二十四節気の季節感溢れる季語と俳句 初秋:立秋・処暑(その6)植物

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処暑

前回まで、「ホトトギス派の俳人」16人(「ホトトギス派の俳人(その16)杉田久女:虚子との確執で有名な悲運の女流俳人」など)と「ホトトギス派以外の俳人」14人(「ホトトギス派以外の俳人(その14)長谷川かな女:大正期を代表する女流俳人」など)を紹介する記事を書いてきました。

ホトトギス派は、「客観写生」「花鳥諷詠」「有季定型(季語のある定型俳句)」を旨としましたが、それに飽き足りない俳人たちが、「無季俳句」や「自由律俳句」などを標榜する「新興俳句運動」を起こしました。

私は、「新興俳句運動」を全否定するつもりはなく、それなりの歴史的意義はあったと思います。しかし、私はやはり季節感溢れる「季語」を詠み込んだ「定型俳句」に魅力を感じます。

そこには、現代の私たちの生活から失われつつある(一部はほとんど失われた)季節感が溢れており、「懐かしい日本の原風景」を見るような気がします。

そこで今回から、「二十四節気」に沿って季節感あふれる「季語」と俳句をご紹介していきたいと思います。

なお、前に「季語の季節と二十四節気、旧暦・新暦の季節感の違い」という記事も書いていますので、ぜひご覧下さい。

季語の季節対比表

二十四節気図

「秋」は旧暦7月~9月にあたり、「初秋」(立秋・処暑)、「仲秋」(白露・秋分)、「晩秋」(寒露・霜降)に分かれます。

今回は「初秋」(立秋・処暑)の季語と俳句をご紹介します。

・立秋(りっしゅう):新暦8月7日頃です。「七月節」 秋の気配が感じられます。

・処暑(しょしょ):新暦8月23日頃です。「七月中」 暑さがおさまる頃です。

7.植物

(1)あ行

・青棗(あおなつめ):棗のまだ熟していない実

青棗

・青花(あおばな):露草の別称。初秋に真っ青の花が咲く

・青瓢箪(あおびょうたん):匏の別称。初秋、瓢簞形の青い実がたくさん生る

・青瓢(あおふくべ):古来よりその形を愛でられてきた夕顔の仲間。飲料の容器として、また縦に割り杓文字や柄杓としても使われてきた。災難除けの呪具としての意味もある。白い花にも風情がある

青瓢

ものひとつ 我が世はかろき 瓢かな(松尾芭蕉)

市中に ふくべを植ゑし 住まひかな(越智越人)

竹の声 許由がひさご 未だ青し(宝井其角)

順礼の 目鼻書行く ふくべかな(与謝蕪村)

日の影の 石にこぼるゝ 瓢かな(早野巴人)

遙かなる 思ひから覚め 青瓢(長谷川櫂)

へうたんの 形をなして ただしづか(高田正子)

・茜草(あかね):アカネ科のつる性他年草。中国、朝鮮、日本各地の山野、林道脇などに自生する。蔓性であるが巻きつくより、四角い茎に生えた棘を利用して他の植物を引っかけたり、からみつたりして成長する。各節に四枚の葉が輪生し8、9月頃白色の小花をつける。根から赤い染料を採る。生薬の茜根(せいこん)は止血剤として用いられる

茜草

・赤のまま(あかのまま):赤のまんまの別称

・赤のまんま(あかのまんま):タデ科の一年草。山野や路傍に自生する。初秋、小粒の穂状の紫紅色の花を咲かせる。この粒状の花をしごき取り、赤飯にみたてて、ままごとに使って遊んだことから、「赤の飯(まんま)」と呼ばれる

赤のまんま

犬蓼の 花に水落ち 石出たり(村上鬼城)

赤のまま 摘めるうまごに 随へり(臼田亜浪)

舟あがる ときつかみたる 赤のまま(高田正子)

・赤まんま(あかまんま):赤のまんまの別称

・秋桑(あきくわ):秋蚕(あきご)を育てるための桑の木のこと。クワ科クワ属にはヤマグワ、シマグワなどがあり、蚕の食餌になる。夏の日差しを浴びて成長した秋桑は葉を青々と繁らせる

・秋珊瑚(あきさんご):サンシュユの別称。ミズキ科の落葉高木。園芸植物、薬用植物

・秋の麒麟草(あきのきりんそう):泡立草の正式名。北米原産で山野に多く生え、初秋黄色い花をつける

・秋の桑(あきのくわ):秋桑のこと

・秋の蓮(あきのはす):破荷(やれはす)のこと

・秋の芽(あきのめ):秋に芽生えた草木の芽をいう。芽生えは春であるが、天候不順などの影響で秋に芽生えることもある。春の芽生えと違って強い生命力を感じることはない

・秋茗荷(あきみょうが):湿地に自生する日本独特の野菜。晩夏に収穫しなかった花穂から初秋に咲いた唇形、淡黄色の花

秋茗荷

・阿古陀瓜(あこだうり):紅冬瓜のうち扁平で円いもの。初秋に採れる果実は食べられない

・朝顔(あさがお):朝顔は、秋の訪れを告げる花。夜明けに開いて昼にはしぼむ。日本人はこの花に秋の訪れを感じてきた。奈良時代薬として遣唐使により日本にもたらされた。江戸時代には観賞用として栽培されるようになった。旧暦7月(新暦では8月下旬)の七夕のころ咲くので牽牛花ともよばれる

朝顔

朝貌や 昼は錠おろす 門の垣(松尾芭蕉)

あさがほに 我は飯くふ おとこ哉(松尾芭蕉)

あさがほの 花に鳴行 蚊のよわり(松尾芭蕉)

朝顔は 酒盛知らぬ さかりかな(松尾芭蕉)

蕣(あさがほ)は 下手の書くさへ 哀也(松尾芭蕉)

蕣や 是も又我が 友ならず(松尾芭蕉)

三ケ月や 朝顔の夕べ つぼむらん(松尾芭蕉)

わらふべし 泣くべし我朝顔の 凋(しぼむ)時(松尾芭蕉)

僧朝顔 幾死かへる 法の松(松尾芭蕉)

朝がほや 一輪深き 淵のいろ(与謝蕪村)

あさがほや 夜は葎(むぐら)の ばくち宿(向井去来)

蚊屋ごしに 蕣(あさがほ)見ゆる 旅寝哉(井上士朗)

朝顔の 垣や上野の 山かつら(正岡子規)

朝貎や 咲いた許りの 命哉(夏目漱石)

朝顔を 一輪挿に 二輪かな(高浜虚子)

朝がほや 濁り初めたる 市の空(杉田久女)

朝顔の 紺のかなたの 月日かな(石田波郷)

・麻の実(あさのみ):夏の花の後、初秋にできる球形に近い光沢のある堅い実。種子をしぼって良質な乾性油を採る

麻の実

・畦豆(あぜまめ):水田の畦道にまいて育てる大豆(枝豆)のこと

田畔豆

畦豆に 鼬(いたち)の遊ぶ 夕べかな(村上鬼城)

・蘭の実(あららぎのみ):一位の実の別称。晩秋になると赤く透きとおるように熟し、甘くなる

・泡立草(あわだちそう):キク科の多年草。山野に見られる。秋、50cmくらいの直立した細い茎に黄色い小頭状花を密生させる。背高泡立草は北アメリカ原産の帰化植物。草丈1mを超すものもあり荒地に群生する。高山のものは背が低くミヤマアキノキリンソウと呼ぶ

