人物像を表す四字熟語(その1)英雄豪傑・学識

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一人当千

漢字発祥の国だけあって、中国の「四字熟語」は、人生訓にもなるような含蓄に富んでおり、数千年の悠久の歴史を背景とした故事に由来するものも多く、人類の叡智の結晶とも言えます。

そこで今回は、「人物像」を表す四字熟語のうち、「英雄豪傑・学識」を表す四字熟語をご紹介したいと思います。

1.英雄豪傑

(1)一人当千(いちにんとうせん/いちにんとうぜん)

非常に大きな力や実力があること、きわめて勇気のあることです。

一人の力が千人の力にも匹敵する意から。

「一人、千に当たる」と訓読します。

(2)一身是胆(いっしんしたん)

強い勇気があり、何事にも恐れないことのたとえです。

体全体に胆力が満ち溢れているという意味から。

「一身」は全身。「胆」は勇気や度胸のこと。

「一身(いっしん)是(こ)れ胆(たん)なり」と訓読します。

中国の三国時代、蜀の劉備が魏の曹操に追われて逃げたとき、活躍した部下の趙雲の勇ましさを称えたという故事から。

(3)一世之雄(いっせいのゆう)

その時代で一番すぐれた英雄のことです。

「一世」はその時代、当時という意味。

(4)雲蒸竜変(うんじょうりょうへん/うんじょうりゅうへん)

英雄や豪傑などのすぐれた人物が、時運に乗じて出現し活躍することです。雲がわき起こり竜が勢いを増して、変幻自在に活動する意から。

天に昇る竜は雲を呼び起こし、その勢いをさらに増すといいます。「雲蒸」は雲がわき起こること。

(5)英俊豪傑(えいしゅんごうけつ)

多くの人の中で特に人並みはずれた才能や能力をもつ人物のことです。

「英」「俊」「豪」「傑」ともに、人並みはずれて秀でていること。また、その人。

(6)英雄欺人(えいゆうぎじん)

卓抜した能力をもつ人は、そのすぐれたはかりごとで、普通の人が思いもよらない手段や行動をとるものであるということです。

一般に「英雄人を欺(あざむ)く」と訓読を用います。

(7)英雄豪傑(えいゆうごうけつ)

才知・武勇ともにずばぬけてすぐれた人のことです。

「英雄」は、文武に特にすぐれた人。「豪傑」は、武勇にすぐれ、度胸のすわった人。

(8)蓋世之才(がいせいのさい)

気力や能力、功績などが非常にすぐれていること、またそれをもつ人のことです。その時代を覆い包むほどのすぐれた才能のたとえです。

「蓋世」は、世を蓋(おお)うことで、世の中を覆いつくすほど気力が盛んである意。

(9)蓋世不抜(がいせいふばつ)

性格や才能などが、他の人と比べられないほどにすぐれていて、しっかりとしていることです。

「蓋世」は世界を覆いつくすという意味から、非常にすぐれていることのたとえ。
「不抜」はしっかりとしていて、安定していること。

(10)海内冠冕(かいだいのかんべん)

世界で一番ということです。

「海内」は四方の海の内側という意味から、国家や世界のこと。
「冠冕」は高い地位の人がつける冠ということから、一位や一番という意味。

(11)海内奇士(かいだいのきし)

類まれなほどすぐれた人物のことです。

「海内」は、四海の内のことから転じて、天下・国内の意。「奇士」は、群を抜いてすぐれた人物。

(12)海内無双(かいだいむそう)

この世に並ぶものがないほどすぐれていることです。

「海内」は四海の内・この世・天下。「無双」は並ぶものがない、二つとないこと。

(13)寡二少双(かじしょうそう)

匹敵する者がいないことです。

「寡二」は二つは存在しない、唯一。
「少双」は匹敵するものが存在しないということ。

似た意味の言葉を重ねて強調した言葉。

(14)気宇壮大(きうそうだい)

