我々が何気なく「お茶請け(おちゃうけ)」に食べている米菓には、「せんべい」「おかき」「あられ」「あげもち」などがありますが、これらの違いは何でしょうか?
1.「せんべい」「おかき」「あられ」「あげもち」の違い
(1)原料の違い
「せんべい」や「おかき」「あられ」「あげもち」は、どれもお米を蒸(む)してから搗(つ)き捏(こ)ねて、焼いたり揚げたりしてから味を付けたお菓子ですが、「原料に違い」があります。
「せんべい」はご飯を炊くのと同じ「うるち米」を使って作ったお菓子のことを指します。
一方「おかき」「あられ」「あげもち」はお餅をつくときと同じ「もち米」を使って作ったお菓子をのことを指します。
(2)「粳米(うるちまい)」と「糯米(もちごめ)」の違い
普通に炊飯してご飯として食べる米を、餅やおこわにする「糯米(もちごめ)」と区別して「粳米(うるちまい)」と言います。両者はデンプンの組成が違い、もち米のデンプンが分岐鎖分子のアミロペクチンのみからなるのに対し、うるち米のデンプンはアミロペクチンと直鎖分子のアミロースの両方を含んでいます。
2.「せんべい(煎餅)」について
「せんべい」の始まりには諸説あり、もともとは中国から伝わった、小麦粉を使ったお菓子だったとも言われています。現代のお好み焼きやクレープのようだったそうです。
農家の人が屑米を蒸して丸め、日持ちするように干したものに塩味を付けるようになりました。
街道が発達して宿場町が増えると腹持ちもよく、荷物にしても軽くて保存性もよいので旅人に重宝されるようになったそうです。
そのうち各地にせんべいが広まって器具や作り方も進化し、また醤油がつくられるようになると醤油味のせんべいが広く好まれるようになり、様々な土地で名物のせんべいがつくられるようになったのです。
3.「おかき(お欠き)」について
「おかき」は「かきもち(欠き餅)」とも言われるように、もともとはお餅から作られたものです。
収穫に感謝して神様にお供えしたお餅は時間がたつと乾きひび割れてきます。
お供えから降ろしたそのお餅を槌(つち)などで欠き割って、焼いたり煎ったりして食べたのがおかきの始まりだそうです。
「欠いた餅」に、大切なものに対する丁寧語である「お」を付けて「おかき」と呼ぶようになったのです。
4.「あられ(霰)」について
「あられ」とは、「あられ餅(霰餅)」の略で、米餅を長さ2~3cm、縦横5mm程度の長さに切り、火で炙った菓子です。炒った豆(表面をコーティングする)を使用するものもあります。
「あられ」や「おかき」はもち米を原料とする米菓で、現代では主に大きさによって区別されます。
本来は原料の餅を細かくするために包丁を使ったものを「あられ」、槌を使ったものを「おかき」と呼んでいました。また、おかきとは異なり、あられは奈良時代に唐などからの使者に対して宮廷で出されたもてなしの食べ物でした。
すでに平安時代にかきもちの一種としてあられ餅・玉あられと称して生産されたことが「山城風土記」に見られ、江戸時代には商品として多量に生産されるようになりました。
5.「あげもち(揚げ餅)」について
「あげもち」とは、油で揚げた餅のことです。塩を振ったり、醤油や砂糖醬油をつけたりして食べることが多い菓子です。
6.「お茶請け」について
(1)「お茶請け」の意味
「お茶請け」といえば、せんべいや漬物など塩っ気の聞いたものから、クッキーや大福など甘いものまでいろいろありますね。
お茶請けはお茶の味を引き立てててくれるだけのもの、と思われがちですが、実はほかにも役目があることをご存知でしたか? お茶にはカフェインや茶カテキンが含まれています。それを空腹時に摂取すると、胃酸が分泌されてしまい、それによって胃が荒れてしまうこともあります。
先にお茶請けを食べることで、それらの刺激物を薄めて和らげるのです。つまりお茶請けは、身体をいたわる心が表れた食べ物といえるでしょう。
(2)お茶請けが「受け」でなく「請け」である理由
お茶請けが「受け」でなく「請け」である理由は、お茶を支える・お茶を引き立てるという由来があるからだそうです。
お茶請けの種類はこれといった決まりはありません。現在では和菓子が好まれていますが、これらは砂糖が日本に入ってきた近世以降のことです。
現在のように色鮮やかで多彩な和菓子が登場したのは安土桃山時代から江戸時代だと言われています。それまでの茶会のお茶請けには、栗や干し柿などが使われていたそうです。