「回文(かいぶん)」という言葉遊びをご紹介します

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回文

皆さんは「回文」というのをお聞きになったことがあるでしょう。

有名な「竹藪焼けた(たけやぶやけた)」のように、上から読んでも、下から読んでも同じ文章になるものです。海苔のCMでおなじみの「山本山(やまもとやま)は、「漢字で上から読んでも、下から読んでも同じ」だけなので、回文ではありません。

これは「言葉遊び」の一種で、英語では「パリンドローム」(palindrome)と言います。

1.面白い回文の例

・老後依然人生行路(ろうごいぜんじんせいこうろ)

・海水浴良い西瓜(かいすいよくよいすいか)

・良き仲儚き世(よきなかはかなきよ)

・田舎暮らし楽がない(いなかぐらしらくがない)

・白熊鼻は真黒し(しろくまはなはまくろし)

・捨てたら腹立てず(すてたらはらたてず)

2.回文俳句・川柳

・今朝たんと 飲めや「あやめ」の 富田酒(けさたんと のめやあやめの とんたさけ)

これは松尾芭蕉の弟子の宝井其角(1661年~1707年)の俳句です。「あやめ」というのは江戸時代に富田地区(現在の高槻市)で最も大きな酒蔵「紅屋」で作られていた酒の銘柄です。

・はかなの世 しばしよしばし 世の中は(はかなのよ しばしよしばし よのなかは)

・キツツキの 飛ぶや小藪と 軒続き(きつつきの とぶやこやぶと のきつつき)

・中が回文 全編全部 いかがかな(なかがかいぶん ぜんぺんぜんぶ いかがかな)

・阪神は だめだよだめだ 阪神は(はんしんは だめだよだめだ はんしんは)

・新年だ 今朝のこの酒 断念し(しんねんだ けさのこのさけ だんねんし)

・四季今や 草花は咲く 山行きし(しきいまや くさはなはさく やまいきし)

・このニキビこの娘どこの娘ビキニの娘(このにきび このこどこのこ びきにのこ)

・弾きし琵琶 虫の音の沁む わびしき日(ひきしびわ むしのねのしむ わびしきひ)

・今花見 桜開くさ 皆は舞い(いまはなみ さくらひらくさ みなはまい)

3.回文和歌

・長き夜の 遠の睡りの 皆目醒め 波乗り船の 音の良きかな(ながきよの とおのねふりの みなめざめ なみのりふねの おとのよきかな)

・むら草に 草の名はもし 備はらは なそしも花の 咲くに咲くらむ(むらくさに くさのなはもし そなはらは なそしもはなの さくにさくらむ)

・惜しめとも ついにいつもと 行春は 悔ゆともついに いつもとめしを(をしめとも ついにいつもと ゆくはるは くゆともついに いつもとめしを)

・白波の 高き音すら 長浜は 必ず遠き 潟のみならし(しらなみの たかきおとすら ながはまは かならずとおき かたのみならし)

4.回文の歴史と外国の例

(1)最古の回文

最も古い回文は、西暦79年にヴェスヴィオ火山の噴火によって滅亡したヘルクラネウムの街の遺跡で見つかった「Sator Arepo Tenet Opera Rotas」です。意味は「農夫のアレポ氏は馬鋤きを曳いて仕事をする」という文章です。

(2)英語の回文の例

「Madam, I’m Adam」(マダム、私はアダムです)

(3)音楽の回文の例

①J・S・バッハの「蟹行カノン」(かいこうかのん)

J・S・バッハの「音楽の捧げもの」の3曲目には、音符を前から読んだものと後ろから読んだものとを同時に演奏する「蟹行カノン」(Crab Canon)があります。

この「蟹行カノン」には次のような秘密があります

・前からは、もちろん楽譜通り普通に演奏できる

・楽譜の後ろから演奏しても、音楽が完璧に成り立つ

・楽譜の前後双方向から一度に演奏すると、更に素晴らしいハーモニーが生まれる

・楽譜自体が「メビウスの輪(*)」(メビウスの帯)になっている

(*)帯状の長方形の片方の端を180°ひねり、他方の端に貼り合わせた形状の図形。表裏の区別ができない連続面となる図形

メビウスの輪・メビウスの帯

ちなみに「メビウスの輪(メビウスの帯)」の名前は、ドイツの数学者アウグスト・フェルディナント・メビウス(1790年~1868年)の名に由来します。彼は多面体の幾何学に関するパリのアカデミーの懸賞問題に取り組む過程でメビウスの帯の概念に到達し、1865年に「多面体の体積の決定について」という論文の中で発表しました。実際にメビウスの帯を発見したのは1858年のこととされ、未発表のノートに「メビウスの輪(メビウスの帯)」のことが書かれています。

②、ハイドンの「パリンドローム」

また、ハイドンの交響曲第47番「パリンドローム」の第3楽章は、逆から読んでも同じ楽譜になります。

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