二十四節気の季節感溢れる季語と俳句 仲春:啓蟄・春分(その6)植物

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春分

前回まで、「ホトトギス派の俳人」16人(「ホトトギス派の俳人(その16)杉田久女:虚子との確執で有名な悲運の女流俳人」など)と「ホトトギス派以外の俳人」14人(「ホトトギス派以外の俳人(その14)長谷川かな女:大正期を代表する女流俳人」など)を紹介する記事を書いてきました。

ホトトギス派は、「客観写生」「花鳥諷詠」「有季定型(季語のある定型俳句)」を旨としましたが、それに飽き足りない俳人たちが、「無季俳句」や「自由律俳句」などを標榜する「新興俳句運動」を起こしました。

私は、「新興俳句運動」を全否定するつもりはなく、それなりの歴史的意義はあったと思います。しかし、私はやはり季節感溢れる「季語」を詠み込んだ「定型俳句」に魅力を感じます。

そこには、現代の私たちの生活から失われつつある(一部はほとんど失われた)季節感が溢れており、「懐かしい日本の原風景」を見るような気がします。

そこで今回から、「二十四節気」に沿って季節感あふれる「季語」と俳句をご紹介していきたいと思います。

なお、前に「季語の季節と二十四節気、旧暦・新暦の季節感の違い」という記事も書いていますので、ぜひご覧下さい。

季語の季節対比表

二十四節気図

「春」は旧暦1月~3月にあたり、「初春」(立春・雨水)、「仲春」(啓蟄・春分)、「晩春」(清明・穀雨)に分かれます。

今回は「仲春」(啓蟄・春分)の季語と俳句をご紹介します。

・啓蟄(けいちつ):新暦3月5日頃です。「二月節」 冬ごもりしていた地中の虫がはい出て来ます。

・春分(しゅんぶん):新暦3月20日頃です。「二月中」 太陽が真東から昇って真西に沈み、昼夜がほぼ等しくなります。

7.植物

(1)あ行

・浅茅が花(あさじがはな):「茅花(つばな)」の別称

・胡葱(あさつき):ユリ科の多年草で、古来野菜として栽培された。特に春先の若い葉は柔らかく甘みがある

あさつきアサツキ

・蘆芽(あしかび)/蘆の錐(あしのきり)/蘆の角(あしのつの):水辺の蘆の芽のこと。春、水が温むと蘆根から角のような芽が出る。

蘆の角

見え初めて 夕汐みちぬ 蘆の角(炭太祇)

曳船や すり切つて行く 蘆の角(夏目漱石)

・東彼岸(あずまひがん):彼岸桜の別称

・編笠百合(あみがさゆり):「貝母の花(ばいものはな)」の別称

・紫羅欄花(あらせいとう):アブラナ科の一年草。南ヨーロッパ原産で、観賞用に植えられるほか、切花にもなる。高さは20cm~80cm。葉は細長く互生する。四月ころ、茎の先端に芳香のある総状花序をつける。花の色は紅、ピンク、紫、白とさまざま。「ストック」

紫羅欄花

・アルメリア:北米から千島まで広く分布するイソマツ科の多年草。四月ころ、基部に密集する線形の葉から、多くの茎が立ち、その先端に一つずつ、2~3cmのピンク色の花を咲かせる。観賞用に花壇などに植えられる。「浜簪(はまかんざし)」のこと

アルメリア

・いたちぐさ/いたちはぜ:半つる性植物。枝が柳のように撓み、地につくとそこから根を出す。葉に先立って鮮やかな黄色の花を枝先まで付ける。「連翹」の別称

・虎杖(いたどり):タデ科の多年草。山野に群生する。春先、赤味を帯びた新芽が出て節のある太い茎が一メートル程に直立し目立つ。茎には暗紅色の斑点があり、手折るとポキッと折れる。中は空洞で柔らかく食用になる。茎は成長するにつれ木質化する。夏に白い小さな花を沢山つける

虎杖

虎杖や 到来過ぎて 餅につく(小林一茶)