泡立草

・粟花(あわばな):女郎花(おみなえし)の別称。初秋、黄色い小花が集まり咲く

・いきくさ:弁慶草の別称

・一位の実(いちいのみ):イチイ科の木に生る果実。9月頃に赤く熟す。食べると甘いが、種子に毒がある。木は庭木や生垣にも用いられる。正一位、従一位などの高官が儀式のときに持つ笏の素材にこの木が使われたことから「一位」と名付けられた。鉛筆の材として日本産中最良で、その他建築、器具、彫刻に利用される

一位の実

・犬蓼の花(いぬたでのはな):赤のまんまのこと。初秋、赤紫の小花が穂状に咲く

・犬稗(いぬびえ/いぬひえ):イネ科の一年草。道端や水田に生え、高さ0.6~1m。葉は線形。夏、穂を出して、緑色の花を多数つける。さるびえ。のびえ

野稗

・菜豆(いんげん):隠元豆の別称。初秋、花の後に莢ができて垂れ下がるのを収穫する

・隠元豇(いんげんささげ):隠元豆の別称

・隠元豆(いんげんまめ):南アメリカ原産。明の僧隠元禅師が持ち込んだのでこの名が付いたといわれている。細長い莢が青く軟らかいうちは莢隠元として料理に使われ、熟した豆は煮たりキントンなどの料理に使われる

隠元豆隠元豆

摘み摘みて 隠元いまは 升の先(杉田久女)

塀内や 一つの垣の 隠元豆(松瀬青々)

・鬱金の花(うこんのはな):ショウガ科ウコン属の熱帯性多年草。初秋、水芭蕉に似た大きな 葉に囲まれて花ぐきを伸ばし、その先端に漏斗状の白い花を多数 咲かせる。根は肝臓に効くとされる。別名きぞめぐさ

鬱金の花

・鶉豆(うずらまめ):隠元豆の別称。初秋、花の後に莢ができて垂れ下がるのを収穫する

・うつし花(うつしばな):露草の古称

・葡萄葛(えびかずら):ブドウ科の植物類の古名。ヤマブドウ、エビヅルなどの古名

・蘡薁/蝦蔓(えびづる):ブドウ科の蔓性 (つるせい) の落葉低木。山野に生え、葉と対生して巻きひげが出て、他に絡む。葉は三~五つに裂けている。葉の裏面や葉柄・茎に白か赤褐色の毛が密生。雌雄異株。夏、淡黄緑色の小花が密集して咲く。熟した実は藍黒色で5mmくらいの大きさで食べられるが、甘酸っぱい。えび。えびかずら

エビヅル

・沿籬豆(えんりまめ):籬豆(かきまめ)の別称。一粒の種から垣根に沿って覆うように繁茂するという意味

・鴨跖草(おうせきそう):露草の別称。初秋に真っ青の花が咲く

・大毛蓼(おおけたで):空き地や野原に自生し、2m以上になる。茎や葉裏に毛が密生している。花穂は淡紅色の小花が集まり、穂先は垂れ下がる

大毛蓼

・荼の花(おおどちのはな):男郎花(おとこえし)の別称

・荻の風(おぎのかぜ):荻をゆらす秋風

・荻の声(おぎのこえ):荻の葉を揺らす風がたてる音のこと。荻は昔から秋を知らせる草とされた。ヲギは、神または霊魂を招くというヲグから来ているとされる。人々は荻の葉のそよぐ音に神の声を聞いたのである

荻の声 こや秋風の 口うつし(松尾芭蕉)

荻の声 舟は人なき 夕べかな(高桑闌更)

荻を見に 来れば道々 荻の声(江森月居)

風の音や 汐に流るる 荻の声(幸田露伴)

・荻吹く(おぎふく):荻の葉に吹く秋の初風で、そのさやぐ音

・小車/施覆花(おぐるま):キク科の多年草で、田の畔や川岸など日当たりの良い湿地を好む。高さは60cmくらいで葉は互生する。茎は上部で分枝し、その先に菊に似た黄色い花を7、8月頃一個ずつ付ける。花を牛車の車輪に見立てこの名がある。施覆花は漢方の生薬の呼び名で、利尿胃健の働きがある

小車

小車は 不便なる花の かづらかな(椎本才麿)

・弟切草(おとぎりそう):平地や山地の道ばた、草原に自生するオトギリソウ科の多年草。7月から8月ころ枝分かれした先に、1.5cmくらいの一日限りの黄色い花をつける。広披針形の葉は対生する。利尿、虫下し、切り傷、止血、神経痛などの薬効がある。物騒な名前の由来は、兄が秘密にしていた鷹の傷薬を弟が他人にもらしたため、怒った兄が弟を切り殺してしまったという平安時代の伝説による

弟切草

・男郞花(おとこえし):オミナエシ科の多年草。女郎花に良く似るが花が白く全体にやや大きい。花期は8月から10月で全国の山野に自生。花瓶に生けておくと醤油の腐ったような匂いがしてくることから、別名は敗醤(はいしょう)という

男郎花

オミナエシ科オミナエシ属オトコエシは、 女郎花 に似ているが、花が白くて大きい。 古い時代に中国から入ってきたと考えられ、北海道から奄美大島まで分布している。 8月から10月頃に花をつける。 元は「おとこへし」と呼ばれ、「へし」には「圧す」が充てられていたと考えられる。 また、「おとこめし」とも呼ばれ、白米を男が食べ、黄色い粟飯を女が食べたことから、それぞれの花色に合わせて「おとこめし」「おみなめし」と呼ばれ、そこから「おとこえし」「おみなえし」に転訛したとの説もある。

・おとこめし:男郎花の別称

・小水葱の花(おなぎのはな/こなぎのはな):ミズアオイ科の一年草。名の由来は小形のナギ(ミズアオイ)で、水田においては根強い雑草として嫌われる。2cmくらいの紫色の花は自家受粉し、葉よりも花茎が低い。東南アジア原産で稲作に伴って渡来した帰化植物。水路などに大量発生することもある

小水葱の花

なまぐさし 小葱が上の 鮠(はや)の腸(わた)(松尾芭蕉)

・葈耳/巻耳(おなもみ):キク科の一年草。道端などに生え、高さ約1m。葉は浅く3~5裂し、互生する。夏から秋、枝先に雄花を、下部に雌花をつける。実は楕円形で鉤 (かぎ) 状のとげがあり、他にくっつく。果実は漢方で蒼耳子 (そうじし) といい、風邪・蓄膿症 (ちくのうしょう) ・神経病に薬用

オナモミ

・苧の実(おのみ):夏の花の後、初秋にできる球形に近い光沢のある堅い実。種子をしぼって良質な乾性油を採る

・女郎花(おみなえし):秋の七草のひとつ。日あたりの良い山野に自生する。丈は1mほどになり茎の上部に粒状の黄色い小花をたくさんつける。庭や畑に植え切り花として用いる

女郎花

見るに我も 折れるばかりぞ 女郎花(松尾芭蕉)

ひよろひよろと 猶露けしや 女郎花(松尾芭蕉)

女郎花 牛が通れば たふれけり(蝶夢)

牛に乗る 嫁御落とすな 女郎花(宝井其角)

女郎花 少しはなれて 男郎花(星野立子)

丈に出て そこらさびしき をみなへし(森澄雄)

・おみなめし:女郎花の別称

(2)か行

・籬豆(かきまめ):南方原産のマメ科一年生。ひと株で垣根ができるほど繁茂するところから、垣豆の名がある。一粒蒔くと八升収穫できるのでハッシ ョウマメともいわれる。夏、蝶形の紫色の花をつけ、秋に緑色の豆を実らせる。食用になるが、あくの強い豆である

