日本語の語源には面白いものがたくさんあります。
前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。
以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。
1.村八分(むらはちぶ)
「村八分」とは、「仲間はずれにすること。村の掟や秩序を破った人や家族に対し、村民全部が申し合わせて絶交するもの」です。村はずし。
村八分は、江戸時代から行われた習慣です。
村八分の「八分」とは、十分ある交際のうち、葬式と火事の際の消火活動の二分以外は付き合わないという意味からで、のけ者にすることを「八分する」とも言いました。
十分のうちの八分は、「冠・婚礼・出産・病気・建築・水害・年忌・旅行」です。
村八分の語源には、上記のほか、払い除けて信用しない意味の「撥撫(はつむ)」が転じ、「八分」になったとする説もあります。
2.矛盾(むじゅん)
「矛盾」とは、「辻褄が合わないこと。筋道が通らないこと」です。
矛盾の出典は中国の『韓非子』で、以下の故事に基づきます。
その故事とは、楚の国に矛と盾を売り歩く商人がおり、矛を売る時には「この矛はとても鋭いので、どんな堅い盾でも突き通す」と言い、盾を売る時には「この盾はとても堅いので、どんな鋭い矛でも突き通せない」と言っていました。
それを聞いた客の一人に、「それでは、その矛でその盾を突いたら、どうなるんだ?」と聞かれ、返答に困ってしまったというものです。
この矛と盾の話から、前に言ったことと後に言ったことの辻褄が合わないことを「矛盾」と言うようになりました。
ただし、古く日本ではこのような解釈をしていなかったようで、1603年の『日葡辞書』では「矛盾に及ぶ」の意味を「武器を取って戦う」「激しく敵対する」としています。
矛盾の類語には「撞着」があり、この二語を合わせた四字熟語の「矛盾撞着」は矛盾を強めた表現となっています。
3.睦月(むつき)
「睦月」とは、「旧暦1月の異称」です。正月。
睦月の語源は、親類知人が互いに往来し仲睦まじくする月であることから、「睦まじい月」とする説が有力とされます。
その他、稲の実をはじめて水に浸す月で、「実月(むつき)」が転じたとする説。
元になる月で、「もとつき」が「むつき」に転じたとする説があります。
4.無理矢理/無理やり(むりやり)
「無理やり」とは、「筋が通らないことや、相手の嫌がることを強引にするさま」です。
無理やりの「無理」は、道理から外れていることを意味する漢語です。
「やり」を「矢理」と書くのは当て字で、本来は「遣る(やる)」の連用形「遣り(やり)」です。
「遣る」は、人を派遣したり物を送るといった意味でしたが、中世頃より、何か事をなす意味で使われるようになりました。
この「無理」と「遣り」が合成され、近世頃から「無理やり」と使われ始めました。