・糸桜(いとざくら):枝垂桜(しだれざくら)の別称

影は滝 空は花なり 糸桜(加賀千代女)

ゆき暮れて 雨もる宿や いとざくら(与謝蕪村)

糸桜 かすかに昼の 曇りかな(芥川龍之介)

・糸葱(いとねぎ):胡葱(あさつき)の別称

・萍生い初む(うきくさおいそむ)/萍生う(うきくさおう):春になり、池や湖沼に萍が生えてくること。「萍」は水面に浮かぶ水草の代表的なもの。晩秋に枯れて沈む。枯葉の裏に生じた冬芽が水底に沈んで越冬し、春になると浮かび水面を覆い尽くすほどに殖える

浮き草

萍や 池の真中(まなか)に 生ひ初むる(正岡子規)

・鶯菜(うぐいすな):小松菜がまだ生育しきっていない10cm位に伸びたものをつまみ菜として市場に出す。これを鶯菜と呼ぶ。鶯の鳴き声を聴く頃に出る菜であるためという説と、菜の色が鶯色であるためという説がある。灰汁(あく)がなく、おひたしや胡麻和えなどに用いられる

鶯菜

それ一種で 野辺の宿かせ 鶯菜(西山宗因)

・五加/五加木(うこぎ):ウコギ科の落葉低木。寒地の山野に自生する。生垣としても植えられる。高さ1mあまり。幹や枝にとげがある。若芽を摘んで五加飯にしたり、五加茶を作ったりする

五加木

・五加垣(うこぎがき):五加で作った生け垣

・五加摘む(うこぎつむ):五加の若葉を摘むこと

うこぎ摘む 蝸牛もろき 落葉かな(池西言水)

・うどめ/うどもどき:「楤の芽(たらのめ)」の別称。たらの木の若芽のこと。たらはウコギ科の落葉低木。山野に自生し、繁殖力が強く枝に鋭いとげを持つ。少し苦味のある若芽は春先の山菜の代表的なもの。今では、時期になるとスーパーなどでも売られる

・莵芽木(うはぎ):「嫁菜(よめな)」の別称。キク科の多年草。日本特産の植物で、秋に咲く花は野菊として親しまれている。春に萌え出た新苗は摘草として嫁菜飯やおひたし等に利用される。万葉集にもウハギとして詠まれ、古くから食用 とされてきた

・姥彼岸(うばひがん):彼岸桜(ひがんざくら)の別称

・芸香(うんこう):沈丁花(じんちょうげ)の別称

・えくり:春蘭(しゅんらん)の別称

・老蕨(おいわらび):芽が伸び、葉の開いた蕨

・大蒜(おおびる/おおにんにく):ニンニクのこと

・大花君子蘭(おおばなくんしらん):君子蘭の一種

・荻の角(おぎのつの)/荻の芽(おぎのめ):湿地の荻の芽のこと。春、水が温むと根から角のような芽が出る

・薺蒿(おはぎ):嫁菜の別称

・オランダ躑躅(おらんだつつじ):シャクナゲ科の常緑灌木で躑躅の一種

(2)か行

・楓の芽(かえでのめ):早春、楓は枝先に紅色のやわらかな新芽を吹く。他の木々に先がけて芽吹くもののひとつで、鮮やかな紅の芽がほどけてゆくさまはことのほか印象的

二つづつ 芽をつけてゐる 楓かな(原石鼎)

・鍵蕨(かぎわらび):蕨の別称

・柏落葉(かしわおちば)/柏散る(かしわちる):夏の新芽に先立ち、柏の古葉が落葉すること

・かみら:韮(にら)の別称。ユリ科ネギ属の多年生で古くから食用として栽培されてきた。葉は三十センチほどに成長し、柔らかく、独特の匂いをもつ

・烏木蓮(からすもくれん):木蓮で特に色の濃いもの

・菊の苗(きくのなえ):菊は多年草なので、昨年花のついた古株の根元から今年成長する新芽がいくつも出る。そのままにすると花が痩せるので、新芽を根ごと分けて苗床へ移植し育てる。株をふやす手段でもある

