数字を含むことわざ・慣用句と言えば、「三人寄れば文殊の知恵」とか「三つ子の魂百まで」などたくさんあります。
前回は「人数・年齢・回数・年月や時間・距離・寸法」を表す数字を含むことわざ・慣用句を紹介しました。そこで今回は、その他の「一」から「万」までの数字を含むことわざ・慣用句をまとめてご紹介したいと思います。
なお面白い数字の単位についての話は、前に「数字の単位は摩訶不思議。数字の不思議なマジック・数字の大字も紹介!」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧下さい。
17.「八十」「八十八」「九十九」を含むことわざ・慣用句
(1)お前百までわしゃ九十九まで(おまえひゃくまでわしゃくじゅうくまで):夫婦が仲睦まじく、ともに長生きしたいという妻の願いを言った言葉。
「お前」とは夫のこと、「わしゃ」とは妻のこと。このあとに、「共に白髪の生えるまで」と続きます。
妻の方が一歳年下である理由としては、二つの説が挙げられています。ひとつは夫に先立たれるのは寂しいからというもの、もうひとつは妻よりも夫が一歳年上で夫と共に最期を迎えたいからというものです。
「お前百までわしゃ九十九まで」は、世阿弥(ぜあみ)の作品である能『高砂(たかさご)』の台詞の中に登場します。
『高砂』は、夫婦愛と長寿をテーマにした能ですが、その中でおじいさんが「お前百までわしゃ九十九まで(九十熊手のしゃれ)共に白髪が生えるまで長生きしよう」という内容でおばあさんに語りかけるシーンがあります。
これは、ことわざの「お前百までわしゃ九十九まで」とは逆で、夫から妻への言葉となっています。この理由は明らかになっていませんが、どちらの場合も「夫婦がともに仲良く長生きすること」を意味する部分では共通しています。
<類義語>
・鴛鴦の契り(えんおうのちぎり)
・比翼連理(ひよくれんり)
・連理の枝(れんりのえだ)
・天にあらば比翼の鳥、地にあらば連理の枝(てんにあらばひよくのとり、ちにあらばれんりのえだ)
・偕老同穴(かいろうどうけつ)
・琴瑟相和す(きんしつあいわす)
(2)八十の手習い(はちじゅうのてならい):年をとってから学問や稽古事を始めること。
「六十の手習い」とも言います。
(3)八十八夜の別れ霜(はちじゅうはちやのわかれじも):八十八夜を最後に、霜も降りなくなるということ。
「八十八夜」は、立春から数えて八十八日目に当たる五月二日頃。「別れ霜」は晩春の頃、最後に降りる霜のこと。