・鎌柄(かまつか):露草の別称

・冬瓜/氈瓜(かもうり/とうが):緑色球形の大きな秋の果実。果肉は白く、煮物や汁物にして食べる

・唐花草(からはなそう):ホップの別称。初秋、一つの茎に数千もの実が生る

・河原鳳仙花(かわらほうせんか):釣船草の別称。初秋の頃、淡紅紫色の花を釣り下げる

・カンナ:カンナ科の多年草。高いものは2mほどにもなり、葉も花も遠くから目に付くほど大振り。花期は長く、夏から初冬の間を咲き続ける。花の色は赤、黄、橙色などがあり、華やかで目立ちやすい

カンナカンナ

・桔梗(ききょう):きりっとした輪郭、折り目ただしい花の姿には凛とした風情がある。紫を主とするが、白桔梗にも捨てがたい魅力があろう。山上憶良が詠った朝顔は桔梗のことである。秋の七草のひとつ

桔梗

桔梗咲て 何れも花の いそぎ哉(加藤暁台)

桔梗の花 咲時ほんと 言ひさうな(加賀千代女)

紫の ふつとふくらむ 桔梗かな(正岡子規)

女三十 桔梗の花に 似たるあり(松瀬青々)

桔梗一輪 死なばゆく手の 道通る(飯田龍太)

切妻の 家たちならぶ 桔梗かな(長谷川櫂)

・きぞめぐさ:鬱金の花の別称

・きちこう:桔梗の別称

きちかうの 露にも濡れよ 鞠袴(野沢凡兆)

・黄つりふね(きつりふね):釣船草の別称。初秋の頃、淡紅紫色の花を釣り下げる

・きはちす:木槿(むくげ)の別称。芙蓉(ふよう)の別称

・桐の秋(きりのあき):初秋の別称

・桐の実(きりのみ):家具財として広く植えられる落葉高木。初夏に紫色の花を開き、秋に尖った卵形の実を結ぶ。その実は10月頃熟し、二つに裂け、翼のある種子を多数散らす

桐の実

・桐一葉(きりひとは):秋に桐の葉が落ちること。桐一葉、あるいは一葉という。本来の桐はアオギリ科の悟桐を指すがゴマノハグサ科の桐を含めて「桐」と称されている

よるべをいつ 一葉に虫の 旅寝して(松尾芭蕉)

水の蛛 一葉にちかく およぎ寄る(宝井其角)

石塔を なでては休む 一葉かな(服部嵐雪)

たばこより はかなき桐の 一葉かな(各務支考)

何と見む 桐の一葉に 蝉の殻(加舎白雄)

蜘の糸 ちぎれて桐の 一葉かな(高井几董)

桐一葉 日当りながら 落ちにけり(高浜虚子)

桐一葉 又一葉又 一葉哉(長谷川櫂)

・紅冬瓜/紅南瓜/金冬瓜(きんとうが):ウリ科の一年草でカボチャの仲間。食用とはせず、観賞用に栽培される。実は大型の楕円球状。なめらかで光沢があり熟すと赤っぽくなる

・常山木の花/臭木の花(くさぎのはな):クマツヅラ科の落葉樹。山野に自生する。葉に悪臭があるのでこの名がついた。初秋に枝の先に白色の花が群がり咲く。目立たない木だが花は印象的

常山木の花

・臭桐(くさぎり):臭木の別称。初秋、枝先に白い小花が集まり咲く。花の後、晩秋には豌豆くらいの大きさの球果を結び、熟すると藍色になる

・草の香(くさのか/くさのこう):さまざまな秋の草の香りをいう。春の萌える生命力のある香、夏の草いきれのむっとするような匂いとは違う、しっとりとした露けき香りである

ほのぼのと 御粧(おんよそほ)ひや 草の香(くさのこう)(椎本才麿)

・草萩(くさはぎ): シバハギ、ネコハギなど、草本、または草本状でハギに似た植物の異名

・草稗(くさびえ):水稗の別称

・草牡丹(くさぼたん):葉の形がボタンに似ることからこの名がついた、キンポウゲ科の落葉半低木。茎は木質で高さ1m程に直立する。北海道から本州にかけての山地、林道脇などに分布する。8月頃茎の先や葉の脇から柄を出し、鐘形(ベル)のような花をまばらに付ける

草牡丹

・葛の花(くずのはな):マメ科の蔓性多年草。秋の七草の一つ、日当たりのよい山野、荒地に自生する。紅紫色の蝶形花で、上向きについた花穂は下から上へ咲きのぼる。大きな葉に隠れがちだが美しい花である。根から葛粉をとる

葛の花

取り沙汰も 無事で暮れけり 葛の花(野沢凡兆)

もやもやと してしづまるや 葛の花(石川山店)

山深み 散るか凋むか 葛の花(加舎白雄)

葛の葉の 吹きしづまりて 葛の花(正岡子規)

あなたなる 夜雨の葛の あなたかな(芝不器男)

坊毎に 懸けし高樋よ 葛の花(杉田久女)

葛の花 母見ぬ幾年 また幾年(石田波郷)

葛の花 夜汽車の床に 落ちてゐし(長谷川櫂)

・黒豆(くろまめ):大豆の一種で、豆の外皮が黒いもの。正月料理の煮豆や和菓子の材料に、また不祝儀のおこわに入れる

黒豆

・毛犬稗(けいぬびえ/けいぬひえ):イヌビエの変種で、イネ科ヒエ属の1年草。

ケイヌビエ

水田の畦などに生育し、群生する。茎は高さ80〜120cm。葉は長さ20〜40cm、幅10〜20mm、線状披針形、表面と縁はざらつく。葉鞘は長く平滑。花序は長さ15〜30cm、先は下垂し、花軸から長さ3〜7cmの枝をだして小穂を密につける。

・牽牛花(けんぎゅうか):(大事な牛を牽(ひ)いて行って薬草の朝顔にかえたという故事から) 朝顔の花の別称

・御一新草(ごいっしんぐさ):キク科の雑草で、鉄道草の別称

・香水蘭(こうすいらん):藤袴(ふじばかま)の別称。秋の七草の一つ

・香草(こうそう):藤袴の別称。秋の七草の一つ

・紅梅草(こうばいぐさ):仙翁の別称

・苔桃(こけもも):ツツジ科スノキ属の常緑小低木。高山などに自生する。丈は10~15cmくらい。夏に淡紅色の花(下の写真)を咲かせ、9月から10月に かけて紅く熟した実をつける。実は10mmくらいの球形で、甘酸っぱい。生食のほか、ジャムなどにもなる

苔桃の花

・苔桃の実(こけもものみ):ツツジ科の矮小灌木の実。秋に熟すると実は赤くなる

苔桃の実

・小萩(こはぎ):小さい萩。萩の美称

垣荒れて 犬踏み分くる 小萩かな(高桑闌更)

・こぼれ萩(こぼれはぎ):初秋、葉の根元から花穂をだして赤紫色の花をつけ、仲秋のころ散っていくもの

(3)さ行

・桜茸(さくらだけ):林の地上に発生し、傘も柄も桜色をしている茸

桜茸

・豇豆(ささげ):マメ科の一年草。葉は3枚の小葉からなる複葉。夏、蝶形で淡紫色の花が咲く。は細長く、弓なりに曲がる。種子や若い莢は食用。中央アフリカの原産。ささぎ

豇豆摘む 籠を小脇に 恵那夕焼(富安風生)