菊苗に 雨を占ふ あるじかな(三宅嘯山)

菊苗に 水やる土の 乾きかな(正岡子規)

・菊の芽(きくのめ):春先に伸びだした菊の新芽のこと

・菊の若葉(きくのわかば):春になって萌え出した菊の苗の若葉のこと

・羊蹄(ぎしぎし):原野や道ばた田の畦の湿ったところなど、日本のいたるところで見られる。高さ40cmから1m近くになる大形のタデ科の多年草。長く大きな黄色の根を持ち、緩下剤として大黄(だいおう)の代用になる。上部で枝分れした茎は五月頃、淡い緑色の小花を枝先に多数つける

ぎしぎし

・雉蓆(きじむしろ):バラ科の多年草で、三、四月頃、黄色い五弁の花が開く

・黄水仙(きずいせん):江戸時代に渡来した南ヨーロッパ原産のヒガンバナ科の多年草。観賞用として庭などに植えられ、切花としても用いられる。三、四月ころ、細長い葉の間から茎を立て、その頂点に黄色い花を咲かせる

黄水仙

黄水仙に 尚霜除の ありにけり(長谷川零余子)

咲き疲れ ひれ伏しにけり 黄水仙(松本たかし)

・枸杞(くこ):ナス科クコ属の落葉低木で棘がある。川や土手などに自生し、高さは、1m~2mくらい。春、その柔らかい葉は摘んで味噌和えや枸杞飯にする。根皮や葉は生薬となり、実はクコ酒に利用される

クコ枸杞

枸杞垣の 似たるに迷ふ 都人(与謝蕪村)

・枸杞摘む(くこつむ):枸杞の芽を摘むこと

・枸杞の芽(くこのめ):春に出る、長楕円形の柔らかい新葉のこと

・君子蘭(くんしらん):ヒガンバナ科クリビア属の宿根草。南アフリカ原産で鉢などに植えて観賞する。草丈は高いもので70cmくらいになる。重なり合った細長い剣状の葉の間から花茎をのばす。花は茎頂部に五個から八個かたまって咲く。色は橙色や白色、桃色などがある

君子蘭

・五形花(げげばな):紫雲英(げんげ)の別称

・紫雲英(げんげ):春、田んぼなどに紅紫色の花を一面に咲かせる。田んぼに多く栽培されるのは、これをすき込んで肥料にするため。花が一面に咲いているところが、雲がたなびくようなのでこの名がついた

げんげ

・げんげ田(げんげた):紫雲英におおわれた田

げんげ田や 花咲く前の 深みどり(五十崎古郷)

・げんげん:紫雲英(げんげ)の別称

野道行けば げんげんの束 すててある(正岡子規)

げんげんを 打ち起したる 痩田かな(正岡子規)

・小水葱(こなぎ):ミズアオイ科の一年草。農家にとってはやっかいな水田雑草で、稲作に伴って渡来した史前帰化植物。光沢のあるやや長めのハート形の葉に2cmくらいの青紫色の花をつける。花茎は葉より低く、自家受粉する

小水葱

・小水葱摘む(こなぎつむ):小水葱の若葉を摘むこと。小水葱は、芹などと同じように、田や沢に生えるミズアオイ科の一年草。昔はこれを摘んで羹などにして食した。今は邪魔なだけの雑草

・小蒜(こびる):野蒜(のびる)の別称

・辛夷/木筆(こぶし):日本原産のモクレン科落葉高木。早春、白い大型の花を小枝の先ごとにつける

辛夷

(3)さ行

・細水葱(ささなぎ):小水葱(こなぎ)の別称

・更紗木蓮(さらさもくれん): モクレンとシロモクレンを交配して生まれた木蓮の一種。 2つの木の特徴がバランスよく合わさっており、樹高6~10mで、淡いピンクの花を4月頃に咲かせる