心意気、度量や発想などが人並みはずれて大きいさまです。

「気宇」は心の持ち方、度量。「壮大」は非常に大きくて立派なさま。

(15)希世之雄/稀世之雄(きせいのゆう)

この世のものとは思えないほどすぐれた英雄のことです。

「希世」はとても珍しいこと。

(16)挙世無双(きょせいむそう)

世の中に比べられるものが存在しないほどに素晴らしい様子です。

「挙世」は世間全体ということ。「無双」は並ぶものが存在しないということ。

(17)孔明臥竜(こうめいがりょう)

まだ世間に知られていない、素晴らしい才能をもつ人のたとえです。

「孔明」は中国の三国時代の蜀の宰相、諸葛亮のこと。
「臥竜」は川などの深いところに隠れている竜のこと。

中国の三国時代の蜀の徐庶は、劉備に諸葛亮を推挙したという故事から。

(18)蛟竜雲雨(こうりょううんう/こうりゅううんう)

能力を発揮する機会の無かった英雄や豪傑が、機会を得て能力を発揮することのたとえです。

「蛟竜」は水中にすむとされる中国古代の想像上の動物。

水中にすむ蛟竜は雲や雨を得ればそれに乗って天に昇り竜になるといわれることから。

「蛟竜雲雨を得(う)」を略した言葉。

(19)国士無双(こくしむそう)

国中で並ぶ者がないほどすぐれた人物のことです。

「国士」は国の中で傑出した人のこと。「無双」は二つとない、並ぶものがないこと。

もと、漢の蕭何(しょうか)が、後に軍の指揮官として漢王朝の成立に大功をあげた韓信(かんしん)を評して、劉邦(りゅうほう)(漢の高祖)に推薦したときの語。

(20)虎嘯風生(こしょうふうしょう)

すぐれた才能や技能をもつ人が機会を得て奮起することです。

「嘯」は、うそぶく、吠える。「風生」は、風が生じる。虎が吠えて風が起きるという意から。

「虎嘯(うそぶ)いて風(かぜ)生(しょう)ず」と訓読します。

(21)虎擲竜挐(こてきりょうだ/こてきりゅうだ)

英雄と英雄が戦うことのたとえ。

「擲」は投げつけること。「挐」はつかみ合うこと。
虎と竜が激しく打ち合うという意味から。

「竜挐虎擲」ともいいます。

(22)三国無双(さんごくぶそう/さんごくむそう)

この世に他に並ぶものがないことです。

(23)峻抜雄健(しゅんばつゆうけん)

一際力強い様子のことです。

「峻抜」は高く険しい山が一際高く立っているように、高くぬきんでていること。
「雄健」は力強く、勢いがある様子

(24)胆勇無双(たんゆうむそう)

何事にも恐れることなく、誰よりも勇気があることです。

「胆勇」は大胆で勇気があること。
「無双」はこの世にあるなにものとも、比較することすらできないほどにすぐれているという意味。

(25)地霊人傑(ちれいじんけつ)

すぐれた土地から素晴らしい人材が世の中に出ることです。

「地霊」はすぐれた土地。または、霊的な存在が宿る土地。
「人傑」は素晴らしい人材。

「人傑地霊」ともいいます。

(26)天下無双(てんかむそう/てんがむそう/てんかぶそう)

天下に並ぶ者がいないほど優れているさま、またその人のことです。

「無双」は世に並ぶものがないさま。

(27)天下無敵(てんかむてき)

この世にかなうものがいないほど強い、あるいはすぐれていることです。

(28)当代無双(とうだいむそう)

同じ時代に比較するものが存在しないほどにすぐれていることです。

「当代」は現在の時代。「無双」は比較できるものが存在しないということ。

(29)斗南一人(となんのいちにん)

その道の第一人者。この世に比べる者のないすぐれた実力者のことです。

「斗」は、北斗七星。「斗南」は、北斗七星以南のことから、転じて、天下。

(30)泛駕之馬(ほうがのうま)