・細水葱の花(ささなぎのはな):小水葱の花の別称。初秋、水葵に似た碧紫色の花をひらく

・ささら荻(ささらおぎ)/ささらの荻(ささらのおぎ):秋風の吹くたびになる荻の葉ずれの音

・莢隠元(さやいんげん):隠元豆の別称。初秋、花の後に莢ができて垂れ下がるのを収穫する

・沢桔梗(さわぎきょう):キキョウ科の多年草。全国の山野の湿った所や湿原に生え、群生することもある。高さは1mくらいにもなり、茎は中空。葉は互生して笹形。花期は8月から9月頃で濃紫の唇形花を房状につける

沢桔梗沢桔梗

・沢ひよどり(さわひよどり):鵯花の別称。初秋に花が咲き、藤袴に似る

・山茱萸の実(さんしゅゆのみ):山茱萸はミズキ科ミズキ属の落葉高木。3月ころ散形花序に黄色の小さな花をびっしりとつける。秋に楕円形の実が赤く熟す。実の大きさ15mmくらい。実は薬用になる

山茱萸の実

・山椒の実(さんしょうのみ):山椒は、ミカン科サンショウ属の落葉低木。4、5月ごろ開花しそのあと雌株が実をつける。実は4mmくらいで最初は青く、青山椒として利用される。秋になって赤く熟し、裂くと黒い種が出てくる。皮や種は香辛料に使われる

山椒の実

山椒を つかみ込んだる 小なべかな(小林一茶)

・山蘭(さんらん):鵯花(ひよどりばな)の別称。初秋に花が咲き、藤袴に似る

・鹿妻草(しかつまぐさ/かのつまぐさ):萩の別称。萩は秋の代表的な植物

・鹿鳴草(しかなぐさ):萩の別称。萩は秋の代表的な植物

染皮や 色になるてふ しかな草(内藤露沾)

・馬鈴薯(じゃがいも):ナス科の一年生作物。南米アンデス山地の原産で世界各地で栽培されている。早春に種薯を植え、夏から秋にかけて収穫する。男爵薯、メークインが有名

・じゃがたらいも:馬鈴薯のこと

・麝香草(じゃこうそう):シソ科の多年草。山地の湿ったところや、沢沿いなどに自生。高さ20~30cmほどで葉、茎に細毛がある。花期は8、9月頃。花は淡い紅紫もしくは白色で唇形をしており、香気がある。茎や葉にも香りがあり、乾燥させたものは、薬用にまた香辛料に用いる

麝香草

・沙参(しゃじん):釣鐘人参の別称。初秋、薄紫色の釣鐘型の花をつける

・秋海棠(しゅうかいどう):シュウカイドウ科の多年草。同株に淡紅色の雄花、雌花が別々に咲く。古くから観賞用に栽培されるが、野生化していることもある

秋海棠

秋海棠 西瓜の色に 咲きにけり(松尾芭蕉)

手拭に 紅のつきてや 秋海棠 (各務支考)

如意輪には 秋海棠を たてまつれ(越智越人)

臥して見る 秋海棠の 木末かな(正岡子規)

刈り伏せて 節々高し 秋海棠(原石鼎)

病める手の 爪美しや 秋海棠(杉田久女)

・十八豇豆(じゅうはちささげ):莢の最も長い品種のササゲ

十八ささげ

・秋蘭(しゅうらん):藤袴の別称

・十六豇豆(じゅうろくささげ):ササゲの一品種。さやが30〜80cmにもなり、種子が10〜18個入っている。ながささげ。

十六ささげ

・数珠玉(じゅずだま):水辺に生育する大型のイネ科植物の一種。東南アジア原産。郊外の水辺などに生える野草で、草丈1~2mほどになる。実は硬くて光沢があり、昔はつないで数珠の玉にした。食用品種をハトムギと呼ぶ

数珠玉

・生姜(しょうが):ショウガ科の多年草。秋、淡黄色で多肉の根茎が大きくなり、それを収穫する。生食・香辛料・薬味などの食用になる。新生姜は夏の季語

生姜

葉生姜や 手に取るからに 酒の事(加舎白雄)

貧しさや 葉生姜多き 夜の市(正岡子規)

朝川の 薑を洗ふ 匂かな(正岡子規)

一束の 葉生姜ひたす 野川哉(正岡子規)

葉生姜や かりりかりりと 露の玉(川端茅舎)

・聖霊花(しょうりょうばな):仏花として栽培もされる多年草で、淡紅紫色の、いかにも秋らしい花をつける

聖霊花

・蜀椒(しょくしょう):山椒の実の別称。実が紅いことからの名。実は初め夏のうちは青く、秋になって熟すると赤くなる。皮が裂けて、中から黒く光った種が出てくる

・白玉草(しらたまぐさ):湖や沼の水際などに生える一年生草本。秋日、純白の花序をつける

白玉草

・白萩(しろはぎ/しらはぎ): 白い花の咲くハギ。ミヤギノハギの変種といわれるシロバナハギなど

白萩

白萩の しきりに露を こぼしけり(正岡子規)

・白芙蓉(しろふよう):白い花が咲く芙蓉

白芙蓉

・白木槿(しろむくげ):白い花が咲く木槿

白木槿

・新小豆(しんあずき):秋に収穫された直後の小豆

新小豆

・ジンジャーの花(じんじゃーのはな):ショウガ科シュクシャ属のインド原産の多年草。細長い葉を持ち、初秋、茎の先端に芳香を持つ白い大きな花を咲かせる。一日花ではあるが次々に花を咲かせる。改良種にはオレンジ色の花もある

ジンジャーの花

ジンジャの香 夢覚めて妻 在らざりき(石田波郷)

・西瓜(すいか):ウリ科蔓性の一年草である。球形のものと楕円形のものがあり、黒い縞模様が特徴的。果肉は赤色、黄色がある。水分を多く含み甘い。清水に浮かべたり、井戸につるしたりして冷やして食べる

西瓜

西瓜独り 野分をしらぬ 朝(あした)かな(山口素堂)

西瓜くふ 奴(やっこ)の髭の 流れけり(宝井其角)

こけざまに ほうと抱(かか)ゆる 西瓜かな(向井去来)

出女の 口紅をしむ 西瓜かな(各務支考)

角が僕 目引きに出づる 西瓜かな(与謝蕪村)

正直ね段 ぶつつけ書きの 西瓜かな(小林一茶)

寺入りの 子の名書きたる 西瓜かな(桜井梅室)

刃に触れて 皹(ひび)走りたる 西瓜かな(長谷川櫂)

・酔芙蓉(すいふよう):芙蓉の突然変異種で、晩夏から秋に、幾重にも花弁が重なる清楚な白い花が朝早く咲き、午後にだんだん淡い紅色に変わり、夕方になるにしたがって濃い紅色になる。

酔芙蓉

時間がたつにつれて、白い花が濃いピンクへと変色する様子が、酔っ払っていく様子に似ていることから名付けられた

・水蜜桃(すいみつとう):桃の栽培品種で普通に出回っているもの。桃の実は初秋の季語

・雀の稗(すずめのひえ):イネ科のスズメノヒエ属の多年草植物の総称。日本各地の野原、道端などに自生する。草丈は70cmくらい。葉は線状で20~30cmくらい。先がとがる。8月から9月にかけて花茎をのばし、上部に小花が密集した花穂を3~5本出し穂をつける

雀の稗

・背高泡立草(せいたかあわだちそう):キク科の多年草。北アメリカ原産の帰化植物で、明治時代、日本に渡来。土手や荒れ地に群がって生え、高さ1m以上になる。秋、黄色い花を多数穂状につける

