1.「松に鶴」とは
日本の伝統的な「お目出度い取り合わせ」や「お目出度い図柄・絵柄」に、「松に鶴」があります。
縁起物である常緑樹の「松」と、「鶴は千年、亀は万年」(*)などと長寿のたとえにも使われる鳥の「鶴」の組み合わせは、この上なく目出度いものです。
(*)「鶴は千年、亀は万年」と言いますが、実際の鶴の寿命はタンチョウで20~30年、亀の寿命はゾウガメで100~200年といわれています。
「笑福亭松鶴(しょうふくていしょかく)」という落語家の名前にもなっているほか、「加賀友禅の柄」(上の画像)や、「狩野永徳の屏風絵」(花鳥図)や「葛飾北斎の掛け軸」(雪松に鶴)などにも描かれており、「花札」の絵柄(松に鶴)にもあります。
2.「松に鶴」の由来と意味
これは「縁起のよいものの組み合わせ」です。つまり鶴が松の木にたたずむ姿を描いた図柄の「松に鶴」は「松鶴長春(しょうかくちょうしゅん)」で、夫婦の長春、不老を祝う中国の吉祥図案です。
松は常に緑を保ち、「神様を待つ木」とされています。「神様、どうぞ松に宿って下さい。お守りください」ということです。
古代中国で、鶴は「第一の位の鳥」で「一品鳥(いっぽんちょう)」と呼ばれていました。
さらに鶴は長生きで、夫婦仲が大変良く一生連れ添うことから「夫婦鶴(めおとつる)」と言われて「仲良きことの象徴」です。
また鳴き声が共鳴して遠方まで届くことから、天に届く、天上界に通ずる鳥と言われます。
3.「松に鶴」は、実はコウノトリを鶴と見誤ったもの!?
鶴が松の木に止まっている絵がよく描かれますが、鶴は湿原や湖沼、平地などに生息しそこで巣作りをする鳥で、木の上に巣を作ることはなく、したがって木に止まることはありません。
実は鶴の足の指は4本あるのですが、後ろにある1本の指が短くて、枝をつかむことができず、松の木の枝に止まれないのです。
一方、コウノトリは松などの高い木を好み、足の指も後ろ指が長くなっており、ちゃんと木の枝をつかめるようになっています。実際、昔の日本では松の木に止まるコウノトリがよく見られたそうです。
一説には、「コウノトリを鶴と見誤ったもの」とも言われていますが、上にも述べたようにあくまでも「縁起のよいものを組み合わせただけ」で、必ずしも木の上など高い所に巣を作るコウノトリを鶴と勘違いしたというわけではないと思います。
4.鶴とコウノトリの生態の違い
タンチョウ(丹頂)に代表される鶴と、コウノトリは遠くから見ると似ていますが、よく見るとかなり違いますね。
鶴はツル綱ツル科ツル目ツル属の鳥で、コウノトリはコウノトリ綱コウノトリ科コウノトリ目コウノトリ属の鳥で全く別の種類です。
鶴もコウノトリもどちらも湿原や湖沼、平地などに生息する鳥です。しかしコウノトリが高い木の上や屋根の上、煙突の上などに巣を作るのに対し、鶴は湿原や浅瀬に草や木の枝を積み上げた巣を作ります。
「豊岡市のホームページ」には、鶴とコウノトリの違いが次のように紹介されています。