「一」から「万」の数字を含むことわざ・慣用句(その5)「五」

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堪忍五両思案十両

数字を含むことわざ・慣用句と言えば、「三人寄れば文殊の知恵」とか「三つ子の魂百まで」などたくさんあります。

前回は「人数・年齢・回数・年月や時間・距離・寸法」を表す数字を含むことわざ・慣用句を紹介しました。そこで今回は、その他の「一」から「万」までの数字を含むことわざ・慣用句をまとめてご紹介したいと思います。

なお面白い数字の単位についての話は、前に「数字の単位は摩訶不思議。数字の不思議なマジック・数字の大字も紹介!」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧下さい。

5.「五」を含むことわざ・慣用句

(1)堪忍五両、思案十両(かんにんごりょう しあんじゅうりょう):世の中を生きていくためには、腹の立つことをじっと我慢し、よく考えて慎重に行動することが大切だということ。忍耐には五両、熟慮には十両の価値があるとの意から。

(2)御意見五両、堪忍十両(ごいけんごりょう かんにんじゅうりょう):他人の意見をよく聞いて何事にも耐えることが大事だというたとえ。
人の忠告は五両の値打ちがあり、辛いことや怒りを耐え忍ぶことは十両の値打ちがあるということ。

(3)堪忍五両、負けて三両(かんにんごりょう まけてさんりょう):我慢には大きな値打ちがあるということ。
堪忍には五両の価値があり、たとえ堪忍がやや足りなくても三両の価値があるとの意から。

(4)五臓六腑に沁みわたる(ごぞうろっぷにしみわたる):腹の底までしみる。身にしみて深く感じる。

五臓六腑とは、伝統中国医学(漢方)においていう五つの内臓と六つのはらわたのこと。
五臓は心臓、肝臓、肺臓、脾臓、腎臓。
六腑は大腸、小腸、胃、胆、膀胱、三焦。

六腑にある三焦は、上中下の三つに分かれ、上焦は横隔膜より上部、中焦は上腹部、下焦はへそより下部にあり、呼吸・消化・排泄をつかさどる器官と言われます

(5)五両で帯買うて三両で絎ける(ごりょうでおびこうてさんりょうでくける):肝心なものより、付随するものに予想以上にお金がかかるということ。

「絎ける」は、表から縫い目が見えないように縫うこと。五両で買った帯をさらに三両かけて絎けるということから。

(6)早起き三両、倹約五両(はやおきさんりょう、けんやくごりょう):早起きと倹約はどちらも大きな利益になるというたとえ。

「朝起き三両始末五両」とも言います。

(7)一升の餅に五升の取り粉(いっしょうのもちにごしょうのとりこ):主となるものより、それに付随するもののほうが多く必要であることのたとえ。

「取り粉」は、つきたての餅がねばりつかないようにつける粉。

一升の餅をつくためには五升の取り粉が必要になることから。

(8)江戸っ子は五月の鯉の吹き流し(えどっこはさつきのこいのふきながし):江戸っ子は口は悪いが気性はさっぱりとしていて、物事にこだわらないということ。

また、口先ばかり威勢がよくて意気地がないということ。

「吹き流し」は、鯉のぼりのことで、吹き抜けで腹の中が空洞になっていることから。「口先ばかりで腸(はらわた)なし」と続けても言います。

(9)五指に余る(ごしにあまる):めぼしいものや優れたものなどが五つ以上あることのたとえ。

(10)五指に入る(ごしにはいる):優れていることのたとえ。良いほうから数えて五番以内に入ることのたとえ。

「五本の指に入る」とも言います。

(11)五重の塔も下から組む(ごじゅうのとうもしたからくむ):物事はすべて順序よく進めていってこそ、成功するというたとえ。

(12)五斗米のために腰を折る(ごとべいのためにこしをおる):わずかな俸禄を得るために、人の機嫌をとってぺこぺこ頭を下げること。

中国唐の詩人陶淵明が、上役が視察に来るので礼服を着るよう求められた時、五斗米のために腰を折ってへつらうのは嫌だと言って断ったという故事から。
「五斗米」は五斗の米、転じてわずかな給料のこと。

(13)手酌五合、髱一升(てじゃくごごう、たぼいっしょう):手酌では五合しか飲めないが、若い女性の酌では一升でも飲んでしまうということ。

「髱」は日本髪の後ろに張り出している部分で、転じて、若い女性の意。

(14)夢は五臓の患い(ゆめはごぞうのわずらい):夢を見るのは五臓(肝臓・心臓・脾臓・肺臓・腎臓)が疲れているのが原因だということ。

「患い」は「煩い」とも書きます。また、「夢は五臓の疲れ」とも言います。