・西洋朝顔(せいようあさがお):渡来品の朝顔で、コバルト色の花が咲く

西洋朝顔

・仙翁花(せんおうけ/せんおうげ/せんのうけ):仙翁の別称

秋の日を 気長に咲くや 仙翁花(七雨)

・仙翁(せんのう):ナデシコ科センノウ属の耐寒性宿根草。中国原産で、古くから観賞用に庭園に栽培されている。茎は高さ60cmぐらいになり葉とともに細毛を密に生じる。葉は長さ5cmぐらいの卵形で対生。夏から秋にかけ撫子に似た径4cmほどの深紅色(まれに白色)の五弁花をまばらに開く。

京都の仙翁寺に咲いていたのでこの名がついたといわれる

仙翁

・芎藭/川芎(せんきゅう):中国原産のセリ科の多年草。薬用植物として、古来根茎を婦人の血の道の薬に用いる。秋、茎上に白い五弁の小花をつける

・川芎の花(せんきゅうのはな):セリ科ハマゼリ属の多年草。薬用に栽培されるほか日本の山野に広く自生する。丈は30~60cmくらい。葉は二枚羽状複葉でセリに似ている。秋、茎の先に、粒々状の白い花をたくさんつける。根を血流に効くとされる

センキュウ

・剪紅花(せんこうか):仙翁花の別称。晩夏から初秋に花が咲く

・千石豆(せんごくまめ):隠元豆の一種で、藤豆の別称。初秋、まだ若いうちに取って煮て食べる

・染指草(せんしそう/そめゆびぐさ):鳳仙花の別称で、初秋さまざまな色の花をつける。女の子がその赤い花弁をこすりつけて爪を染めて遊んだことからの名

・剪秋紗(せんしゅうさ):仙翁花の別称。晩夏から初秋に花が咲く

・剪秋羅(せんしゅうら):仙翁花の別称。晩夏から初秋に花が咲く

・千生り(せんなり):匏(ひさご/ふくべ)の別称。初秋、瓢簞形の青い実がたくさん生る

・草萩(そうはぎ):ミソハギの別称。ミソハギ科の多年草、園芸植物、薬用植物

・蕎麦の花(そばのはな):蕎麦は茎先に白または淡紅色の小花を総状に咲かせる。高所で栽 培される蕎麦は品質もよく、高原一面、蕎麦の白い花でおおわれる風景もよく目にする

蕎麦はまだ 花でもてなす 山路かな(松尾芭蕉)

汐風に もめても蕎麦の 白さかな(浪化)

山畑や 煙りのうへの そばの花(与謝蕪村)

日曜の 埃つかれに 蕎麦の花(石橋秀野)

・空色朝顔(そらいろあさがお):西洋朝顔の別称

(4)た行

・大文字草(だいもんじそう):ユキノシタ科の多年草。日本全国の山地の湿った岩場に自生。7月から10月にかけて、30cmくらいの花茎の先に、白い花をまばらにつける。五弁の花びらのうち下の二弁が大きく、その様子が大の字に似ているためこの名がある。葉は腎円形で浅く、五から十裂し、裏面は白色か紫色をおびる

大文字草

・帯刀/授刀(たちはき):ナタマメの別称

・蓼の花(たでのはな):タデ科の一年草。花は赤と白がある。ままごとの赤飯として使わ れ、アカノママという種類もある。田の畦や道端など人の暮らしの近くに自生するが観賞用としても栽培される。粒状の小さな花 をつけた花穂が可愛いらしい

蓼の花

草の戸を 知れや穂蓼に 唐辛子(松尾芭蕉)

醤油くむ 小屋の境や 蓼の花(宝井其角)

三径(*)の 十歩に尽(つきて 蓼の花(与謝蕪村)

(*)三径(さんけい)は、隠者の家の狭い庭。陶淵明の『帰去来辞』にある「三径荒ニ就ケドモ松菊ナホ存ス」を踏まえたもの

流木を 見張の小屋や 蓼の花(佐藤紅緑)

溝川を 埋(うず)めて蓼の さかりかな(正岡子規)

蓼の花 石踏んで水 堰きにけり(長谷川零余子)

・蓼紅葉(たでもみじ):秋になって蓼の葉が紅葉すること

蓼紅葉

・田畦豆(たのくろまめ/たあぜまめ):畦豆(あぜまめ)の別称

・煙草の花(たばこのはな):ナス科の一年草。初秋、煙草は淡い紅色の花をつける。2mにも達する茎の頂にかたまって咲く。煙草を製するには、花はを不要であるが、花観賞するための種類もある

煙草の花

・田稗(たひえ):田に植わっている稗。秋に収穫する

田稗

・玉箒(たまぼうき):田村草の別称。初秋、枝先に薊に似た赤紫色の花をつける

・玉見草(たまみぐさ):萩の別称。萩は秋の代表的な植物

・田村草(たむらそう):一見アザミに良く似ているが葉にトゲがない。アザミと同じキク科であるが、アザミはアザミ属。こちらはタムラソウ属。丈は1mを越え山野では目立つ。花期は8月から10月で頭花は4~5cm。別名の玉箒は花の姿からとも言われている

田村草

・楤の花(たらのはな):たらの木はウコギ科タラノキ属の落葉低木。日本各地の山地に自生 し大きなもので3mくらいになる。8月から9月にかけて、 複総状花序に小さな白い花をびっしりと咲かせる。春先に出る新芽は山菜の王様とも言われ、多くの人に好まれる

タラの花

・檀特の花(だんとくのはな):カンナの花のこと。秋いっぱい咲き続ける

・血止草(ちどめぐさ/ちどめそう):弁慶草の別称。秋、茎の上に白や薄紅色の小花を集める。非常に生命力が強い

・ちょうじな:沢桔梗の別称

・月草(つきくさ):露草の別称。名は、花の色がよく染みつくからとも、臼 (うす) でついて染料としたからともいう

月草の 色見えそめて 雨寒し(加藤暁台)

・爪紅(つまぐれ/つまくれない/つまべに): (紅色の花が、婦人の爪を染める原料となったところからいう)鳳仙花の別称

・露草(つゆくさ):道ばたや庭先に普通にみかける秋の草。貝の形の小さいがあざやかな青い花は、古くから染料にも使われてきた。月草、蛍草ともいう

露草

露草の さかりをきえて 夜の雲(高桑闌更)

朝風や 蛍草咲く 蘆の中(泉鏡花)

露草も 露のちからの 花ひらく(飯田龍太)

鎌の刃は 露草の花 つけてをり(長谷川櫂)

・釣鐘人参(つりがねにんじん):キキョウ科の多年草。千島列島から全国の山地、高原などに生える。高さは1mくらいで全体に毛がある。葉は卵形で3枚から6枚が輪生する。夏から秋にかけ淡紫色の釣鐘の形をした花を下向きにつける。春の若芽は「トトキ」といって珍重される

釣鐘人参

・吊船草/釣船草(つりふねそう):ツリフネソウ科の一年草。全国の山地のやや湿ったところ、沢沿いの半日陰を好む。高さは50~80cm。葉はやや細長いひし形でふちには鋸歯がある。茎は柔らかく花の名は、帆掛け舟を吊り下げたような形からきている。花期は8月から10月。赤紫色の花序は花柄の先に垂れ、長い筒状の距が後ろに突き出て渦巻き状になる