更紗木蓮

・沢蒜(さわびる):沢に生える野蒜

・早蕨(さわらび):芽が出たばかりの蕨

・三月大根(さんがつだいこん):春大根の別称

・三月菜(さんがつな):早春に種を蒔き、三月から四月頃に食べる菜類の総称で、育ちの早い鶯菜などをいう。晩菜のためやや味は落ちるが、若くて柔らかく端境期の青菜として喜ばれる。春らしく青々とした葉の色が印象的

よし野出て 又珍しや 三月菜(与謝蕪村)

・山椒の芽(さんしょうのめ):ミカン科落葉低木。3mほどになり、枝にとげが多い。芽は香気が強い。「木の芽」と称し「木の芽田楽」「木の芽あえ」「木の芽みそ」などの料理に使われる

山椒の芽

日もすがら 機織る音の 山椒の芽(長谷川素逝)

・四月大根(しがつだいこん):春大根の別称

・歯朶萌ゆる(しだもゆる):春、シダ植物類の新葉が萌え出ること

シダ

・枝垂桜(しだれざくら)/しだり桜(しだりざくら):自生はなく観賞用園芸種で、エドヒガンの一変種である。薄紅色 の花を、細くて垂れ下った枝につける。樹齢は長い

枝垂桜

夕闇や 枝垂桜の かなたより(芥川龍之介)

・枝垂彼岸(しだれひがん):彼岸のころに咲く枝垂桜

・幣辛夷(しでこぶし):モクレン科の落葉高木。中部地方の山地に自生し、また庭木として栽植。早春、葉に先だち花被片十数個から成る微紅色を帯びた白色で芳香のある花を開く。ヒメコブシ

シデコブシ

・シナ春蘭(しなしゅんらん):春蘭で香気の強いもの

・シナ水仙(しなすいせん):房咲水仙の一種

・紫木蓮(しもくれん):モクレンの別名。白花のハクモクレンと区別するための名。

早春に花を株いっぱいに咲かせる落葉広葉樹で、純白の花を咲かせる白木蓮(ハクモクレン)とよく比較される

紫木蓮

・蒪菜生う(じゅんさいおう):春になり、池や湖沼に蓴菜が生えてくること

・春蘭(しゅんらん):常緑多年草。香気があり、青味を帯びた淡黄色の花で紅紫の斑を容れる。花は料理のつまにし、また塩漬けにしたものを湯に浮かべて飲む。葉は細長くて強い。春蘭は秋の菊と並んで、古来よりその清らかな姿を愛されてきた

春蘭

春蘭に くちづけ去りぬ 人居ぬま(杉田久女)

春蘭や みだれあふ葉に 花の数(高橋淡路女)

春蘭や 耳にかよふは 竹の雨(日野草城)

・諸葛菜(しょかつさい):アブラナ科の一年草。中国原産であるが、日本の風土によくなじみ日本の各地で群生する。高さは60cm~80cmくらい。楕円の葉は茎を抱くようにして互生する。三月から四月にかけて、枝分かれした茎の先端に紫色の総状花序をつける。花径は3cmくらい

諸葛菜

・沈丁(じんちょう):沈丁花(じんちょうげ)の別称

・沈丁花(じんちょうげ):中国原産の常緑灌木。鈍い光沢のある卵形の葉をもち、庭や垣に 植えられる。薄紅の小さな薬玉のような花を球状につける。花は 名の示すとおり沈香と丁字の香を併せもち、その鮮やかな匂いで 春の到来を告げる

沈丁花

沈丁花 鉢に愛せり 堺すぢ(大魯)

沈丁や 死相あらはれ 死相きえ(川端茅舎)

・瑞香(ずいこう):沈丁花(じんちょうげ)の別称

・酸模/酸葉(すいば)/すかんぽ/すいすい/すし:タデ科の多年草。四、五月ごろ、紅色を帯びた小花を穂状につける。茎は高さ30cm~80cmほど。昔は遠足の道すがらなどで、茎をちぎって噛み、その酸っぱい味を楽しんだ

酸葉

すかんぽを 皆くはへて 草摘めり(松本たかし)

