費用はどのくらいかかるのか?松本人志さんの場合は?裁判費用は相手に請求できるのか?

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訴訟費用と弁護士費用

最近、吉本興業所属のお笑い芸人松本人志さんが、「性的行為を強要したり、性的行為をしたと訴える複数の女性からの告発記事」を掲載した「週刊文春」(発行元の株式会社文芸春秋と週刊文春の編集長)を相手取って、「名誉毀損に基づく5億5千万円の損害賠償請求と訂正記事による名誉回復を求める訴訟」を起こしたことが話題になっていますね。

私は個人的には松本人志さんは敗訴になる可能性が高いと思います。仮に勝訴しても満額は認められないと思います。「和解」になる可能性の方が高いのではないでしょうか?

余談ですが、トランプ前米大統領による性被害を主張する女性コラムニストが、トランプ氏を名誉毀損で訴えた二つ目の民事訴訟で、ニューヨーク連邦地裁の陪審は1月26日、同氏に8330万ドル(約123億円)の支払いを命じる評決を下しました。トランプ氏は同日、これを不服として、控訴する考えを明らかにしました。

 裁判はトランプ氏から1990年代半ばに性被害を受けたと主張するジーン・キャロルさんが、同氏にこれを否定され、名誉を傷つけられたとして起こしたものです。

 判事は既に名誉毀損があったとの判断を示し、トランプ氏が支払う賠償額が焦点でした。26日の最終弁論にはトランプ氏も出廷したものの、キャロルさん側の弁論が始まると退廷しました。原告側は当初、最低でも1000万ドルの支払いを要求していましたが、陪審は懲罰的な賠償金も含めて、トランプ氏に支払いを命じました。

ところで、民事裁判の費用にはどんなものがあって、どのくらいかかるのでしょうか?

ちなみに松本人志さんの民事裁判の費用がいくらになるかも気になりますね。

また民事裁判の費用は相手に請求できるのでしょうか?