ツリフネソウツリフネソウ

・落葵(つるむらさき):ツルムラサキ科の一年草。花の終わった秋に、紫色の果汁をふくんだ実をつける

落葵

・鉄道草(てつどうぐさ):キク科の雑草。別名ヒメムカシヨモギ・御維新草・明治草などと呼ばれ、明治の頃渡来した北米原産の帰化植物。日本中の空き地、人家の周り、庭などどこにでも繁殖する。高さは1~1.5mくらいにもなり、秋、3mm程の頭花に白い花弁が目立つ花を多数つける。若芽は食用になり、煎じて糖尿病の予防などにも用いられる

鉄道草

・天津桃(てんしんとう):先のとがった桃の在来種。桃の実は初秋の季語

天津桃

・点突(てんつき):カヤツリグサ科の一年草。日本全国のやや湿り気のある草地、水田近くの畔などに自生する。高さは50~60cmくらい。カヤツリグサのように枝別れし卵形の小穂を上向きに付ける

点突

・点突草(てんつきそう):点突の別称

・冬瓜(とうが/かもうり/とうがん):熱帯アジア原産のウリ科の一年草。果実は淡緑色、楕円形でとても大きい。熟して淡緑色の外皮が白いろう質におおわれた頃に収穫する。長い貯蔵に耐え、半年ほども持つという。煮食、葛あんかけ、汁の実などにして食べる。白い果肉は煮ると透きとおって涼しげ。淡泊な味わいで、独特の食感がある

冬瓜

冬瓜や たがひにかはる 顔の形(松尾芭蕉)

冬瓜汁 空也の痩を 願ひけり(加舎白雄)

冬瓜の ころげて荒るる 畠かな(村上鬼城)

冬瓜は 石の枕の ごとくあり(長谷川櫂)

透けるとも なく冬瓜の 煮上がりし(高田正子)

・冬瓜汁(とうがじる):冬瓜の汁物。冬瓜は秋の季語

・唐豇(とうささげ):隠元豆の別称。初秋、花の後に莢ができて垂れ下がるのを収穫する

・桐秋(とうしゅう):初秋の別称

・唐麦(とうむぎ):イネ科大型多年草の数珠玉の別称。秋に結実する

(5)な行

・長豇豆(ながささげ):莢の最も長い品種のササゲ

・鉈豆/刀豆(なたまめ):熱帯アジア・熱帯アフリカ原産で、日本には江戸時代初期に伝来 した豆科の蔓性一年草。莢が刀・鉈を連想させることからこの名がついた。莢は、長さが30cm、幅5cmにもなる。夏、白や薄紅色の蝶形の花を咲かせる。若い莢は煮て食べ、成熟した豆は福神漬けに利用される。近年の研究によって、なた豆は肝腎を強化して、免疫力と病気に対する抵抗力を高めることがわかってきた

刀豆

刀豆や のたりと下がる 花まじり(炭 太祇)

なた豆や 垣もゆかりの むらさき野(与謝蕪村)

・棗の実(なつめのみ):秋、棗は熟し暗赤色の実となる。砂糖漬けなどにして食する。酸味があり、強壮・解熱などの薬効がある

棗の実

なる時も なつめにめづな もぎとるな(野々口立圃)

よもすがら 鼠のかつぐ 棗かな(加藤暁台)

鼠ゐて 棗を落す 月夜かな(村上鬼城)

棗盛る 古き藍絵の よき小鉢(杉田久女)

・楢茸(ならたけ):晩夏から初秋にかけて、古木の根元や倒木などに群生する茸。別称はりがね茸

楢茸

・庭見草(にわみぐさ):萩の古名

・ぬめり草(ぬめりぐさ):イネ科の一年草。葉を揉むとぬるぬるするためこの名がある。本州からアジアの熱帯林まで広く分布する。田の畔や少し湿った所を好む。茎は直立し20~40cmくらいになる。秋その先に長さ6~10cmの紫褐色の花序をつける

ヌメリグサヌメリグサの花

・ネクタリン:バラ科の落葉高木でモモの変種。。果皮は紅赤色に着色し、モモのような毛がない。和名はズバイモモ。別名でツバキモモ(椿桃)、ヒカリモモ(光桃)、アブラモモ(油桃)などとも呼ばれる

ネクタリン

・鼠の尾(ねずみのお):イネ科の多年草。日当たりの良い草地、道端、荒地などに生える。高さは50cm~1mくらいになり強靭。長さ20~50cmの細い葉がある。枝分かれした花序は散開しないため一本の穂のように見える。これを鼠の尾に見立ててこの名がある

鼠の尾鼠の尾

・根無草(ねなしぐさ):弁慶草の別称。秋、茎の上に白や薄紅色の小花を集める。非常に生命力が強い

・野萩(のはぎ):野に生えている萩。野生の萩

野萩

・野稗(のびえ):イヌビエの別称として野稗ということもあるが、一般にはヒエ属の野生種を総称してノビエという

・野葡萄(のぶどう):ブドウ科の落葉蔓性低木。山野に自生するほか道端の生垣などにも絡まる。7~8月頃、淡黄緑色の小花を咲かせたあと秋に実を結ぶ。熟すと白や紫や青緑色になるが、食用にはならない

野葡萄

・野鳳仙花(のほうせんか):山間の湿地に自生するツリフネソウ科の一年草。熟した果実は、触れると弾けて種子を飛ばす。根を煎じた液で、腫れ物を洗うのに用いる

野鳳仙花

(6)は行

・敗醤(はいしょう):男郎花(おとこえし)の漢名

・萩(はぎ):紫色の花が咲くと秋と言われるように、山萩は八月中旬から赤紫の花を咲かせる。古来、萩は花の揺れる姿、散りこぼれるさまが愛され、文具、調度類の意匠としても親しまれてきた。花の色は他に白、黄。葉脈も美しい

ハギ萩

白露も こぼさぬ萩の うねりかな(松尾芭蕉)

一家(ひとつや)に 遊女もねたり 萩と月(松尾芭蕉)

行々て たふれ伏すとも 萩の原(河合曽良)

小狐の 何にむせけむ 小萩はら(与謝蕪村)

萩散りぬ 祭も過ぬ 立仏(小林一茶)

白萩の しきりに露を こぼしけり(正岡子規)

大風に 折れたる萩も なかりけり(長谷川櫂)

・萩散る(はぎちる):初秋、葉の根元から花穂をだして赤紫色の花をつけ、仲秋のころ散っていくもの

・萩の戸(はぎのと):①内裏の庭に植えられた萩のこと。②(障子に萩が描いてあったところから、または前庭に萩の植え込みがあったところから)清涼殿の一室の名。夜の御殿 (おとど) の北で、弘徽殿 (こきでん) の上御局 (うえのみつぼね) と藤壺 (ふじつぼ) の上御局との間にあった

・萩の主(はぎのぬし):萩の持ち主

・萩の宿(はぎのやど):萩の生えている宿

・萩原(はぎわら):萩の生い茂った野

・白桃(はくとう):果肉の白い桃の実。桃の実は初秋の季語

白桃

・薑(はじかみ):生姜の古称

・はちまん草(はちまんそう):弁慶草の別称。秋、茎の上に白や薄紅色の小花を集める。非常に生命力が強い

・薄荷の花(はっかのはな):シソ科ハッカ属の多年草。日本各地の野原に自生し、香辛料や薬用として栽培もされる。丈は20~60cm。葉は楕円形。8月から10月にかけて葉腋に淡紫色の小さな唇形花をつける

