猫は、平安時代の昔からペットとして飼われていました。清少納言の書いた『枕草子』の「上にさぶらふ御猫は」や、紫式部の書いた『源氏物語』の「若菜下の巻」にも登場します。
当時は猫の鳴き声は「ねうねう」、犬の鳴き声は「びよびよ」と表現していたそうです。
これについては「犬の鳴き声はびよびよ、猫の鳴き声はねうねうだった!?」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧下さい。
また世の中には、猫好きの「猫派」と犬好きの「犬派」がいます。
もちろん、どちらも嫌いという動物嫌いの方もおられるでしょうが、皆さんはいかがでしょうか?
これについては「あなたは猫が好きですか?猫にまつわる面白い話」という記事を書いていますので、ぜひご覧下さい。
このように古くから日本人に広く親しまれている猫なので、猫の付く言葉もたくさんあります。
そこで今回は、猫が付く熟語をご紹介したいと思います。
1.前に「猫」が付く熟語
・猫脚/猫足(ねこあし):テーブルや椅子などの家具の脚の下部を内側に向けて湾曲させたデザインのこと。
・猫板(ねこいた):長火鉢の端の部分に渡している引き板。猫が好んで乗るためこの名がついた。
・猫いらず(ねこいらず):黄リンを主成分とする殺鼠剤(さっそざい)の商標名。
・猫被り(ねこかぶり):本性を隠して、おとなしそうなふりをすること。また、知っていて知らないふりをすること。また、そういう人。ねこっかぶり。
・猫可愛がり(ねこかわいがり):猫を可愛がるように、甘やかして可愛がること。
・猫草(ねこぐさ/ねこくさ):ネコが好んで食す草の総称。飼い猫に食べさせるための草。また「オキナグサ(翁草)」(下の写真)の別名(全体が白毛におおわれていることから)。
・猫車(ねこぐるま):土砂や農作物などを運搬する一輪の手押し車。
・猫鮫(ねこざめ):ネコザメ目ネコザメ科の海水魚。
・猫舌(ねこじた):高温のものを飲食することが苦手とする偏食の形態。猫が熱い食べ物を食べようとしないことになぞらえたもの。
・猫じゃらし(ねこじゃらし):「エノコログサ」の俗称。イネ科の一年草。野原や道端に自生している。細長い互生の葉を持つ。夏から秋にかけ緑色で犬の尾に似た穂をつける。
・猫頭巾(ねこずきん):火事頭巾の一つ。紺木綿の刺し子。目だけが出るようにしたものもあります。
・猫背(ねこぜ):人間の背中が丸まって内側へ反り、頭部が前方に出た姿勢になる現象
・猫だまし/猫騙し(ねこだまし):相撲で、立ち合いなどに相手の眼前で両手を打ち、ひるませて自分優位の型に入る戦法。めくらまし。舞の海が得意とした戦法ですね。
・猫っ毛(ねこっけ):髪の毛が細い猫の毛のようになっている状態のこと。細くてコシやハリが少ない柔らかい髪質のこと。
・猫撫で声(ねこなでごえ):猫を撫でたときのような、優しく媚びを含んだ甘ったるい声。猫が人に撫でられたときに媚びるように出す優しい声から、相手の機嫌をとったり、媚びたりするときに出す声を「猫撫で声」と言います。
・猫の額(ねこのひたい)/猫額(びょうがく/ねこびたい):場所が狭いことのたとえ。
・猫の目:物事がめまぐるしく変わることのたとえ。
・猫の目草(ねこのめそう):ユキノシタ科ネコノメソウ属の多年草。
・猫萩(ねこはぎ):マメ科の多年草。地を這うように伸び、白に紫の斑紋を持つ花を付けます。全体に軟らかな毛を持っています。
・猫八(ねこはち):近世の物乞いのひとつ。猫・犬・鶏など鳥獣の鳴き声をまねて、金品をもらい歩いた者。物真似師の江戸家猫八(えどやねこはち)の芸名も、これに由来します。