今回はこれらのことについて、わかりやすくご紹介したいと思います。

1.民事裁判の裁判費用

訴訟費用

民事裁判でかかる費用は、大まかにいうと「訴訟費用」と「弁護士費用」です。

(1)訴訟費用

「訴訟費用」とは、裁判所に払う手数料や郵便切手の費用などです。弁護士に依頼せず、自分で訴訟を起こすときにも訴訟費用は発生します。

具体的には、以下のようなのもがあげられます。

  • 手数料
  • 郵便切手代
  • 裁判記録の謄写費用
  • 証人の交通費と日当

①手数料

「手数料」とは民事裁判を起こすときに裁判所に納める印紙代のことです。「収入印紙」を購入して、「訴状」に貼付することで納付できます。

印紙代の金額は法律で定められており、請求金額によって異なります。

手数料

ちなみに、5億5千万円の支払いを請求した松本人志さんの損害賠償請求訴訟の手数料は、167万円になります。

②郵便切手代

民事裁判を起こすときには「郵便切手」を用意して裁判所に提出しなければなりません。切手は裁判所が当事者へ資料を郵送するときに使われます。

内訳や金額は裁判所によって異なりますが、金額的にはおよそ5,000円~7,000円程度です。被告の数が増えると加算されていきます。

東京地方裁判所の場合、当事者(原告・被告) がそれぞれ1名の場合は6,000円かかります。当事者が1名増えるごとに2,388円が加算されます。

ちなみに、松本人志さんの損害賠償請求訴訟の郵便切手代8,388円になります。

③裁判記録の謄写費用

裁判が進むと、法廷で証人尋問や当事者尋問が行われ、裁判所で結果をまとめた尋問調書が作成されます。

尋問の結果を確かめるには、尋問調書を写し取らねばなりません。その手続が「謄写(とうしゃ)」です。

謄写には120円~50くらいの費用がかかります。謄写費用は、記録を写し取るときに裁判所へ支払います。

④証人の交通費と日当

裁判に証人を呼ぶと、基本的に「日当」を払わねばなりません。およそ1日1万円程度と考えておくとよいでしょう。

ただし、証人が放棄すれば、日当を支払わずに済みます。現実には放棄する証人が多いので、払わなくてよい可能性が高いようです。

(2)弁護士費用

「弁護士費用」とは、民事裁判を弁護士に相談・依頼したときに発生する費用です。依頼する弁護士ごとに金額に差があるので、一律ではありません。

弁護士費用は、いくつかの費目を合計したものになることが多いです。具体的には、以下のようなものとなります。

  • 法律相談料
  • 着手金
  • 成功報酬
  • 日当
  • 実費

①法律相談料

「法律相談料」は、弁護士に法律相談したときにかかる費用です。

法律相談料の金額は事務所によってさまざですが、30分5,000円~1万円程度としている事務所が多くなっています。

もっとも、無料相談を受け付けている事務所も少なくありません。

初回に限り無料、初回30分のみ無料、特定の事件(交通事故・債務整理等)なら無料など、無料の範囲にもいろいろあります。

②着手金

「着手金」は、弁護士に民事裁判など弁護活動を依頼した段階でかかる費用です。

着手金は最終的な結果に関わらず、弁護活動を行うために必要になります。たとえ民事裁判に負けても、着手金は基本的に返還されません

着手金の金額は事務所によってさまざまですが、一般的には以下のような分類が可能です。

  • 一律方式
    着手金10万円、15万円など一律となっている方式のこと
    請求金額がいくらであろうとも、かかる着手金額は同じになる
  • 請求金額に応じる方式
    請求金額によって着手金額も変わる方式のこと
    たとえば、以下ように着手金額が変わる

    • 〇百万円までは8.8%
    • 〇百万円~〇千万円までの部分は5.5%
    • 〇千万円~〇億円までの部分は3.3%
      など

ちなみに、5億5千万円の支払いを請求した松本人志さんの損害賠償請求訴訟の着手金は、3.3%と仮定すると1,815万円になると考えられます。

③成功報酬

「成功報酬」は、事件が解決したときにかかる費用です。解決結果に応じて金額が変わるので、当然、よい結果を得られると成功報酬も高額になります。

事務所によってパーセンテージは異なりますが、標準的に以下のようなケースが多いようです。

  • 〇百万円以下の場合は17.6%
  • 〇百万円を超え〇千万円以下の場合は11%+19万8千円
  • 〇千万円を超え〇億円以下の場合は6.6%+151万8千円
    など

松本人志さんの損害賠償請求訴訟の成功報酬は、仮に満額(5億5千万円)認められた場合は、上の計算式(6.6%)によると3,781万円になる見込みです。

ちなみに、民事裁判の成功報酬は、相手から支払われたお金から清算されるのが一般的です。

弁護士に民事裁判を依頼すると、相手からの支払金が弁護士の預かり金口座へ入金され、弁護士の成功報酬と清算して、その残額が弁護士から依頼者へ振り込まれる流れとなります。

④日当

「日当」は、弁護士が出張したときの手当です。遠方の裁判所で民事裁判を起こすときには、弁護士が1日や半日以上かけて裁判所に行かねばなりません。

そのため、弁護士が長時間拘束されることへの対価として日当が生じるのです。

日当の金額は事務所によってさまざまですが、1日出張の場合で数万円程度の日当金額になることもあれば、半日出張の場合には日当がかからない事務所もあります。

また、日当以外にも、裁判所へ向かうための交通費や宿泊費用が以下で説明する「実費」として発生することになります。

⑤実費

「実費」とは「実際に支払わねばならないお金」で、弁護士の懐に入るものではありません。

具体的には、すでに紹介している手数料や切手代などの訴訟費用、弁護士が訴訟活動を行う際に負担した交通費や宿泊費などになります。

実費については、着手金とは別に依頼の際に預かり金としてまとまった金額を弁護士に渡し、裁判終了後に清算したうえで、あまりがあれば返還されるのが一般的です。

そのため、着手金が不要な法律事務所であっても、依頼の際に実費としてある程度の金額を請求される可能性があります

2.民事裁判の裁判費用は相手に請求できるのか?

(1)訴訟費用

訴訟費用は、民事裁判を提起する際に原告が支払わなければなりませんが、必ずしも原告が全額負担するものではありません。相手に訴訟費用を請求することが可能です。

訴訟費用は、判決の際に裁判所により負担割合が決まります

民事裁判に負けた方が全額負担することもありますが、原告:被告=3:7のように費用負担の割合が裁判所に決められることもあります。基本的には、民事裁判に負けた方の負担割合が多くなります。

ただし、訴訟費用を請求したい場合は、民事裁判を提起する初期段階から主張しておく必要があります。

また、民事裁判が和解で終了した場合は、原告が訴訟費用を全額支払うことになります。

(2)弁護士費用

民事訴訟で必要になった弁護士費用は相手に請求できないのが原則です。

自分が依頼した弁護士には、自分で弁護士費用を支払う必要があります。言い換えると、民事裁判に負けたからといって、相手が依頼した弁護士の弁護士費用まで負担する必要はありません。

もっとも、交通事故のような不法行為が認められる場合では、弁護士費用の一部を請求できます。