薄荷の花

・八升芋(はっしょういも):ジャガイモの別称

・八升豆(はっしょうまめ):籬豆の別称。一粒の種から沢山の豆が穫れるという意味

・初萩(はつはぎ):秋になって初めて花を開いた萩。早咲きの萩

・初見草(はつみそう):萩の別称

・鳩麦/川殻(はとむぎ):イネ科ジュズダマ属の一年草。原産地は中国南部で、草丈は1m以上になる。夏、茎先と葉腋に淡緑色の小花をつけ、秋に楕円球の褐色の果実を実らせる。実は食用となるほか、生薬にも利用される

鳩麦

・花カンナ(はなかんな):カンナの花のこと。秋いっぱい咲き続ける

・花こなぎ(はなこなぎ):小水葱の花の別称。初秋、水葵に似た碧紫色の花をひらく

・花縮砂(はなしゅくしゃ):ジンジャーの別称。初秋、純白で芳香のある花をつける

・花蓼(はなたで):犬蓼の花のこと。初秋、赤紫の小花が穂状に咲く

・花煙草(はなたばこ):喫煙用の葉をとるために栽培される植物で、初秋、薄紫色の花をつける

花煙草

・花芙蓉(はなふよう):アオイ科の落葉低木。淡紅色の五弁の花を開く

・花木槿(はなむくげ):晩夏から初秋にかけて開く、紅紫色の五弁の芙蓉に似た木槿の花

花むくげ はだか童の かざし哉(松尾芭蕉)

・浜蓮華(はまれんげ):弁慶草の別称

・匏 (ひさご/ふくべ):ウリ科のつる性一年草。園芸植物。ヒョウタンの別称

・一葉(ひとは/いちよう):「一葉落ちて天下の秋を知る」という淮南子の語によるもので、桐一葉を意味することが多い

・一葉落つ(ひとはおつ):桐一葉に同じ。「一葉落ちて天下の秋を知る」という淮南子の語に寄せて、桐の葉の落ちる音で秋を実感すること

・一葉の秋(ひとはのあき):大きな桐の葉が音をたてて落ちると、秋になったなと思う。淮南子の語によるもので、桐の一葉を意味することが多い

・百生り(ひゃくなり):匏の別称。初秋、瓢簞形の青い実がたくさん生る

・瓢箪(ひょうたん):匏の別称。初秋、瓢簞形の青い実がたくさん生る

・鵯花(ひよどりばな):キク科の多年草。全国の山野に自生。高さ1mくらいで、花期は8月から10月。フジバカマに似た白い花をつけるが、葉がフジバカマのように三裂しない

鵯花

・貧乏葛(びんぼうかずら):ブドウ科の蔓性多年草。初秋丸い実ができ、熟すると黒くなる。この草が茂ると藪も樹木も枯れてしまうという

・瓢(ふくべ):夕顔の変種で、初秋、瓢簞形の青い実がたくさん生る。果肉をくりぬいて乾燥するといわゆる瓢簞になる

・ふくれ草(ふくれそう):弁慶草の別称。秋、茎の上に白や薄紅色の小花を集める。非常に生命力が強い

・藤袴(ふじばかま):山野に自生するキク科の多年草。高さ1.5mくらいになる。秋、粒状のピンク色の花を泡立つように咲かせる

藤袴

うつろへる 程似た色や 藤ばかま(立花北枝)

何と世を 捨ても果てずや 藤袴(八十村路通)

藤袴 この夕ぐれの しめりかな(斯波園女)

・藤豆/鵲豆(ふじまめ):隠元豆の一種。関東でいう莢隠元とは別。関西では隠元豆とも呼び、伊賀では千石豆、石川ではつるまめ、愛知岐阜では万石豆、などなど地方により様々な呼び名ある。薄赤紫の花が藤房を逆にしたように咲く

藤豆

・芙蓉/木芙蓉(ふよう):アオイ科の落葉低木。高さは1.5~3m。8月から10月 にかけて白、あるいは淡紅色の五弁の花を咲かせるが、夕方には しぼんでしまう。咲き終わると薄緑色の莟のような実ができる。観賞用として庭などに植えられる

芙蓉

枝ぶりの 日ごとにかはる 芙蓉かな(松尾芭蕉)

日を帯びて 芙蓉かたぶく 恨みかな(与謝蕪村)

ほしのかげ いだきてふけぬ 白芙蓉(青蘿)

芙蓉さく 今朝一天に 雲もなし(宮 紫暁)

松が根に なまめきたてる 芙蓉かな(正岡子規)

・フランネル草(ふらんねるそう):仙翁花の別称。晩夏から初秋に花が咲く

・古枝草(ふるえぐさ):萩の別称。萩は秋の代表的な植物

・フレップ:苔桃のこと

・紅芙蓉(べにふよう):紅色の花をひらく芙蓉

・紅木槿(べにむくげ):底に紅をぼかした色の花をつける木槿

・蛇葡萄(へびぶどう):野葡萄の別称。初秋にいろいろな色の小さい果実がつく

・弁慶草(べんけいそう):ベンケイソウ科。別名イキクサ。別名と共に大変丈夫な事に由来する命名。葉は円形肉厚、花は淡紅色、五弁。薬草としても栽培されてきた

ベンケイソウ弁慶草

雨つよし 弁慶草も 土に伏し(杉田久女)

・帽子花(ぼうしばな):露草の別称。初秋に真っ青の花が咲く

鳳仙花(ほうせんか):東南アジア原産。30~60cmほどの茎が直立し、赤、白、紫絞りなどの花を咲かす。女の子がこの花びらの汁で爪を染めて遊んだところから「爪紅」ともいう。又、熟した種子を指でつまんではじけるのを楽しむ

ホウセンカ

枝折戸に 蕭の音あり 鳳仙花(琴明)

汲み去って 井辺しづまりぬ 鳳仙花(原石鼎)

かそけくも 喉鳴る妹よ 鳳仙花(富田木歩)

爪紅の うすれゆきつゝ みごもりぬ(篠原鳳作)

・星草(ほしくさ):ホシクサ科の一年草。各地の水田、沼地、池や湿地に自生する。線形の尖った葉を根元から出し、秋、多数の花茎に白い球状の花を付ける。秋に何本もつく白色の花序が、点在する星のように見えることからの名

星草

・穂蓼(ほたで):タデの、花穂が出たもの。タデの花

甲斐がねや 穂蓼の上を 塩車(与謝蕪村)

・蛍草(ほたるぐさ):露草の別称

・ホップ:クワ科の蔓性多年草。夏、淡緑色の花をつけ、果実は秋に実る。 北海道で多く栽培され、麦酒の醸造に苦味を添えるものとして使われる

ホップ

・ホップ摘む(ほっぷつむ):初秋のよく晴れた日にホップを収穫すること

・法螺貝草(ほらがいそう):釣船草の別称。初秋の頃、淡紅紫色の花を釣り下げる

(7)ま行

・松虫草(まつむしそう):高原に生える多年草で、初秋、紫紺の大きな花が開く

松虫草

・真萩(まはぎ):(「ま」は接頭語) 萩の美称

・実山椒(みざんしょう):山椒の実のこと。秋に熟して赤くなり、裂けると黒い種子を見せる

・水懸草(みずかけぐさ):千屈菜(みそはぎ)の別称。初秋、薄紫色の小花が集まり咲き、盆の供花によく使われる

・水玉草(みずたまそう):星草の別称。秋に何本もつく白色の花序が、水滴のように見えることからの名

・水萩(みずはぎ):千屈菜(みそはぎ)の別称。初秋、薄紫色の小花が集まり咲き、盆の供花によく使われる

・水稗(みずひえ):野生の稗の一種

・水引の花(みずひきのはな):タデ科の多年草。8月頃花軸をのばし、赤い小花を無数につける。 花の下側が白く、紅白の水引のように見えることからこの名がついた

水引の花

かひなしや 水引草の 花ざかり(正岡子規)

