日本は戦後、敗戦に伴う「戦後賠償・戦後補償」の他に、中国も含む「発展途上国」に対する多額の「経済援助」を行ってきました。
しかし、これらの「戦後賠償・戦後補償」「経済援助」は、本当にそれらの国々の「経済的自立」のために正しく使われてきたのでしょうか?
大統領や政府高官の私腹を肥やしたり、利権企業に多額の資金が不正に流れていたということはないのでしょうか?中国は国家として、日本を凌駕し日本の脅威となるほど、「戦勝国」「発展途上国」という立場をしたたかに利用し、成功した数少ない国だと思います。
今回は、この問題について考えて見たいと思います。
1.「戦後賠償・戦後補償」
日本は、日本軍の占領によって損害を受けた国々に対して、現在の貨幣価値で35兆円以上に上る「戦後賠償・戦後補償」を行いました。
1951年9月8日に「サンフランシスコ講和条約」が締結された後、二国間交渉で「国家賠償・国家補償」を行いました。
「戦争犯罪」は敗戦国だけでなく、アメリカによる日本本土への無差別空襲や原爆投下、ソ連による日ソ不可条約違反の侵略・不法占拠やシベリア抑留など戦勝国にもあるのですが、「賠償責任」は敗戦国にだけ課せられ、戦勝国は不問に付されました。
中身は①「賠償」および「無償経済協力」(準賠償)、②戦後処理的性格の「贈与・借款」、③軍需工場など日本国内の資本設備を、かつて日本が支配した国に移転・譲渡する「中間賠償」、④戦前、日本政府や企業・個人が海外に持っていた「在外資産の諸外国への引き渡し」の四つからなっています。
たとえば、フィリピンへは賠償約1980億円・借款約900億円、インドネシアへは賠償約803億円・借款約1440億円を支払っています。
余談ですが、「戦後賠償・戦後補償」は、敗戦国の経済に与えるダメージは想像を絶するものです。日本は朝鮮戦争特需に助けられた面もありますが、国民が勤勉に働き高度経済成長を成し遂げて、きちんと戦後処理の責任も果たし、破滅することはありませんでした。
しかし、第一次世界大戦後のドイツにおいては、1919年のヴェルサイユ条約で課された莫大な賠償金は、疲弊したドイツの経済を更に悪化させ、それによる「ハイパーインフレ」でワイマール共和国は崩壊し、ナチスとヒトラーが台頭する大きな要因となりました。
2.発展途上国への「経済援助」
これには「二国間援助」と「多国間援助」があります。「二国間援助」は相手国を直接援助するものですが、「多国間援助」は国際機関に拠出することによって発展途上国を支援するものです。
2014年の日本の「二国間援助」は年間6400億円、「多国間援助」は年間3400億円のODA予算となっていました。
3.発展途上国への援助の問題点
「国境なき医師団」による個人の支援を呼び掛ける「5秒に1人。今また小さな命が消える。」というインパクトの強い広告があります。その後に「ご存知ですか。栄養失調や、それに伴う免疫力の低下、感染症などで亡くなる5歳未満の子供たちは、毎年350万人から500万人もいることを。その数は5秒に1人、1日にすると約1万4000人にもなります。」
私は、この広告を見て、「その国の政治家は一体何をしているのか?」という疑問を持ちました。
「国境なき医師団」は、純粋に慈善活動としてやっているのかも知れませんが、過去に日本をはじめとする先進国から莫大な経済援助を受けておきながら、いまだにそのような状態というのはどういうことか?という怒りに似た気持ちです。
これには、次のような問題点があるように思います。
(1)汚職の蔓延
(2)内戦
(3)民族・宗教対立
(4)不十分な学校教育
(5)劣悪な公衆衛生
(6)援助への過度の依存体質
特に「汚職」と、「援助への過度の依存体質」を改めなければ、「穴の開いたバケツ」に水をいれているようなもので、いつまで経っても同じことの繰り返しで進歩はないように私は思います。
発展途上国の政治家は、援助金によって私腹を肥やすのではなく、自分の国の発展をもっと真面目に真剣に考えるべきだと思います。「内戦」や「民族・宗教対立」などしている場合ではないはずです。「他力本願」でなく「自力」で出来ることを一つずつ実行して行くべきです。
そして日本をはじめとする先進諸国は、従来のような過度な援助を継続するのはやめて、発展途上国が自力で発展できるように距離を置いて見守るべき時期に来ていると思います。子供と同じで「過保護」にするとろくなことはありません。
自国の国民の生命と安全を守るのは、政治家の最も基本的な責任ではないでしょうか?