・千本分葱(せんぼんわけぎ):胡葱(あさつき)の別称

・薇(ぜんまい):山野の湿気の多いところに生えるシダ類。紫色の若芽は白い綿毛に 覆われた渦巻状で、それが開かぬうちに干薇として保存し食用とする

ゼンマイ

ぜんまいの のの字ばかりの 寂光土(川端茅舎)

・ぜんまい採り(ぜんまいとり):薇を取ること

・ぜんまい飯(ぜんまいめし):薇を炊き込んだ飯

(4)た行

・田打桜(たうちざくら):コブシの別称

・立彼岸(たちひがん):彼岸桜の別称

・楤の芽/多羅の芽(たらのめ)/たらめ:たらの木の若芽のこと。たらはウコギ科の落葉低木。山野に自生し、繁殖力が強く枝に鋭いとげを持つ。少し苦味のある若芽は春先の山菜の代表的なもの。今では、時期になるとスーパーなどでも売られる

タラの芽

たらの芽の とげだらけでも 喰はれけり(小林一茶)

・茅萱の花(ちがやのはな):茅花(つばな)の別称

・丁字(ちょうじ):沈丁花(じんちょうげ)の別称

・土筆(つくし)/つくづくし/つくしんぼ:トクサ科の多年草。杉菜の胞子茎をいう。三月ごろから日のあたる土手や畦道に生える。筆のような形をしているのでこの名がある

土筆

真福田が 袴よそふか つくづくし(松尾芭蕉)

つくづくし ここらに寺の 趾もあり(加賀千代女)

つくつくし ほうけては日の 影ぼうし(黒柳召波)

・土筆和(つくしあえ):土筆を茹で和え物にした料理

・土筆摘(つくしつみ):生え出た土筆を摘みとること。春の行楽の一つ

・土筆野(つくしの):土筆が生えた野原のこと

・蔦の芽(つたのめ):蔦は他の草木に遅れて芽吹く。その芽は新しい蔓となり、ぐんぐん伸びる。さらに蔓から伸びた無数の細い巻蔓には吸盤があり、手近なものに貼り付き這い登る。逞しい生命力を秘めた芽である

蔦の芽

蔦の芽の 枯木にかかる 青みかな(唇風)

・角組む蘆(つのぐむあし):水辺の蘆の芽のこと。春、水が温むと蘆根から角のような芽が出る

・角組む荻(つのぐむおぎ):湿地の荻の芽のこと。春、水が温むと根から角のような芽が出る

・茅花(つばな/ちばな):イネ科の多年草。野原や川原などに広く群生する。春先槍のように細い鞘に花穂を包む。この若い花穂を茅花という。初夏この鞘をほどき銀色の美しい穂をなびかせる

茅花

・針茅(つばな):イネ科の多年草の茅萱の花。三、四月頃、苞がほぐれて穂が出る

・茅花ぬく(つばなぬく):春の茅花を抜くこと

・茅花野(つばなの):茅花の咲きほこる野

・ていれぎ:和名はオオバタネツケバナ(大葉種漬花)。ていれぎは松山市の天然記念物に指定されている。同じアブラナ科のタネツケバナよりも、オランダカラシ(クレソン)に味も形態もよく似ており、さわやかな辛みが特徴で伊予地方では、刺身のつまなどに用いる。沢沿いや小川のほとりなどに自生し、20cm~50cmくらい

・土佐水木/蝋弁花(とさみずき):マンサク科。高さ2mほどの落葉低木。土佐の山地に自生していたのが名前の由来。三~四月ごろ、葉に先立って丸いつぼみの先にかすかな黄色をみせる