水引の 花が暮るれば ともす庵(村上鬼城)

水引や 人かかれゆく 瀧の怪我(前田普羅)

木もれ日は 移りやすけれ 水引草(渡辺水巴)

生涯に ひとたび会ひき 水引草(石田波郷)

・溝蕎麦(みぞそば):タデ科の一年草。日本各地の山野の湿地や水辺などに群生する。高さ40cmほどで、葉は矛のような形をしている。8月から10月にかけて、枝先に淡い紅色の小花が10から20個ほどまとまって開く。黒い球形の実が蕎麦に似ているため、溝蕎麦と呼ばれている

溝蕎麦溝蕎麦

・千屈菜/千屈萩/鼠尾萩:山野に自生するミソハギ科の多年草。高さ1mぐらい。葉腋に淡紅紫色の六弁花を長い穂状につける。精霊棚に水を掛けるときこの花を使ったので「禊萩(みそはぎ)」といわれる。盆花としても栽培されている

ミソハギミソハギ

みそ萩や 分限に見ゆる 髑(されかうべ)(宝井其角)

鼠尾草や 身にかからざる 露もなし(加藤暁台)

みそ萩や 水につければ 風の吹く(小林一茶)

家遠し みそ萩つむは 孤児(みなしご)か(幸田露伴)

・溝萩(みぞはぎ):千屈菜(みそはぎ)の別称。初秋、薄紫色の小花が集まり咲き、盆の供花によく使われる

・乱れ萩(みだれはぎ):花が散り乱れた萩

・茗荷の花(みょうがのはな): 茗荷は、根元に出来た子の先に淡黄色の蘭のような花をつける。一日でしぼむが次々に花を咲かせる

茗荷の花

・木槿(むくげ):中国、インド、小アジア原産のアオイ科の落葉低木。3mほどになる。庭木や生け垣として植えられ、紅紫色を中心に、白やしぼりの五弁の花を咲かせる。朝咲いて夕暮れには凋む。はかないものの例えにもなる

木槿木槿

道のべの 木槿は馬に 食はれけり(松尾芭蕉)

手をかけて 折らで過ぎ行く 木槿哉(杉山杉風)

川音や 木槿咲く戸は まだ起きず(立花北枝)

修理寮の 雨にくれゆく 木槿かな(与謝蕪村)

蜘(くも)の網 かけて夜に入る 木槿哉(和田希因)

・木槿垣(むくげがき):木槿で作られた垣

・紫釣船(むらさきつりふね):釣船草の別称。初秋の頃、淡紅紫色の花を釣り下げる

・明治草(めいじそう):キク科の雑草で、鉄道草の別称

・目弾き(めはじき):シソ科の越年草。高さは50cm~1mで主に野原や道端に生える。唇の形をした薄紅色の小さな花をつける。乾燥さ せて産後の止血や月経不順、めまい、腹痛の薬にすることから「益母草」という漢名がついた

めはじきめはじき

益母草や 夜ただ物見る 窓の前(清淇)

・もとあらの萩:叢生した根の方のまばらな萩

・桃の実(もものみ):桃の実は中国から渡来し、奈良時代から栽培された。水蜜桃から品種改良され種類は多い。早桃は6月下旬から出荷され、水蜜桃や白桃は8月中旬に出荷される。花は春の季語

桃の実

我きぬに ふしみの桃の 雫せよ(松尾芭蕉)

病間(びょうかん)や 桃食ひながら 李(すもも)描(か)く(正岡子規)

桃くふや 羽黒の山を 前にして(正岡子規)

水を出て 白桃はその 重さ持つ(加藤楸邨)

桃洗ふ 双手溺れん ばかりなり(石田波郷)

磧(かわら)にて 白桃むけば 水過ぎゆく(森澄雄)

白桃や 心かたむく 夜の方(石田波郷)

・模様莧(もようびゆ):ヒユ科アルテルナンテラ属の非耐寒性多年草。草丈は15~25cmくらいになり、秋にその細長い葉がピンクや赤、暗紫色などに色づく。公園や市街地の花壇などに植えられる

モヨウビユ

(8)や行

・夜会草(やかいそう):夜顔の別称。初秋の夕方に白い花を開花し、翌朝しぼむ

・薬師草(やくしそう):弟切草の別称。初秋に黄色い小花を集め咲かせる

・益母草(やくもそう):目弾きの別称。初秋、薄紫色の小花をつける。草は産前産後の薬とする

・矢の根草(やのねぐさ):タデ科の一年草。全国の水田やその脇、溝、畔、などに自生。葉がやじりの形に似るためこの名がある。高さは50cmくらい。9月から10月ころ金平糖のような形の花をつける。アキノウナギツカミやミゾソバなどに良く似ている

矢の根草

・藪からし(やぶからし):ブドウ科ヤブカラシ属の多年生蔓性植物。山野から市街地にいたるまでいたるところに自生する。花は粒状で淡緑色。藪を枯らして繁茂することからこの名がついた。地下茎を伸ばして増える

藪枯らし

・山萩(やまはぎ):萩の別称

・山葡萄(やまぶどう):ブドウ科の蔓性落葉低木。山野に自生。秋、葡萄に似た黒い球形の実を結ぶ。葡萄酒、ジュース、ジャムなどにして食する

山葡萄

・山箒(やまぼうき):田村草の別称。初秋、枝先に薊に似た赤紫色の花をつける

・山鳳仙花(やまほうせんか):釣船草の別称。初秋の頃、淡紅紫色の花を釣り下げる

・破荷(やれはす):秋口には風に葉を翻していた蓮も、日に日に色褪せ、風雨に打たれて破れてゆく。寂しくわびしい秋の風情そのもである

破荷

さればこそ 賢者は富まず 敗荷(与謝蕪村)

敗荷や 雨は静かに 降りつづく(淡嵩)

・夕顔の実(ゆうがおのみ):うり科の一年草で、夏に白い花をつけ、秋に実をつける。『源氏物語』に登場する夕顔のように儚く美しいイメージの花である。実は丸形と長形があり果肉を紐状に削って乾燥させ、干瓢をつくる。または中身をくりぬいて炭取りや、火鉢、花器などいろいろに加工して利用したりもする

夕顔の実

驚くや 夕顔落ちし 夜半の音(正岡子規)

夕顔や 我葉を敷て ころび寐を(小西来山)

夕顔に 片尻懸けぬ さん俵(立花北枝)

・油桃(ゆとう):桃の変種で、多く缶詰にする。ネクタリン

・ゆびはめぐさ:吊舟草の別称

・夜顔/夜会草(よるがお):ヒルガオ科サツマイモ属の蔓性多年草。葉はどくだみに似たハー ト形。88月から9月にかけて朝顔に似た白い花を咲かせる。夕方咲いて朝にしぼむのでこの名がある。芳香もすばらしい

夜顔

月更けて 夜会草風に いたみけり(高田蝶衣)

(9)ら行

・蘭草(らんそう):藤袴の漢名

・輪鋒菊(りんぽうぎく):松虫草の別称。初秋、紫紺の大きな花が開く

・鈴子香(れいしこう):麝香草の別称。茎や葉をゆさぶると芳香が漂う。秋に赤紫色の小花が咲く

(10)わ行