「一」から「万」の数字を含むことわざ・慣用句(その2)「二」

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心は二つ身は一つ

数字を含むことわざ・慣用句と言えば、「三人寄れば文殊の知恵」とか「三つ子の魂百まで」などたくさんあります。

前回は「人数・年齢・回数・年月や時間・距離・寸法」を表す数字を含むことわざ・慣用句を紹介しました。そこで今回は、その他の「一」から「万」までの数字を含むことわざ・慣用句をまとめてご紹介したいと思います。

なお面白い数字の単位についての話は、前に「数字の単位は摩訶不思議。数字の不思議なマジック・数字の大字も紹介!」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧下さい。

2.「二」を含むことわざ・慣用句

(1)心は二つ身は一つ(こころはふたつみはひとつ):一度に多くのことを望んでも、自分の体は一つしかないため思うようにはいかないこと。

(2)習慣は第二の天性なり(しゅうかんはだいにのてんせいなり):日常的に繰り返すことで身についた習慣は、生まれつきの性質とほとんど変わらなくなること。一度習慣となったものは、容易なことで変えられないこと。

習慣は第二の天性なり

古代ギリシャの哲学者であるディオゲネスの言葉からとする説と、古代ローマの政治家・哲学者であるキケロの『至善至高論』とする説があります。

英語では、Custom is a second nature.またはHabit is a second nature.

<類義語>

・習い性となる(ならいしょうとなる)

(3)天は二物を与えず(てんはにぶつをあたえず):天は一人の人間に、いくつもの長所や才能を与えてはくれないこと。

天は二物を与えず

天の神様は一人の人間だけに、いくつもの美点を与えることはしないから、よいところばかり揃った完璧な人間などいない。
異なる二つの天賦の才を持つことは有り得ず、人にはそれぞれに長所も短所もあるということ。

(4)二階から目薬(にかいからめぐすり):二階から階下の人に目薬をさすように、物事が思うようにいかず、もどかしいこと。また、回りくどくて効果が得られないことのたとえ。

二階から目薬

「天井から目薬」とも言います。いろはかるた(京都)の1枚です。

(5)二足の草鞋を履く(にそくのわらじをはく):両立しえないような二つの職業を同一人が兼ねること。特に、江戸時代、博徒が十手を預かり博徒を取り締まる捕吏を兼ねることを言いました。

現在では「会社員と作家の二足の草鞋を履く」など、両立が困難と思われるような職業を兼ねることにも言います。

二足の草鞋を履く

(6)二兎を追う者は一兎をも得ず(にとをおうものはいっとをもえず):同時に違った二つの事をしようとすれば、結局どちらも成功しないというたとえ。西洋のことわざ。

If you run after two hares, you will catch neither.
He that hunts two hares loses both.

二兎を追う者は一兎をも得ず

(7)二の足を踏む(にのあしをふむ):一歩目は進みながら、二歩目はためらって足踏みすること。決心がつかずためらうこと。尻込みすること。

「二の足」は、歩きだすときの二歩目という意味で、歩くときの一歩目は踏み出したが、二歩目はためらって足踏みすることから。思い切ることができずに、迷う気持ちを言います。

二の足を踏む

(8)二の句が継げない(にのくがつげない):次に言う言葉が出てこないこと。相手の言葉にあきれたり驚いたりして、次に言うべき言葉を失うこと。

二の句が継げない

(9)二の舞を演じる(にのまいをえんじる):前の人と同じ失敗をくり返すことのたとえ。

「二の舞」は、蔵面(ぞうめん)をつけて行う雅楽の曲名の一つ。
「安摩(あま)」の舞の次に演じられる舞で、咲面(えみめん)をつけた老爺と腫面(はれめん)をつけた老婆が、わざと失敗しながら安摩を演じる滑稽な舞のことに由来します。

なお、「二の舞を踏む」とも言います。

咲面と腫面

(10)人を呪わば穴二つ(ひとをのろわばあなふたつ):人に害を与えようとすれば、やがて自分も害を受けるようになるというたとえ。

他人を呪い殺せば、自分も相手の恨みの報いを受けて呪い殺され、相手と自分の分で墓穴が二つ必要になることから。

人を呪わば穴二つ

(11)武士に二言はない(ぶしににごんはない):武士は一度言ったことを取り消すようなことはしないこと。信義を重んじ約束を守る意。

武士に二言はない

「二言」とは、前に言ったことと違うことを言うこと。また、その言葉。
信義と面目を重んじる武士は、前言をひるがえすようなことをしないことから。
現代では、これを応用して「男に二言はない」という言い方が生まれ、更に発展させた「女に二言はない」という言い方もあります。

(12)瓜二つ(うりふたつ):縦に二つに割った瓜のように、親子・兄弟などの顔かたちがよく似ていることのたとえ。

瓜二つ

(13)ローマで二番となるより村で一番がよい(ローマでにばんとなるよりむらでいちばんがよい):大きな組織で二番になるより、小規模でも一番がよい。

英語のことわざ「Better be first in a village than second at Rome.」の訳。

ユリウス・カエサルがスペインの財務官として赴任する際、「都に出て二番目の地位につくくらいなら、故郷で一番のほうがよい」と従者にもらした言葉に由来すると言われます。