土佐水木

(5)な行

・苗代大根(なわしろだいこん):春大根の別称

・韮(にら):ユリ科の多年草で、独特の臭みがある。夏秋も食べるが、春の若葉が特に柔らかく香りが強い

韮

・煮蕨(にわらび):蕨を煮たもの

・葫/蒜(にんにく):中国原産のユリ科の多年草。地下の鱗茎を食用、薬用、調味料などに使う。特有の臭気があり、健康によいとされる

ニンニク

・蒪生う(ぬなわおう):スイレン科に属している多年生の水草で、春その幼茎や若葉が生えること

・根蒜(ねびる):野蒜の別称

・野蒜(のびる):ユリ科の多年草。畑のまわりや畦などでよく見かける。細い青ネギのような葉がひと所にかたまって生える。若い葉や白色球状の鱗茎を、ゆでたり焼いたり、生のまま食べたりする。ニラやニンニクに似た香りを持つ。あざやかな緑が春らしい。夏に少し紫がかった白色の花をつける

野蒜

野蒜掘れば 強きにほひや 暮の春(松本たかし)

・野蒜摘む(のびるつむ):春先、野蒜を食用に摘み取ること

(6)は行

・貝母の花(ばいものはな):ユリ科バイモ属の球根植物。中国中東部の草原などに自生する。鱗茎から出る茎は、50cm~80cmほどになる。広線形の先のとがった葉を持ち、三月から四月にかけて、上部の葉腋に鐘状の花を下向きにつける。色は緑を帯びた白。花径は3cmくらいである

貝母の花

・白木蓮(はくもくれん)/白れん(はくれん):木蓮で花の白いもの

白木蓮

・はくり:春蘭のこと

・榛の花(はしばみのはな/はんのはな):カバノキ科の落葉灌木。山地に自生。晩春、葉に先立って花を開く。雄花は黄褐色で穂状、長く垂れ下がって咲き、雌花は紅色の花柱が上向きにつく

榛の花

・初桜(はつざくら):その年に初めて咲いた桜のこと。初花と同義であるが、初花よりも植物であることに重きが置かれる

顔に似ぬ 発句も出でよ 初桜(松尾芭蕉)

けふまでの 日はけふ捨てて 初桜(加賀千代女)

旅人の 鼻まだ寒し 初ざくら(与謝蕪村)

・初花(はつはな):その年の春、初めて咲く桜のこと。一輪二輪、枝に咲いている姿は初々しく可憐である。心待ちにしていた開花を喜ぶ気持ちが「初」という文字に現れている

初花に 命七十五年ほど(松尾芭蕉)

初花の 口びやうし聞け 大句数(井原西鶴)

袖たけの 初花桜 咲にけり(小林一茶)

・初百合(はつゆり):貝母(ばいも)の別称

・初蕨(はつわらび):その春初めてはえ出た蕨

・花簪(はなかんざし):オーストラリア原産のキク科の一年草。草丈は40cm~60cmくらい。茎は硬く、線形の葉は互生する。四月ころ、茎の先端に一つずつ、白またはピンクの菊に似た花をつける。ドライフラワーなどに利用する。「ローダンセ」「ヘリプテラム」

花簪

・母栗(ははくり):貝母(ばいも)の別称

・浜簪(はまかんざし):北米から千島まで広く分布するイソマツ科の多年草。四月ころ、基部に密集する線形の葉から、多くの茎が立ち、その先端に一つずつ、2~3cmのピンク色の花を咲かせる。観賞用に花壇などに植えられる。「アルメリア」のこと

浜簪

・はりの木の花(はりのきのはな):カバノキ科の落葉高木。早春、暗紫褐色の花をつける

・春大根(はるだいこん):冬に収穫せず、三、四月の薹が立つ頃収穫する大根

・春百合(はるゆり):アミガサユリの別称。ユリ科の多年草、薬用植物

・赤楊の花(はんのきのはな):ハンノキはカバノキ科ハンノキ属の落葉高木。日本各地の山野に自生する。湿地に適するので畦などに植えて稲架木として利用したりする。二月から三月に開花する。褐色の雄花は尾状にたれさがり、褐色で球状の雌花は雄花の花序の下の葉腋に三、四個ほどつく

ハンノキの花

はんの木の それでも花の つもりかな(小林一茶)

・彼岸桜(ひがんざくら):バラ科の落葉樹。春の彼岸の頃咲くのでこの名がある。花はソメイヨシノにくらべると、白っぽくやや小ぶりでパラパラとした感じに咲く

彼岸桜

尼寺や 彼岸桜は 散りやすき(夏目漱石)

