TBSのテレビドラマで大人気となった「半沢直樹シリーズ」の原作者である元銀行員の小説家池井戸潤氏(1963年~ )が書いた「アルルカンと道化師」(2020/9/17出版、講談社)が人気となっています。
これは「半沢直樹シリーズ」第5作目で、時系列的にはシリーズ第1作の「オレたちバブル入行組」の前日譚です。
ところで、皆さんは「アルルカン」とは何かご存知でしょうか?道化師との違いは何でしょうか?
今回はこれらについてわかりやすくご紹介したいと思います。
1.アルルカン
(1)小説の中のアルルカン
「アルルカンと道化師」という小説の中では、「不審な美術出版社の買収話の秘密を、今は亡きモダンアート界の寵児仁科譲の代表的なモチーフ『アルルカンと道化師』が握っていた」というミステリータッチの話ですが、今回は一般的な名称としてのアルルカンについてご紹介します。
(2)アルルカンとは
「アルルカン(arlequin)」とは、「コメディア・デラルテ」の下男役「アルレッキーノ(Arlecchino)」のフランス名です。
ちなみに「コメディア・デラルテ」とは、「16世紀から17世紀にかけてイタリアで興った職業俳優による仮面劇の即興喜劇」です。古代ローマからの田舎芝居が原形とも言われています。
「アルルカン」は、派手な菱形模様のタイツ姿で、小さな仮面(マスケラ、maschera)をかぶります。
なお「アルルカン(arlequin)」は英語では「ハーレクイン(Harlequin)」で、「マスケラ(maschera)」は英語では「マスカレード(masquerade)」(仮装、仮面舞踏会)です。
(3)ヴィジュアル系ロックバンド・アルルカン(ARlequin)
2013年に結成された「次世代名古屋系」をバンドコンセプトとする「アルルカン」というロックバンドがあります。これも本来のアルルカンに由来するバンド名で、「周囲と違う音楽」「毒々しさ」というイメージを持つために付けられたそうです。
(4)怪人ハーレイ・クイン
アメリカン・コミックスに登場する怪人(スーパーヴィラン)の「ハーレイ・クイン(Harley Quinn)」も「アルルカン(ハーレクイン)」に由来する名前です。
アニメ「バットマン」の「ジョーカーの陰謀」で、宮廷道化師のコスチューム身を包んだジョーカーのパートナーとして登場しました。
(5)ハーレクインロマンス・ハーレクインコミックス
これも「「アルルカン(ハーレクイン)」に由来する名前です。
ハーレクイン・エンタープライズ社(Harlequin Enterprises Limited)はカナダ・トロント市に本社を置く出版社です。
社のロゴやハーレクインロマンスレーベルの書籍にはピエロの衣装によく使われる菱形があしらわれています。「ハーレクインロマンス」は女性向けの通俗恋愛小説の代名詞のようになっています。
2.アルルカンと道化師(ピエロ)との違い
「アルルカン」のもとになった「アルレッキーノ」は、人を騙したりするのが得意なペテン師です。「アルレッキーノ」は登場する時必ず黒っぽい仮面をかぶって顔を隠しており、偶像的な印象を与えます。そして菱形の、鮮やかな色遣いのまだら模様の服を着ています。
「アルルカン」と「ピエロ」は日本語にすると「道化役」ということで似ていますが、実は全く違うものです。
「アルルカン」は、ずる賢く、貪欲で、食い意地が張っており、物語を引っ掻き回すキャラクターです。必ず仮面をつけ、派手な衣装を着ています。
これに対して「道化師(ピエロ)」は、「ペドロリーノ(Pedrolino)」という名前で登場し、とにかく「いじられキャラの役回り」です。
ずるくても賢さのある「アルルカン」とは全く違った役どころで、観客をとにかく笑わせます。もちろん衣装も違い、フランス語にすると「ピエロ(Pierrot)」となりました。
3.アルルカンを題材にした絵画
スペイン出身のパブロ・ピカソ(1881年~1973年)がアルルカンを題材にした絵画をたくさん描いています。
ほかにもフランスのフォーヴィスム(野獣派)の画家アンドレ・ドラン(1880年~1954年)が「アルルカンとピエロ」を描いています。
冒頭の画像は、フランスのロココ時代の画家アントワーヌ・ヴァトー(1684年~1721年)の「アルルカンとピエロ」を描いた絵画です。アルルカンが右から2人目で、ピエロは右端です。下の画像はピエロの元となった夢想家ペドロリーノ(Pedrolino)を描いた絵画です。