(14)世の中は二世は行かず(よのなかはふたよはゆかず):現世は二度と来ないこと。

なお、「二世」を「にせ」や「にせい」と読むのは誤りです。

(15)青二才(あおにさい):若く、未熟な男子。また、そのような人を罵って言ったり、自身を謙遜して言う言葉。

「青」は未熟の意、「二才」は出世魚のボラの稚魚のことで、まだ若いボラということから。

(16)値を二つにせず(あたいをふたつにせず):相手によって、値段を上げたり下げたりするような悪賢い商売はしないということ。

(17)命から二番目(いのちからにばんめ):命の次に大事なものの意で、非常に大切にしているもの。かけがいのないもの。

(18)旨い事は二度考えよ(うまいことはにどかんがえよ):うまい話には裏があったり危険が伴うことがあるので、すぐに飛びつかずにじっくり考えるのがよいという戒めの言葉。

(19)足して二で割る(たしてにでわる):両者の特徴や程度の間をとること。

(20)長者に二代なし(ちょうじゃににだいなし):ぜいたくに慣れた金持ちの子は、財産を守ったり増やしたりすることが出来ず、たいてい二代目でその家はつぶれてしまうということ。

(21)天に二日無し(てんににじつなし):天に太陽が二つないように、君主もただ一人だけで、二人存在してはならないということ。「二日」は、二つの太陽。

「天に二日無し、土に二王無し(てんににじつなし、どににおうなし)」「天に二つの日無し」とも言います。

(22)年寄りは二度目の子供(としよりはにどめのこども):老いるとわがままになったり、甘えたりするようになって子どものようになるということ。

「Old men are twice children.」を訳した言葉。

(23)二王立ち(におうだち):仁王像のようにしっかりと立つこと。
「仁王」は、寺院の山門の両脇におかれている金剛力士像。

普通は「仁王」と書きます。

(24)二階から尻炙る(にかいからしりあぶる):思うようにいかず、もどかしいことのたとえ。また、回りくどくて効果のないことのたとえ。

「二階から目薬」「天井から目薬」とも言います。

(25)二世の契り(にせのちぎり):現世だけでなく来世まで夫婦として連れ添おうという約束。「二世」は、現世と来世のこと。

(26)二世の契りを結ぶ(にせのちぎりをむすぶ):夫婦として末永く(来世まで)連れ添うことを約束すること。「二世」は、現世と来世のこと。

「二世を契る」「夫婦の契りを結ぶ」とも言います。

(27)二鼠藤を嚙む(にそふじをかむ):この世に生きる人間には刻々と死期が近づいていることのたとえ。

「二鼠」は日月(昼夜)の意。「藤」は生命の意。

(28)二進も三進も行かない(にっちもさっちもいかない):物事が行き詰まってどうにもならない様子。

「二進(にっち)」「三進(さっち)」は、そろばんの割り算から出た語で、計算のやりくりの意。

(29)二八の涙月(にっぱちのなみだづき):二月と八月は商売が低調で、苦しい月だということ。

(30)二度教えて一度叱れ(にどおしえていちどしかれ):子どもをしつける時の心得を示した言葉。

子どもの過ちや失敗は頭ごなしに怒らず、繰り返してよく教え諭し、それでも聞かない時にたまに叱るくらいがよいということ。

(31)二度聞いて一度物言え(にどきいていちどものいえ):人の言うことは何度聞き直してでもよく聞き、自分は口数を少なく余計なことを言わないほうがよいということ。

(32)二度目の見直し三度目の正直(にどめのみなおしさんどめのしょうじき):物事は一度目はあてにならず、二度目も見直すことがあり、三度目なら確実だということ。

(33)二の次にする(にのつぎにする):ある物事をそれほど重要ではないと判断して、後回しにすること。

「二の次」は、二番目の意。

(34)二の矢が継げない(にのやがつげない):次に打つべき手段がないことのたとえ。
「二の矢」は、二度目に射る矢。

二度目に射る矢がないとの意から。

(35)二八余りは人の瀬越し(にはちあまりはひとのせごし):十六歳頃は、人生を左右する大事な時期であるということ。

「二八」は十六歳、「瀬越し」は重大な時期のこと。

(36)二八月は船頭のあぐみ時(にはちがつはせんどうのあぐみどき):二月と八月は、海が荒れて舟が出せない日が多いので、船頭も困るということ。

(37)二番煎じ(にばんせんじ):同じことの繰り返しで、新鮮味や効果が感じられないことのたとえ。

一度煎じた茶や薬を再び煎じたもののことから。

(38)二枚舌を使う(にまいじたをつかう):矛盾したことを言うこと。また、嘘をつくこと。

(39)退けば長者が二人(のけばちょうじゃがふたり):相性のわるい者同士が一緒にいるより、お互いに独立したほうがうまくいくということ。

(40)二人口は過ごせるが一人口は過ごせぬ(ふたりぐちはすごせるがひとりぐちはすごせぬ):結婚して二人で暮らせば節約できることが多くなり、無駄が多くなりがちな一人暮らしよりも経済的であるということ。

「一人口は食えぬが二人口は食える(ひとりぐちはくえぬがふたりぐちはくえる)」とも言います。

(41)二つに一つ(ふたつにひとつ):二つの内の一方。または、二つのどちらかを選ばなければならない状態。

(42)二つ返事で(ふたつへんじで):間を置かずに快諾する様子。

(43)二つよいことはない(ふたつよいことはない):一方に都合のよいことは、もう一方には都合が悪く、どちらにもよいことはないということ。

(44)身二つになる(みふたつになる):妊娠している人が出産すること。子どもを産むこと。