・一人静(ひとりしずか):センリョウ科。山野に自生するが、原産は中国。江戸時代、観賞用に栽培された。20cm~30cmの茎の先端に対生の葉を四枚つけ、その中心からさらに茎を伸ばしブラシ状の白い小花をつけ る。一人舞う静御前になぞらえた命名

一人静

・日向水木(ひゅうがみずき):土佐水木によく似た花

日向水木

・房咲水仙(ふさざきすいせん):水仙の一種で、早春から黄色い花が房状に咲く

・二葉/双葉(ふたば):種をまいて、発芽した草が最初に持つ二枚の葉をいう。朝顔や野菜類などの双子葉植物に見られる

芭蕉植ゑて まづ憎む荻の 二葉かな(松尾芭蕉)

・筆の花(ふでのはな):土筆(つくし)の別称

・紅枝垂(べにしだれ):花は小輪、一重咲きで紅色。開花期は3月下旬。
枝垂桜は江戸彼岸の変種で、枝が下垂するものだが、本種はその中でも花色が特に濃いもの

・報歳蘭(ほうさいらん):中国で旧正月の床飾りにする蘭

・ほくろ:春蘭のこと

・干薇(ほしぜんまい):干した薇

・干蕨(ほしわらび):蕨を干して乾燥させたもの

(7)ま行

・松葉簪(まつばかんざし):浜簪(はまかんざし)の別称

・眉掃草(まゆはきそう):一人静の別称

・水草生う(みくさおう):三月頃から池や沼などには色々な水草が生えてくる。だんだん水温が上がってくると藻や浮き草、又水底に根のある蓮なども成長を始める。よく見ないと気づかない光景だが春の訪れを感じる光景である

水草生ひぬ 流れ去らしむ こと勿れ(村上鬼城)

ゆふぐれの しづかな雨や 水草生ふ(日野草城)

・水草生いそむ(みずくさおいそむ):三月頃から、池や沢や湖沼に各種の水草が生えてくること

・三椏の花(みつまたのはな):ジンチョウゲ科の落葉低木。中国原産。三叉に分かれた枝の先に 黄色い花が咲く。皮は紙の原料になる

三椏の花

三椏や 皆首垂れて 花盛り(前田普羅)

三椏の はなやぎ咲ける うららかな(芝不器男)

・むこぎ:五加(うこぎ)の別称

・結香の花(むすびきのはな):三椏の花(みつまたのはな)の別称

・むらさきはなな:諸葛菜(しょかつさい)の別称

・芽ばり柳(めばりやなぎ)/芽柳(めやなぎ):春、芽吹いた柳

・藻草生う(もぐさおう):三月頃から、池や沢や湖沼に各種の水草が生えてくること

・木蓮/木蘭(もくれん):モクレン科の落葉高木。春、葉に先立って花をつける。白炎のような花を咲かせる白木蓮と、外側が紫、内側が白色の紫木蓮があり、紫木蓮の方が開花時期が少し遅い

此門の 勅額古し 木蓮花(内藤鳴雪)

木蓮の 落ちくだけあり 寂光土(川端茅舎)

木蓮の 軒くらきまで 咲にけり(原石鼎)

・桃色水仙(ももいろすいせん):喇叭水仙の一種、桃色の花が咲く

(8)や行

・柳の花(やなぎのはな):柳の暗紫色の花

・柳の芽(やなぎのめ):柳の新芽のこと。柳が芽吹くのは桜の花のころと重なり、その柔らかな緑の芽は古来春の代表的な色どりとして「柳桜」と愛された。新芽の前に花を咲かせるが、目立たない

古川に こびて芽を張る 柳かな(松尾芭蕉)

ほつかりと 黄ばみ出でたり 柳の芽(加藤暁台)