一般的な常識には従わずに別の方法をとる英雄のたとえです。

「泛駕」は馬が興奮して指示に従わずに道をそれてしまうということから。

(31)乱世英雄(らんせいのえいゆう)

乱れた世の中で力を示して、大きな事業を成し遂げる人のことです。

「乱世」は戦争が絶えない乱れた世界。

中国の後漢の時代、人物鑑定で有名な許劭は、若い頃の曹操を清平の姦賊、乱世の英雄と評したという故事から。

『魏志』「武帝紀」では、治世の能臣、乱世の姦雄と評されたとされています。

(32)乱世姦雄(らんせいのかんゆう)

乱れた世の流れにのって、名声を得る悪知恵の働く人のことです。

「乱世」は戦争が絶えない乱れた世界。

中国の後漢の時代、人物鑑定で有名な許劭は、若い頃の曹操を清平の姦賊、乱世の英雄と評したという故事から。

『魏志』「武帝紀」では、治世の能臣、乱世の姦雄と評されたとされている。

2.学識

(1)洽覧深識(こうらんしんしき)

見聞がきわめて広く博識なさまです。

「洽覧」はあまねく見ること。書物をあまねく読むこと。「深識」は知識が深いこと。いずれも見聞や知識が広く深いことをいいます。

(2)碩学大儒(せきがくたいじゅ)

広い学識を持つ優れた学者のこと、学問でその奥義をきわめた大学者のことです。

「碩」は、大きいさま、偉大であるさま。「碩学」は、大学者。「儒」は、儒学者のことで、学者一般も指します。

「大儒碩学」ともいいます。

(3)博学才穎(はくがくさいえい)

学識が豊かで、才能と知恵があることです。

「博学」は学問で得た見識が高いこと。「才穎」は才能と知恵がすぐれていること。

(4)博学審問(はくがくしんもん)

広く学んで詳しく問いただし、学問の道を究めること。広く学んで知識を広め、細かに詳しく疑問を起こし問うことです。

儒教、特に朱子学でいう学問の道程で、学ぶ、問う、思う、弁ずる、行うの「学ぶ、問う」に当たります。

「博」は広い意。「審問」は詳しく調べて尋ねる意。

(5)博学卓識(はくがくたくしき)

豊かな学識があり、本質を見通す判断力がすぐれていることです。

「博学」は学問で得た見識が高いこと。「卓識」は本質を見通す判断力がすぐれていること。

(6)博学多才(はくがくたさい)

知識が豊かで、多くの分野の才能に恵まれていることです。

「博学」は各方面の学問に通じており、多くの事を知っていること。「多才」はいろいろな能に恵まれていること。

(7)博学多識(はくがくたしき)

学識が豊かで、様々なことを知っていることです。

「博学」と「多識」はどちらも学問で得た見識が高いこと。

(8)博古通今(はくこつうこん)

過去の出来事から今の出来事まで、様々な出来事を詳しく知っていること。広い知識を持っていることです。

「博古」は昔のことを広く知っていること。
「通今」は今のことを詳しく知っていること。

「古(いにしえ)に博(ひろ)く今(いま)に通ず」と訓読します。

「通今博古」ともいいます。

(9)博識洽聞/博識広聞(はくしきこうぶん)

様々な経験をしていて、様々な知識を深く知っていること。

「博識」は広い知識があること。「洽聞」は様々な経験があること。

(10)博聞強記/博聞彊記(はくぶんきょうき)

広く物事を聞き知って、よく覚えていることです。

「博聞」は広く物知りであること。「強記」は記憶力の強いこと。

(11)博覧強記/博覧彊記(はくらんきょうき)

広く物事を見知って、よく覚えていることです。

「博覧」は広く書物を読んで、多くの物事を知っていること。「強記」は記憶力のすぐれていること。