「食虫植物」とは?なぜ虫を食べるようになったのか?驚くべき植物の生存戦略

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ハエトリグサ

皆さんは「食物連鎖」をご存知でしょう。「植物」は「草食動物」に食われ、「草食動物」は「肉食動物」に食われ、「肉食動物」はさらに「上位の肉食動物」(大型の肉食動物や人間)に食われるというのが一般的なパターンですね。

しかし、植物の中には逆に、「昆虫を食べる植物」つまり「食虫植物」が存在します。

この「食虫植物」は今、ネット通販やホームセンターの園芸コーナー、花屋さんで大人気だそうです。

なぜ「食虫植物」は虫を食べるようになったのでしょうか?また、どんな植物が「食虫植物」になったのでしょうか?そこには驚くべき「植物の生存戦略」が隠されています。

そこで今回は「食虫植物」についてわかりやすくご紹介したいと思います。

1.食虫植物

(1)「食虫植物」とは

「食虫植物」とは、「食虫という習性を持っている被子植物門に属する植物の総称」です。「食肉植物」「肉食植物」と言われる場合もあります。

現在、12科19属約600種の食虫植物が存在すると考えられています。中でも、「タヌキモ属」「モウセンゴケ属」「ウツボカズラ属」「ムシトリスミレ属」に特に多いです。

「食虫植物」は、「虫を食べる植物」ではありますが、虫だけを食べてエネルギーを得ているのではなく、基本的には「光合成」能力があり、自ら栄養分を合成して生育する能力があります。

(2)「食虫習性」を持つに至った理由

なぜ虫を食べるという「食虫習性」がついたのかというと、これらの植物の自生地の多くは、湿った荒野や湿原で、土壌中の窒素・リン・ミネラルなどの栄養素が不足がちな土地であるためです。これは一種の「植物のしたたかな生存戦略」と言えます。

「食虫植物」は、「光合成」によって独立栄養で生活する「緑色植物」でありながら、葉などを変形させて飛来する昆虫などの小動物を捕食することで栄養分を補い、成長と繁殖に役立てるという生活様式を獲得したものです。

(3)「捕虫方式」の種類

①落とし穴式:ウツボカズラ科、サラセニア科など

②粘着式:モウセンゴケ科モウセンゴケ属、タヌキモ科ムシトリスミレ属など

③挟み罠(はさみわな)式:モウセンゴケ科ハエトリグサ属、ムジナモ属(葉で挟んで虫を捕らえる)

④袋罠(袋罠)式:タヌキモ科タヌキモ属(水中で袋の中に虫を吸い込む)

2.食虫植物の具体例

(1)ハエトリグサ

ハエトリグサハエトリグサ捕虫

「ハエトリグサ」(蠅捕草)は、北アメリカ原産の食虫植物です。別名「ハエトリソウ」「ハエジゴク」です。

葉を素早く閉じて獲物のハエを捕食する姿が特徴的で、「ウツボカズラ」と並ぶ有名な食虫植物です。

英語名の「Venus Flytrap」(女神のハエ捕り罠)は、2枚の葉の縁の「トゲ」を女神の睫毛(まつげ)に見立てたことに由来します。

(2)ウツボカズラ

ウツボカズラウツボカズラ捕虫

「ウツボカズラ」(靭葛)は、熱帯アジアからオーストラリア北部に広く分布するウツボカズラ属の植物の総称です。

丸く膨らんだ捕虫袋と漏斗(ろうと)型の捕虫袋があります。

(3)ムシトリスミレ

ムシトリスミレピンギキュラ・ムシトリスミレ

「ムシトリスミレ」(虫取菫)はスミレに似た花をつけるタヌキモ科ムシトリスミレ属の食虫植物です。

寒地性・暖地性・熱帯高山性の3つのタイプがあります。

(4)モウセンゴケ

モウセンゴケモウセンゴケ捕虫

「モウセンゴケ」(毛氈苔)は、モウセンゴケ科モウセンゴケ属の食虫植物です。

葉の表面にびっしりと生えた毛から粘液を出し、その粘液の粒ひとつひとつが光に反射して輝くとても美しい植物です。しかしその美しさを形作る粘液は、虫を捕まえるための罠です。

3.「食物連鎖」と「食虫植物」との関係

食物連鎖

(1)「食物連鎖」とは

食物連鎖(しょくもつれんさ)」(Food chain)とは、「自然界における全ての生物が、互いに食う・食われるの関係で鎖状につながっていること」です。

北極圏のツンドラでは、シロクマ→キョクチギツネ→ライチョウ→トナカイゴケという食物連鎖が成立しています。

初めて「食物連鎖図」を描いたのはアメリカの生態学者シェルフォード(1877年~1968年)で、1913年のことです。その後1927年にイギリスの生態学者エルトン(1900年~1991年)が、この分析を動物群集研究の基礎に置いてから、広く調べられるようになりました。

なお、「食物連鎖」には、生きた植物から始まって動物へと連なる「生食連鎖」と、枯死植物など→トビムシ類→クモ類→・・・のように生物遺体から始まる「腐食連鎖」の二つの基本型があります。

(2)「食物連鎖」と「食虫植物」との関係

「食虫植物」は、一見「食物連鎖に逆行している」ようですが、「窮鼠猫を嚙む」ような状態でもなければ、上の例で言えば「シロクマがキョクチギツネに食われる」ような「下剋上」になったわけでもありません。

「食虫植物」は、元々は普通の植物から始まり、「進化」の過程で食物連鎖の下層階に追いやられた植物たちです。栄養の少ない土地に追われて、仕方なく動物から栄養を得るような仕組みになった強い適応力を持った植物です。

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