・山蒜(やまびる):野蒜の別称

・山木蓮(やまもくれん):コブシの別称

・楊梅の花(やまもものはな):ヤマモモ科の常緑高木。早春、黄褐色の花穂がつく

ヤマモモの花

・雪間草(ゆきまぐさ):一面を覆っていた雪が、春の暖かさで消えかかり黒々とした土が現れる。その土に萌え出た草を雪間草という。春の訪れを実感できる草である

・吉野静(よしのしずか):一人静の別称

・よめがはぎ:嫁菜(よめな)の別称

・嫁菜(よめな):キク科の多年草。日本特産の植物で、秋に咲く花は野菊として親しまれている。春に萌え出た新苗は摘草として嫁菜飯やおひたし等に利用される。万葉集にもウハギとして詠まれ、古くから食用 とされてきた

嫁菜

・嫁菜摘む(よめなつむ):野原や畦に自生するキク科の植物。若菜を摘んで胡麻和え、卵とじ、天ぷらなどの料理に用いる

摘む人の まだうら若き 嫁菜かな(花朗)

(9)ら行

・喇叭水仙(らっぱすいせん):ヒガンバナ科スイセン属のひとつ。南西ヨーロッパ原産で観賞用に花壇などに植えられるほか、切花などにもなる。花期は三月から四月にかけて。花の色は黄色または白。副冠がラッパ状になるのでこの名がある

ラッパ水仙

・陸じゅんさい(りくじゅんさい):野原や路傍に群生するタデ科の野草で、酸葉と混同されがち。新芽が食用になる

・柳絮(りゅうじょ):柳は春、花を咲かせたあと、綿毛のような実を結ぶ。これが柳絮だが、風にのって運ばれてゆくさまは雪が舞うようでも、羽毛が舞うようでもある

柳絮

眠たさや 柳絮ちる 長堤(蝶夢)

ある時は 柳絮に濁る 山おろし(前田普羅)

・柳絮飛ぶ(りゅうじょとぶ):風に乗った柳絮がふわふわと舞うこと

・令法(りょうぶ):リョウブ科リョウブ属の落葉高木。日本各地の山地に自生し、高さは10mくらいになる。葉は枝先で互生し、七月から八月にかけて、白い小さな花を枝先にたくさんつける。春先に若布を摘んで食用とする

令法

・令法茶(りょうぶちゃ):令法の葉を茶にしたもの

・令法摘む(りょうぶつむ):令法の葉を摘むこと

令法つみ かかる山路に あき俵(鴻水)

・令法飯(りょうぶめし):令法の葉を蒸したものをたきこんだ御飯

・連翹(れんぎょう):半つる性植物。枝が柳のように撓み、地につくとそこから根を出す。葉に先立って鮮やかな黄色の花を枝先まで付ける。その様子が鳥の長い尾に似ているのでこの名がついた

連翹

連翹(れんぎょう)や 黄母衣(きぼろ)の衆の 屋敷町(炭太祇)

連翹に 一閑張の 机かな(正岡子規)

連翹の 枝の白さよ 嫋(たおや)さよ(山口青邨)

・蓮華草(れんげそう):紫雲英(げんげ)の別称

(10)わ行

・若紫(わかむらさき):根から紫の染料をとる、むらさきの若苗。紫紺と呼ばれる根は、薬用にも用いられる。初夏五弁の小さな白い花をつける。50cm~80cmくらいになり、山地に自生する

・分葱(わけぎ):ユリ科ネギ属の球根性多年草の野菜。原産地はギリシア。葱のよ うに白い根の部分がなく、卵形の鱗茎から伸びた柔らかい葉を饅 や卵とじなどで食す。産地としては広島県が有名である

分葱

・蕨(わらび):ワラビ科。山肌の日当たりの良いところにみられる春を代表する山菜。乳牛が食むと乳の出が悪くなるといわれるほどあくが強い。あく抜きをして、おひたしなどで食べる

蕨

・蕨汁(わらびじる):蕨を具にした汁物

・蕨長く(わらびたく):蕨が成長すること

・蕨手(わらびて):蕨の別称で、先端がこぶしのように巻いたもの

・蕨飯(わらびめし):蕨を炊き込んだ御飯



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