1.河童とはどんな妖怪?
「河童」は日本の妖怪・伝説上の動物、または未確認動物です。「河太郎」とも言います。ほぼ日本全国で伝承されています。
外見は子供のような体格で、全身が緑色または赤色で、頭頂部に皿があるのが普通です。皿は円形で毛が生えておらず、いつも水で濡れており、皿が割れたり乾いたりすると力を失うか死ぬと言われています。
口は短い嘴(くちばし)で、背中に亀のような甲羅を背負い、手足には水掻きがあります。
2.柳田国男と遠野物語
柳田国男(やなぎたくにお)(1875年~1962年)は、「日本民俗学の父」と呼ばれ、民俗学者として有名ですが、農商務省の官僚でもありました。
彼が1910年に発表した説話集「遠野物語」には、河童をはじめ天狗・座敷童子(ざしきわらし)・神隠し・山人などの説話・民話が数多く収録されています。これは、岩手県遠野市出身の佐々木喜善(鏡石)氏が収録した遠野近辺の民話を集大成したものです。
内容的には、「遠野の河童は顔が赤い」「馬に悪戯をした河童が詫び証文を書いた」など面白いもので、河童研究の基礎文献の一つとなっています。
彼は東大法学部政治学科で農政学を学び、卒業後農商務省に入りました。彼が民俗学者となったきっかけは、農商務省の官僚時代に、東北地方の農村の実態を調査・研究するようになったことです。
彼は東北地方の農村の実情に触れるうちに、次第に民俗的なものへの関心を深めて行きました。また、当時欧米で流行していた「スピリチュアリズム」(心霊主義)の影響を受け、日本でも起こっていた「怪談ブーム」の中で、当時新進作家だった佐々木喜善と知り合い、「遠野物語」を執筆するに至ったわけです。
3.河童の正体とは?
河童は「妖怪」や「未確認生物」ではなく、正体は次のようなものだったようです。
醜い河童の子を産んだという女性の話は、近親婚や近親相姦によって生まれた奇形児をごまかすために、「河童」が使われたようです。
また、貧しい農家の人が「口減らし」のために子供を「間引き」し、子供の遺体を河原に寝かせたのを「河童」と表現したこともあるようです。
「池や川に近付くと、河童に足を引っ張られて溺れる」という話は、子供が危険な池や川に近付かないようにするため、つまり子供の安全確保のための「大人の脅し文句」だったのでしょう。