日本語の語源には面白いものがたくさんあります。
前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。
以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。
1.目鼻がつく/目鼻が付く(めはながつく)
「目鼻がつく」とは、「物事のおおよその見通しが立つこと」です。
肖像画を描いたり、人形を作ったりする際、顔の中心にある目や鼻をつけると全体が整い、完成後のイメージがわかるようになります。
そこから、大体の見通しがつくことを「目鼻がつく」と言うようになりました。
「明らかになる」の意味から、古くは「目鼻が明く(あく)」とも言いました。
2.目白(めじろ)
「メジロ」とは、「スズメ目メジロ科の小鳥」です。雑食で果実や昆虫を食べ、花蜜も吸います。
メジロは、目の周りが白いところからの命名です。
メジロ科の鳥は英名でも「White eye」といい、中国では目のふちが白いことから「繡眼鳥」と名付けています。
梅の木によく来る鶯色の小鳥なので、「ウグイス」(下の画像)と勘違いしている方もおられるかもしれません。
「目白」は夏の季語で、次のような俳句があります。
・一色に 目白囀(さえず)る 木の芽かな(浪化)
・陶工の 往き来の径や 眼白籠(高木良多)
・眼白飼ふや 父が集めし 棚人形(原月舟)
・凜として 雲の中から 目白かな(井上秋)
3.目撥/眼撥(めばち)
「メバチ」とは、「刺身や寿司だねにするスズキ目サバ科マグロ族の魚」です。メバチマグロ。バチ。メブト。ダルマ。
メバチは、目がパッチリと大きいことからの名です。
メバチの漢字「目撥(眼撥)」の「撥」には、「ひらく」の意味があります。
また、方言でまばたきすることを「めばち」と言う地方もあり、これを大きな目の魚に当てたという見方もあります。
「バチ」や「メブト」の異名は、メバチの語源と同じく目の大きさに由来し、「ダルマ」はずんぐりとした丸い体形からです。
4.めでたい
「めでたい」とは、「喜び祝うに値するさま。喜ばしいさま」です。
めでたいは、漢字で「目出度い」「芽出度い」と表記されますが、いずれも当て字で語源とは関係ありません。
めでたいの「めで」は、「賞賛する」といった意味の「めづ(愛づ)」の連用形です。
その「めで」に、程度の甚だしいさまを示す形容詞「いたし(甚し)」が付いた「めでいたし」の縮約形が「めでたい」です。
現代では「祝うに値するさま」「慶賀」の意味で用いますが、めでたいは「賞賛する以外にないほど素晴らしい」が原義で、元々は「素晴らしい」「立派だ」「見事だ」といった賞賛に値する状態を表す言葉として広く用いられました。
5.恵み(めぐみ)
「恵み」とは、「めぐむこと。恩恵。情けをかけること」です。いつくしみ。
恵みは、「いとおしい」「かわいい」を意味する形容詞「めぐし(愛し)」が動詞化した「めぐむ(恵む)」の名詞形です。
「めぐし」の「め」は「目」、「ぐし」は「心ぐし(心苦しい)」と同じく、「痛々しい」「切ない」の意味です。
「目に見て痛々しい」「気がかりである」というのが「めぐし」の本来の意味で、そこから「切ないほどかわいい」「いとおしい」の意味が派生しました。
恵み(恵む)は、「めぐし」の原義を含んだ言葉で、困っている人を哀れんで金品を与えることや、情けをかけることをいいます。
めぐみの漢字「恵」の上の部分は、糸巻きの輪をぶら下げたさまを表します。
それに「心」が付いた「恵」は、まるく相手を抱きこむ心を表しています。
6.目張/眼張(めばる)
「メバル」とは、「全長約30センチのカサゴ目フサカサゴ科の魚」です。海釣りの対象魚で美味。
メバルの特徴は、目と口が大きいことですが、名前は張り出した目に由来します。
メバルは棲む場所によって体色が異なり、浅海のものほど黒っぽく、深くなるにつれ赤くなります。
この体色によって、「赤メバル(ウスメバル)」「黒メバル」「金メバル」「白メバル」などと呼び分けられ、最も美味しいのは金メバル、次いで黒メバルが美味といわれます。
「メバル」は春の季語です。
7.目(め)
「目」とは、「物を見る働きをする器官。まなざし。目つき。視力」です。
目の語源は、「ミエ(見え)」の変化や「ミ(見)」に通じる語など、「見」の意味とする説が多く、妥当と思われます。
ただし、「め」よりも古く「まなこ」が使われていた可能性も高いため、「目」の意味で「ま」が使われ、変化して「め」になり、「ま」は複合語の中でのみ用いられるようになったとも考えられます。