日本で100歳以上の人が今年8万人を超え、「人生100年時代」がいよいよ現実のものとなっています。私も71歳になり、これからの残りの人生をどう生きるか、あれこれと考えるようになりました。
そんな時に書店で「スマート・エイジング 人生100年時代を生き抜く10の秘訣」という本を見つけました。東北大学特任教授の村田裕之氏が書かれた本です。
私はこの「スマート・エイジング」という言葉を新鮮に感じるとともに、内容にも共感を覚えましたのでご紹介したいと思います。
なお勘違いしている人が多いので最初に説明しておきますが、「スマート(smart )」という英語に「細身(スリム)」という意味はなく、「賢い、頭が良い」というのが正しい意味です。ですからこの「スマート・エイジング」も「ダイエット」や「痩せる」という意味ではありません。
1.「スマート・エイジング」とは
(1)経年変化に賢く対処し、個人・社会が知的に成熟
「スマート・エイジング」とは、「エイジングによる経年変化に賢く対処し、個人・社会が知的に成熟すること」です。これは東北大学が2006年から提唱している少子化・超高齢社会における新しい概念です。
スマート・エイジングとは、「個人は時間の経過とともに、たとえ高齢期になっても人間として成長でき、より賢くなれること、社会はより賢明で持続的な構造に進化すること」を意味します。
以前はエイジングは「老化」「退化」というネガティブなマイナスイメージがあり、老化に無理に逆らって「若い頃の自分に戻る、老化を食い止める」という「アンチ・エイジング」の動きが多かったように思います。
私などはブログを書いてボケ防止をしながら「健康寿命」を極力延ばして「ピンピンコロリ」と行けたらよいと漠然と考えていました。
(2)「時分の花」を振り返らず「まことの花」を咲かせる
「秘すれば花」という言葉で有名な「風姿花伝」を著した能楽師・世阿弥(1363年~1443年)の言葉で言えば、散ってしまった「時分の花」を振り返る後ろ向きの生き方ではなく、積極的に「まことの花」を咲かせようとする前向きな人生のあり方がスマート・エイジングです。
私たちが「まことの花」を咲かせることは、年齢を重ねるにつれて物事の見方が深まり、視野が広がることで人生が豊かになって行くことを意味します。
スマート・エイジングの思想では、高齢期を「知的に成熟する人生の発展期」として積極的に受容します。世阿弥よりも、より積極的な高齢者観です。高齢者を社会的弱者とみなす従来の考え方の「パラダイムシフト」(革命的・劇的な大転換)とも言えます。
私は古代インドの「四住期」という考え方にも魅力を感じており、70代以降は「林住期」(老年を迎えて森や林に入り住んで静かに、人間とは何か、人生とは何かを考える時期)を経て「遊行期」(一切のしがらみから離れられる一番自由な時期で、一度きりの人生をしがらみや執着から離れて好きなことをやってよい時期)に入ります。
しかしスマート・エイジングの考え方は、「四住期」よりも知的でアクティブなものです。
これとは違いますが、帚木蓬生氏の提言する「老活(ろうかつ/おいかつ)」もアクティブな活動を勧めています。また「アクティブ・シニア」の考え方にも通じるものがあります。
余談ですが、最近は中高年もほとんどがスマホを持ってインターネットやYouTube動画を楽しんでいますが、長時間見過ぎると「大脳の前頭前野(ぜんとうぜんや)の活動が抑制」されます。
これはテレビを見過ぎる時にも起こる弊害で、かつて評論家の大宅壮一が「テレビは一億総白痴化を招く」と言ったのも、このことを指していたようです。
彼は、「テレビというメディアは非常に低俗なものであり、テレビばかり見ていると人間の想像力や思考力を低下させてしまい、一億総白痴化を招く」と痛烈に批判しました。
2.「スマート・エイジング」の10の秘訣
(1)有酸素運動をする
・要介護になる原因の上位は何か?
・日常生活に運動を取り入れるのが秘訣など
(2)筋トレをする
・中高年にとっての筋トレの4つの効用
・続けやすい筋トレプログラムを活用するなど
(3)脳トレをする
・歳を取ると涙もろくなるのは感受性が強まったせい?
・なぜ、キレる高齢者が増えているのか?など
(4)年齢相応の食事をする
・中年期と高齢期では摂るべき栄養が変わる
・「昭和50年頃の食事」は何がよいのか?など
(5)達成すると嬉しい目標を立てる
・日常生活において脳内のドーパミンを増やすには?
・具体的な日時で嬉しい近未来の予定を組むなど
(6)リズミカルに活動する
・生体リズムに関係するセロトニン
・日常生活で脳内のセロトニンを増やすには?など
(7)不眠の原因を取り除く
・睡眠障害にはどのような種類があるのか?
・なぜ、中年期以降に睡眠障害の人が増えるのか?
(8)お金を稼げるために「自分軸」で生きる
・社会制度が変わっても生涯お金を稼げる力を持つ
・なぜ「自分軸」で生きるとお金を稼げるのかなど
(9)他人(ひと)の役に立つことをする
・なぜ、高齢になると他人の役に立ちたくなるのか?
・他人から感謝されるとき、幸福を感じるなど
(10)好きなことに徹底的に取り組む
・自分らしさを他者が認識するには「情熱」が必要
・好きなことに夢中なときが一番輝いて見えるなど
スマート・エイジング 人生100年時代を生き抜く10の秘訣 [ 村田裕之 ]