下の写真は左が三代目江戸家猫八(1921年~2001年)、右が四代目江戸家猫八(1949年~2016年)。
・猫糞(ねこばば):《猫が、糞 (ふん) をしたあとを、砂をかけて隠すところから》悪いことを隠して素知らぬ顔をすること。また、拾得物などをこっそり自分のものとすること。
・猫又(ねこまた):想像上の怪獣。猫の目をもち、犬ほどの大きさで尾が二つに分かれ、よく化けて人に害を与えるといわれるもの。化け猫。
<佐脇嵩之『百怪図巻』より>
・猫跨ぎ(ねこまたぎ):猫でもまたいで通り過ぎる意から、不味(まず)い魚。
・猫飯(ねこまんま/ねこめし):猫に与える餌。また、猫に与える飯のように、米飯に鰹節や味噌汁などをかけた食事。
・猫目石(ねこめいし):英語でキャッツアイ(Cat’s Eye)と呼ばれる宝石の一種。金緑石(クリソベリル Chrysoberyl)の変種で、猫睛石(びょうせいせき)とも言います。
・猫柳(ねこやなぎ):ヤナギ科ヤナギ属の落葉低木。山間部の渓流から町中の小川まで、広く川辺に自生する、ヤナギの一種。柔らかい銀白色の毛に覆われた花穂がネコの尻尾を思わせることから、この名があります。
・猫額大(びょうがくだい):土地などの面積がきわめて狭いこと。
2.後に「猫」が付く熟語
・愛猫(あいびょう):可愛がっている猫。
・海猫(うみねこ):チドリ目カモメ科の海鳥。全長45㎝ほど。背と翼は青灰色で、その他は白色をしている。猫に似た鳴き声で鳴く。
・どら猫(どらねこ):飼い主がいない猫で、よその家の食べ物などを盗んでいる猫。
国民的アニメの主題歌「サザエさん」も、〈お魚くわえたどら猫…〉で始まりますね。
・泥棒猫(どろぼうねこ):盗み食いする猫。隠れて悪いことをする者。
・野良猫(のらねこ):人間の生活圏に生活するネコのうち、特定の飼い主が存在せず、屋外で生活する個体の総称。
・化け猫/化猫(ばけねこ):猫の妖怪。魔力を持ち、人に化けると言われる。
・熊猫(ぱんだ):ネコ目(食肉目)に属するジャイアントパンダ(クマ科)とレッサーパンダ(レッサーパンダ科)の2種の総称
・斑猫(はんみょう):コウチュウ目オサムシ科のハンミョウ科(Cicindelinae)に分類される昆虫の総称。
なお「ハンミョウとカミキリムシの話」という記事も書いていますので、ぜひご覧下さい。
・招き猫(まねきねこ):前足で人を招く猫の形の置物。
猫は農作物や蚕を食べるネズミを駆除するため、古くは養蚕の縁起物でもありましたが、養蚕が衰退してからは商売繁盛の縁起物とされています。
・山猫(やまねこ):ネコ目(食肉目)ネコ科に属す小型動物を指す便宜的な呼称。通常は野生(すなわち家畜化を経ない)のものを指す言葉。
3.「猫」が付く四字熟語
・窮鼠噛猫(きゅうそごうびょう):弱者でも追い詰められて必死になれば、予期していない力をだして、強者を倒すことがあるということのたとえ。
猫に追い詰められて、逃げることが出来なくなった鼠は猫に噛みつくという意味から。
「窮鼠(きゅうそ)猫を噛(か)む」とも読みます。
・照猫画虎(しょうびょうがこ):本質を理解せずに、見た目を真似すること。
虎の絵を描くために、見た目が似ている猫を手本にするという意味から。
「猫に照らして虎を画(えが)く」とも読みます。
・猫間障子(ねこましょうじ):下半分くらいにガラスがはまっていて、その上の障子が上げ下げできるもの。(本来は、猫が出入出来る小窓が付けられたもの。)
・猫鼠同眠(びょうそどうみん):悪事を働く人と、それを取り締まる人が示し合わせて事を運ぶこと。または、上の立場の人と、下の立場の人が共謀して悪事を働くこと。
「官製談合」がその典型的な例ですね。
「猫鼠同処(びょうそどうしょ)」も同様の意味です。